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第8話 金庫からお金が消えた話し

「やまちゃん金庫のお金が無くなっちやったよ」

マネジャーが私に言ってきた。

店で落とし物のお金を保管している小さな金庫だ。

「どれくらい無くなったのですか?」 
    
    「1500円だね」
「そうなんですか」

  「そうなんだよねー」

金庫は私の座っている机の引き出しの中にあり、記録簿も付けていて間違えたりする事はない。

「彼かな〜」

 「誰ですか?」

「駒田君だと思うな〜」

とマネジャーが言う

「なんで駒田君やったって分かるのですか?」

「だってやまちゃんここに来て3年だよね?」

「はい」

    「他のバイトさん達も長年勤務しているし、一度もこの金庫からお金が消えた事はなかったんだよね」

駒田君は私の親の知り合いの息子さんで、最近私が紹介して入った16歳の新人で彼の事はよく知らなかった。

この時
「信用とはこうやって築くものなんだ」
と思った。

全て身から出た錆

「大人の人ってこんな感じに人を見ている」

18歳の私は世間とはこうやって人を判断しているのだと。

この事件での容疑者は私を含めて5人。金庫がある場所と開け方を知っている人のみが容疑者だ。
しかし、長年こんな事件は起きた事がない。なのに駒田君が入ってから数日で起きてしまったのだ。

犯人探しはしなかったが、そこに居る大人は駒田君が犯人だと思っている。

似た事が大人になっても時折ある。

それは悪い噂話だ

「〇〇さんは〇〇らしいよ」

「〇〇さんて実は〇〇なんでしょ」

世間でよく聞くフレーズだ。

こんな時

 「マジで〜やっぱそうなんだ」

となるか

「あの人はそんな人じゃないよ」

と言ってもらえるかは普段の自分次第だ。

  全ては身から出た錆だ!

とても大切な事を若いときに学んだいい機会だった。

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