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旧統一教会「損害賠償」訴訟 4件すべて敗北 解散命令請求に追い風

 テレビ番組での発言で名誉を傷つけられたとして旧統一教会(現世界平和統一家庭連合)が弁護士やジャーナリスト、放送したテレビ局を相手に起こした22年夏から秋の統一教会めぐる多額の損害賠償請求(スラップ訴訟)で、教団は一部高裁判決を含め4件すべてで敗訴した。
 
教団の訴訟とは
 
 教団が4連敗した訴訟はこうだ。
★TBS「ひるおび」(2022年9月)、八代英輝代議士が発言した「外形的な犯罪行為」を教団は問題視。23年6月30日「消費者被害が生じたのは真実。意見、論評の域を逸脱するとは言えない」と違法性を地裁は否定し、教団の訴えを棄却した。12月の控訴審も教団は敗訴。
★読売テレビ「ミヤネ屋」(22年9月)に出演した木村健太郎弁護士が「司法の判断では、違法な活動をしている違法な組織と認定済み」などと発言したことに教団は提訴。今年1月25日「違法性がない」と地裁は棄却した。
★日本テレビ「スッキリ」(22年8月)でジャーナリスト有田芳生氏(写真左)が教団について「霊感商法をやってきた反社会的集団だと警察庁も認めている」と述べた。3月12日の判決は名誉棄損に当たらないとした。教団は25日控訴した。
★読売テレビ「ミヤネ屋」(22年7月)で紀藤正樹弁護士は「お金がないから、信者に売春させた事件まである」とコメント。3月13日の判決は「前提事実の重要部分は真実。論評の域を出ない」と認定し、被告の紀藤弁護士が勝訴した。教団は25日控訴。
 
最高裁初審理も
 
 さらに教団にとって不利な材料が相次ぐ。昨年末成立の財産流出抑制を目的とした特例法に基づき教団は「指定宗教法人」に。
質問権行使に回答を拒んだとして文部科学省が教団に過料を科すように求めた裁判では、東京地裁は教団の田中富広会長に過料10万円の支払いを命じる決定を3月26日に出した。教団は決定を不服として4月8日東京高裁に即時抗告。
 また、長野県の元信者やその家族が約1億8000万円の賠償を求めている裁判で、最高裁は6月に弁論を開くことを決めた。教団の勧誘や献金をめぐる最高裁の審理は初めてで、訴えを退けた一審と二審の判断が見直される可能性が高い。

ひるまずに闘う

 教団との深い関係を断ち切れない自民党の萩生田光一衆院議員を批判し2200万円を求められた有田裁判では、発言の趣旨は①教団は霊感商法をやってきた、②反社会的集団、③警察庁も認めている―。これが教団の社会的な評価を貶めるかが争点だった。
 3月12日の勝訴後の報告集会で弁護団は「問題の部分について地裁は、萩生田議員は教団ときっぱり手を切るべきだという有田発言の一部にすぎず、名誉棄損ではないとした。すばらしい判決でした。片言隻句に名誉棄損で言論を封殺しようとする教団のやり方に対する防波堤の役割を果たせた」と強調した。
 有田氏はこう語った。
「わずか8秒の発言をとらえて教団は訴えたが、霊感商法、反社会的集団、警察庁も認定の3つを裁判所があらためて認める判断をしてくれた。私の発言が真実であることを証明するため刑事や民事の判例など1000ページを超える資料を提出したおかげで見事な勝利をおさめることできた。今後もひるむことなく反社会的性格の教団と闘います」
 
萎縮は影響深刻
 
 支援するジャーナリストの鈴木エイト氏(写真右)は「教団信者から2件のスラップ訴訟を起こされている。自分にもこういう判決が出ればいいなと思う」「日本にも(米国のような)反スラップ訴訟の制定が必要です」と述べた。
また、ジャーナリストの青木理氏は「しごく当然な判決」としたうえで問題に真正面から向き合わない今のメディアの姿勢を嘆いた。
「新聞社やテレビ局のほとんどはクレームつけられる、訴訟を起こされるのを嫌います。問題が起きたら組織としてどう対応するか会議などで時間を相当取られ、面倒なことになる。だから文句をつけられそうな、訴訟に発展しそうな問題はさわらないという情けない状態です。萎縮によって言論の自由が失われる深刻な事態を考えなければと思います」
 これからの裁判の進め方について有田氏は「(反撃に向けて)反訴したいと思っている」と、5人からなる弁護団に呼びかけたところ「了解した」と返事がきた。
 弁護団は判決が、文科省が東京地裁に請求し審理が進む教団への解散命令可否判断にも影響し追い風になると見ている。

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