原発新増設に転換 需要増大を口実 第7次エネルギー基本計画 最新省エネ技術を無視
経済産業省が12月下旬に発表した2040年度電源構成などを中心とした第7次エネルギー基本計画(エネ基)の素案は、衰退の原発事業のテコ入れを図る中身だ。その要点は①「原発依存度を可能な限り低減」の文言を削除、②原発を最大限活用、③廃炉にした原発の敷地内での建て替え、④同じ電力会社なら別の原発の敷地内でも建て替えを認める、⑤原発建設コストの上ぶれ分を電力会社が回収できる仕組みを検討――。
電力会社の要望に沿う原発回帰案は、40年度の原発比率目標を2割程度としている。この達成には既存原発36基ほぼすべて再稼働が必要で、目標のクリアは困難というのが専門家の見立てだ。
原発について「原子力や行政、事業者に対する国民の不信、不安は払拭できていない」と7次エネ基素案で述べている。にもかかわらず、原発新増設に転換したのは、脱炭素電源、電力の安定供給に加えて生成AIの開発・動作を担うデータセンターと半導体工場の新増設に伴う電力需要の増大と説明。特にデータセンターは電力を大量に食い、40年度は最大2割増えると予測している。
電力消費量は減少
これに対して自然エネルギー財団の石田雅也研究局長は、データセンターや半導体工場の新増設は一時的としたうえでこう反論する。
「社内の大型コンピューターで管理していた各種データを企業は、データセンターを持つクラウドサービス事業者にアウトソーシング(外部委託)している。ビル1棟のデータを移管する大企業もある。必要なデータはパソコンでセンターから引き出す。狙いはコスト削減です。企業側の電力消費の減少を考慮せずデータセンターなどの電力需要が増えることだけに注目した予測です」
実は国内の電力消費量は07年をピークに減少している。インターネットが爆発的に普及し、複雑な動画を処理しているのもかかわらず減り続ける。著しい進歩の省エネ技術などが効果を発揮している。データセンターも最新の省エネ技術を備え電力消費を抑える。企業側の電力消費削減を加味すると、「電力需要はそんなに増えない」と石田局長は見る。
日本は15年遅れ
素案では原発以上に期待される脱炭素電源、再生可能エネルギー(太陽光、風力、地熱など)の40年目標は4~5割程度。「すでに実現しているEUの水準。日本は15年遅れになる。米国も太陽光をメインとした再エネ発電に積極的で、『化石燃料を掘りまくれ』というトランプ大統領でもこの流れは食い止められないでしょう」(石田局長)
実際、再エネ発電の約7割は共和党の地盤、中西部州が中心だ。日照時間が長い、風力にバラツキがないといった再エネ発電に適した場所が多い。ここが選挙地盤の共和党議員は再エネ発言の拡充を訴える。
石炭、石油、天然ガスの火力発電の40年度目標は3~4割程度。結局は「火力発電、原発が主事業の電力会社の経営基盤を守るためのエネ基だ」と石田局長は断言した。