大リーグ球場命名権取得のダイキン工業 国内で「PFOA(ピーフォア)」汚染問題に直面 健康被害ないと主張
米南部テキサス州にある米大リーグのヒューストンアストロズの本拠地球場「ミニッツメイド・パーク」の名前が来年2025年1月から変わる。新名は「ダイキン・パーク」で、日本のダイキン工業が命名権を取得した。大リーグ球場命名権を日本企業が取得したのは初めてだ。
ダイキンは約170カ国で事業展開する空調機、化学製品の世界有数メーカー。ヒュースン近郊の工場では、17年から空調機生産し約1万人を雇用している。
国内外で有名なダイキンは、日本で大阪府摂津工場から漏出の有機フッ素化合物「PFOA(ピーフォア)」に起因する汚染問題に直面していることはあまり知られていない。同じ有機フッ素化合物の仲間「PFOS(ピーフォス)」と並んでPFOAも毒性が強い物質だ。
泡消火剤などの原料「PFOS(ピーフォス)」汚染は、米軍基地の漏出が発覚し、周辺住民の健康被害が懸念されるとマスコミで報じられ社会問題化している。一方、焦げ付かいプライパンや防水スプレーなどに使われた「PFOA(ピーフォア)」汚染はなぜかマスコミ報道は少なく、しかもダイキンの社名はほとんど伏せられている。PFOSもPFOAもWHO専門機関は発がん性を認定。
体内に蓄積されるので厄介だ。胎内曝露で胎児に悪影響があるという調査結果もある。どちらも国際的に製造・使用が禁止されたが、現在、問題になっているのは汚染された地下水、河川、農業用水などをどうするかだ。
環境省が全国の自治体の協力を得て20年に実施した汚染物質による河川、地下水などの濃度調査で出た摂津市のPFOA濃度は衝撃的な数字だった。1リットル当たり1812ナノグラムで、目標値の36倍にも上る。汚染源はPFOAを製造するダイキン摂津工場と断定されている。実は工場周辺では1950年代から牛の大量突然死や黄色に変じた田んぼ、枯れる稲など異常な出来事が起こっていた。住民たちは汚染された井戸水を飲み、農業用水で育ったコメや野菜などを食べた。
京都大学研究チームによる血液検査を受けた住民たちからは高濃度のPFOAが検出された。摂津市は「ダイキンの企業城下町」だ。摂津市はもとより大阪府や多くの住民もダイキンに規制を求めることに消極的。相手が大企業ゆえにマスコミも腰が引けている。ダイキンは「健康障害の証拠がない」と2000年以来言い続けている。このままでは、有害化学物質が原因の昭和時代の公害がよみがえるという声も高まっている。
詳細を知りたい方は10月に刊行した中川七海氏の著書『終わらないPFOA汚染 公害温存システムのある国で』(旬報社)を読んでいただきたい。