俺が死んだ理由
俺が死んだ理由はこうだ。
俺は大学生だった。そして違う大学の同じ学年に彼女がいた。初めてできた、何にも代えがたい可愛い存在だった。
その彼女がある日相談をしてきた。同じ学部の男に言い寄られていると。どうにかしてほしいと。
俺はその男に連絡をした。すると、男は俺と会って話がしたいと言い出した。俺はそれを承諾し、男の部屋に向かった。
俺は馬鹿だった。向かった先の部屋には、目当ての男以外にも何人もの男がいた。男は暴走族に入っていたのだ。
そして複数の男に囲まれ、俺の彼女もいた。彼女は怯えた目で俺を見ていた。
俺は助けようと押し入ったが、敵うはずがなかった。歯を折られ、内臓をえぐられ、何度も意識を失いかけた。
しかしその度に、彼女の悲痛な声で呼び戻された。彼女は身包みを剝がされ、件の男に舐めまわされていた。
彼女は最初必死に抵抗していた。しかし、内腿に執拗に吸いつかれているうちにその抵抗は弱弱しくなっていき、ついに限界を迎えたのか、、エビ反りになり絶頂した。俺は視界の端でそれを見ていた。
男たちは動かなくなった俺を部屋の端に捨て、俺の彼女を囲った。しかし男たちは乱暴することなく、優しく彼女を愛撫した。そして彼女のうなじをいやらしく舌でなぞった。
たがの外れた彼女は快楽に溺れ、滝のような小水をこぼし、艶やかに喘いでいた。
俺の意識はそこで途切れた。
気が付くと俺はスクランブル交差点の真ん中に突っ立っていた。否、正確にはその時はまだ俺が俺であるということもわかっていなかった。
綿毛のように、フワフワとそこに立っている存在。何も考えることができなかった。
しかし、自身が幽霊であることは朧気ながら認識していた。道行く人は俺の身体をすり抜けていくし、ショーウィンドウには俺の身体が極めて薄い半透明で映っていた。
そこに映る、水で薄めたような自分の顔を見て、ようやく俺が俺であると認識することができた。
ふらふらと歩いていると、いつの間にか馴染みのハンバーガー屋の所に来ていた。
ここはよく彼女と食べに訪れた店だ。旨そうな匂いを嗅いでいると、脳裏に愛くるしい彼女の笑顔が浮かんだ。
そこで俺は自分の身に何が起こったのかを悟った。そしてガラスの向こう、ハンバーガー屋の中には、俺を殺した男と仲良くテーブルに向かう彼女の姿があった。
俺は思わず男に掴みかかったが、その手は虚しく空を切った。俺は泣いた。涙は出なかったが声は漏れ出たようで、彼女と男はしきりに気味悪がっているようだった。
死んでもなお地獄を見せ続けられるのか。無になりたい。俺は強く願った。
俺は生家へと向かった。そこに行けばこの地獄を終わらせることができる。そう信じていた。
久しぶりに帰った俺の家は暗かった。懐かしい匂いがする。それだけで俺の心は少し安らいだ。気づけば俺は自室へと向かっていた。
かつての俺の部屋には、姉がいた。色黒の、筋肉質な男に激しく抱かれていた。
その男は、かつて俺を嬲り殺した連中の一人だった。
姉と俺は少し年が離れている。今年二十七になるはずの姉は、はるかに年下であろう色黒の男に全てを曝け出していた。
男はごつごつとした指で姉の陰部を弄った。姉は甲高い声で鳴き、なおも男を求めていた。陰部は浸かったように濡れていた。
なぜ姉とこの男が知り合ったのか。大体想像がつく。
弟想いの姉だった。弟が殺された真相に迫るうちに、あいつらに取り込まれたのだろう。
俺の目の前で、姉の陰部から飛沫が上がった。男は指についた汁を満足そうに舐めとると、姉を裏返らせ、後背位で挿入した。
力強く攻められ、姉はベッドシーツを鷲摑みして悶えていたが、あっという間にイカされてしまった。
俺は限界を迎え、生家を後にした。
この世界は地獄だ。救いなどない。
生きる人は天国を信じ地獄を恐れるが、今生きているこの世こそが地獄なのだ。