「聞こえない」創作大賞2024応募

 わたしは音が聞こえない

    いえのなかは
テレビ、洗濯機、電子レンジ、
インターホン、電話の呼び出し
いろいろな音があふれている

     外に出ると
車の動く音、鳥の鳴き声、犬の鳴き声、
子供の声、信号機のかっこうの音、歩く音

いえのなかよりもっと、
たくさんの音があふれている

わたしは、補聴器を使っている
補聴器を使わないと、
音が聞こえない

でも、補聴器を使っても聞こえない
音が聞こえないのではなく、
音が頭の中に届かない
みぎからひだり、ひだりからみぎに
雲のように流れていく

わたしはおしゃべりがだいすき
お父さん、お母さん、兄弟姉妹、
友達、先生、みんなとおしゃべりしたい
聞き逃したくないから補聴器を使う
だけど、聞こえないから
伝えたい事が伝わらない
聞きたい事が聞けない

聞こえないからおしゃべりが続かない
口の動きを見て、
何をおしゃべりしているか考えておしゃべりする

「今日は、いい天気だね」
「今日は、カニ食べたい」
「何を言っているの」

世界中で感染症が起こって、
マスクで口の動きが見えない、
ビニールシートで、スーパーやコンビニの
レジに居る店員さんの声が聞こえない
レジのお会計が歪んで見えない
こんなにも耳が聞こえない事が
大変になるとは思わなかった

それでも、紙とペンやカード、
タブレットを使って、おしゃべりが出来る
伝えられた、伝わった、嬉しい、楽しいと、
感じられる毎日がある

気付いていないだけで、
助けてくれる優しい人が居る
助けてくれる人に気付くと勇気を貰える
ひとりじゃないと思えて、
今日も元気に歩いて行ける


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