『軽く狂った感じのショートホラー本が頭に当たった!』第3話 ~🤷🤷♀️🤷♂️←この人たちの恐怖~
『第3話 🤷🤷♀️🤷♂️←この人たちの恐怖』
オレが誰かって?
名乗るほどのもんじゃねえよ。
noteっていうSNSで投稿を続けている、いわば人気noter様だ。
未だに独りもんだけど、有料記事が売れているお陰で、とっくの昔に勤め人生活とはおさらばして、今はnote専業で食ってるってところだ。
まあよろしくな!
あぁ、もうそろそろ今回の投稿記事も完成だな。
最後は『会話劇』の流れにして……ここで、オレのお決まりの人気ギャグをオチにしておこうか……。
「まぁ! ハチドリの美味しい食べ方ですって?! そんなの私、分かりまへんわ🤷」
「私も分かりまへんわ🤷♀️」
「私も分かりまへんわ🤷♂️」
🤷🤷♀️🤷♂️「まへんわ まへんわ まへんわ まへんわ」
🤷🤷♀️🤷♂️まへんわ! ワ~ッ!
よし! 決まった!
じゃあ……ポチっと「投稿」!
今回の投稿にも、きっとたくさんのスキとコメントが来る筈だな。
そして、有料設定にしてるから、これでまた銭がチャリ~ン💰チャリ~ン💰と入って来るのか。
人気noterは、やめられんな。
前にコメント欄でフォロワーさんとちょっとしたやり取りをしたことをきっかけにして、考え出したオレの持ちギャグ「🤷🤷♀️🤷♂️まへんわ まへんわ まへんわ まへんわ まへんわ! ワ~ッ!」が大きくウケたのをきっかけに、オレは人気noterに生まれ変わったってわけ!
🤷🤷♀️🤷♂️←このアイコン画像たちにも頭が上がらねーな。
愛してるぜ! オレの相棒たち!
オレはPCを閉じて、隣の部屋に行き、外出の準備を始めた。
そのときだった……。
どこかからヒソヒソと話し声がする……。
最初、家の外からと思ったが、どうやら違うようだ。
ん?
仕事部屋か?
さっきPCを閉じたと思ったけど、ちゃんと電源オフになってなくて、youtubeの動画でも再生されてしまったんだろうか?
仕事に戻ろうとすると、声がだんだんとはっきり聞こえてきた。
……わ~
……んわ~
……へんわ~
まへんわ~
ん?
何だ何だ?
「まへんわ」?
仕事場に戻ったオレは、PCの画面を見てギョッとした。
そこには、確かに閉じた筈のPCの真っ黒な画面があり、そこに……。
🤷🤷♀️🤷♂️「まへんわ~ まへんわ~ まへんわ~ まへんわ~」
↑ この人(アイコン画像)たちがいた!
「うわ~っ?! な、な、な、なんだぁ?!」
オレはパニックになって、情けない声で叫んだ。
🤷🤷♀️🤷♂️←この人たちはオレに気付き、話しかけてきた。
「あっ! アンタ戻ってきたか! 良かったわ~。アンタな、前から聞こうと思ってたけどな。今日、みんなで話し合って、アンタに直接聞くことにしたわ! アンタ、ウチらのこと記事に呼び出しておいて、その後、いつもパソコン閉じてどっか行ってまうけどな? ウチらいったいどこに帰ったらええねん? 正直、ウチら、どこに帰ったらええんか、分かりまへんわ🤷」
「私も分かりまへんわ🤷♀️」
「私も分かりまへんわ🤷♂️」
🤷🤷♀️🤷♂️「まへんわ まへんわ まへんわ まへんわ」
🤷🤷♀️🤷♂️まへんわ! ワ~ッ!
「うわ~っ?!」
オレは恐怖のあまり、PCが閉じられてることを再確認し、それから急いでコンセントを引っこ抜いた。
そして、🤷🤷♀️🤷♂️←この人たちが見えなくなるよう、PCの画面を折り畳んだ。
…………。
一瞬の静寂……。
しかし?!
その直後!
……わ~ ヨイショ!
……んわ~ ヨイショ!
……へんわ~ ヨイショ!
まへんわ~
🤷🤷♀️🤷♂️←この人たちが、どうやったのか知らないが、「ヨイショ! ヨイショ!」の掛け声とともに、折り畳まれたPCの画面をまた開いてきた。
「あっ! アンタ、何してんねん! 話し合いの途中やろ! 記事でウチらのこと呼び付けたの、アンタの方やないか! ウチら、いきなり呼ばれたんやけど、投稿終わったら、どこに行ったらええねん? アンタ、勝手にパソコンの画面閉じたら、あきまへんわ🤷」
「あきまへんわ🤷♀️」
「あきまへんわ🤷♂️」
🤷🤷♀️🤷♂️「まへんわ まへんわ まへんわ まへんわ」
🤷🤷♀️🤷♂️まへんわ! ワ~ッ!
「うわ! うわ! うわ! うわ! うわわわわ~っ?!」
オレは恐怖のあまり、半狂乱になって、拳で何度かPCの真っ黒な画面を殴りつけた挙句、それでは足りないと思い、冷蔵庫からワインの瓶を持って来て、ワ~と情けない叫び声をあげながら、瓶で徹底的にPCの画面を殴り続けた。
やがて、PCの画面はボコボコに壊れ、いつしか🤷🤷♀️🤷♂️←この人たちもいなくなってしまった……。
……今のは何だったんだ?!
オレも最近、投稿が続いてるから、ちょっと疲れてきて幻覚が見え始めているのか?
少し休んだ方がいいんだろうか?
……でも、投稿の間を空け過ぎると、ファンに忘れられ、離れられてしまうから、それはできない。
この競争激しいSNS業界において、インフルエンサーの地位を保ち続けるには、まだまだこれからが頑張りどきだ!
ふぅ~と息を吐き、オレはソファに座った。
そして、ふと部屋の窓を見たオレは、またもや間の抜けた悲鳴を上げた。
「うううううううぅ、うわ~っ?!」
オレの目線の先、部屋の窓には、🤷🤷♀️🤷♂️←この人たちがピッタリと貼り付いていた。
「アンタ! ウチらのこと愛してたんちゃうんかいな! 何で、そんな凶器で乱暴にすんねんな! ウチら、アンタの気持ちがホンマに分かりまへんわ🤷」
「私も分かりまへんわ🤷♀️」
「私も分かりまへんわ🤷♂️」
🤷🤷♀️🤷♂️「まへんわ まへんわ まへんわ まへんわ」
🤷🤷♀️🤷♂️まへんわ! ワ~ッ!
🤷🤷♀️🤷♂️←この人たちには、見てのとおり下半身がなく、お腹から上の上半身だけで宙に浮いた状態で、「🤷🤷♀️🤷♂️まへんわ まへんわ まへんわ まへんわ」のくだりで、左右交互に上半身を上下に「🤷🤷♀️🤷♂️シャカシャカシャカシャカ」と揺らした。
「たたたたたた、助けてぇ~っ!」
オレは財布とスマホが入ったバッグを無造作にひったくって、家の外に飛び出した。
アレはホントに、げ、幻覚なのか?
取り敢えず、人通りの多いところに行こう。
あのまま1人であの家にいるのは、何となく危ない気がする。
オレは🤷🤷♀️🤷♂️←この人たちが追いかけて来てはいないか、ときどき後ろを振り返りながら、人がいっぱいいそうな駅に向かってひた走った。
恐怖にドキドキしながら全速力で走り続けたせいで、オレは息も上がり、吐き気を感じ始めたあたりで、ようやく止まった。
時刻は夕方で、仕事帰りのサラリーマンや学校帰りの子供たちで駅周辺には人が大勢いた。
オレは自動販売機によりかかり、何度も何度も周囲を見回したが、どうやら🤷🤷♀️🤷♂️←この人たちはいないようだった。
※※※※※
オレは悩んだ。
警察に相談するのは、実に馬鹿げた発想だと思った。
仮に「🤷🤷♀️🤷♂️←この人たちが追いかけて来るんですぅ~」と相談したとして、頭がおかしくなったと思われて、病院を紹介されるか、もしくは非合法な薬の類でもやっていると思われて、そのまま身柄を拘束されかねない。
……それとも……ファンを喜ばそうと、色々なネタを考え続けた挙句、オレの頭は本当におかしくなってしまったのだろうか?
そうだとしたら、幻覚症状が深刻化する前に、自分から病院に行っておいた方がいいんだろうか?
……その手の病院に行ったことがないが、果たして医者の方でも「🤷🤷♀️🤷♂️←この人たちが追いかけて来るんですぅ~」などという相談を受けたことなんかあるんだろうか?
いやいや、下手に相談に行くと、『ドグラ・マグラ』の小説みたいに、無理やり病棟に監禁されて、外に出て来られなくなるかもしれないぞ。
危ない危ない……。
じゃあ、いったいどうすれば?
…………。
う~ん。待てよ……。
ひょっとして、🤷🤷♀️🤷♂️←この人たちは、実在するのではないだろうか?
オレが自分勝手に金儲けのために🤷🤷♀️🤷♂️←この人たちを酷使し過ぎたせいで、🤷🤷♀️🤷♂️←この人たちは抗議しに来たということは、考えられないだろうか?
確かに「🤷🤷♀️🤷♂️まへんわ まへんわ まへんわ まへんわ」のパフォーマンスを「労働」と捉え、オレが🤷🤷♀️🤷♂️←この人たちの「雇用主」であると考えた場合、労働条件の改善を求めてオレに詰め寄ってくるということも理解できなくはない。
ん?
🤷🤷♀️🤷♂️←この人たちは、「🤷🤷♀️🤷♂️ウチら、どこに行ったらええねん?」って、言ってたな。
🤷🤷♀️🤷♂️←この人たちは「住居手当」的なものを要求しているのか?
ん?
そもそも、🤷🤷♀️🤷♂️←この人たちに家を貸してくれる人なんているんだろうか?
ん?
オレが🤷🤷♀️🤷♂️←この人たちのために家を借りてあげなくてはいけないのか?
……まさか……🤷🤷♀️🤷♂️←この人たち……家買ってくれなんて……言わないよな……。
ん?
🤷🤷♀️🤷♂️←この人たち……3人でルームシェアするのか? 「🤷🤷♀️🤷♂️家3つ買ってくれんと、あきまへんわ~」とか、さすがにムリだぞ!
ん?
🤷🤷♀️🤷♂️←この人たち、一緒にオレの家に住ませてくれってことか? いや、ムリムリムリムリ! 怖過ぎる!
ん?
🤷🤷♀️🤷♂️←この人たち、何か食べるのか? 食費まで面倒みなきゃならんのか? 他に何を求めてくるんだ?
……どちらにせよ……🤷🤷♀️🤷♂️←この人たちを1人で対応するのは怖いな……。
弁護士に相談するべきなのか……いや……霊能力者か何かか?
オレは🤷🤷♀️🤷♂️←この人たちのことを考え続けて、頭が痛くなってきた。
もう今日は疲れ果てた。
いったん横になりたい。
でも、家に戻って夜中に🤷🤷♀️🤷♂️←この人たちに窓の外に立たれたら(「立つ」というか、「浮く」というべきなのかもしれないが)めちゃめちゃ怖い!
どうしよう……。
散々考えた挙句、オレはひとまず今晩は、駅近くのビジネスホテルに泊まることにした。
オレは🤷🤷♀️🤷♂️←この人たちがどこかに隠れていやしないかと、ホテルのロビーからエレベーターの隅々まで、神経質に調べた。
そして、部屋のドアの前まで来たものの1人で部屋に入るのが躊躇われ、そのままロビーに戻り、フロントに「トイレの水が流れない」などと嘘を吐いて、ホテルの従業員に一緒に部屋まで来てもらった。
従業員が、「あれ、お客様、お手洗いの水、普通に流れるようですよ」などと言ってるのを適当にあしらいながら、オレは部屋の隅々やベッドの下、クローゼットの中、ベランダまで必死にチェックした。
さすがに🤷🤷♀️🤷♂️←この人たちもホテルの中までは追いかけて来ないらしい。
オレは安心し、ホテルの従業員を部屋から追い出した後、今度こそ本当に疲れ果ててベッドに横になった。
その夜は念には念を入れ、オレはnoteの自分のアカウントにアクセスすることは諦め、スマホも一切開かなかった。
🤷🤷♀️🤷♂️←この人たちが、いつクローゼットを空けて出て来やしないかと、オレは気が気でなく、なかなか寝付けず、夜中に何度も目が醒めた。
しかし、オレは昼間の疲れもあって、いつしか深い眠りに落ちていった。
※※※※※
翌朝、カーテンの隙間から光が差し込んでいるのを感じ、小鳥の鳴き声を聞きながら、オレは眠りから目覚めつつあった。
ん?
しかし、寝惚けたオレの耳に聞こえてきたのは、小鳥の鳴き声だけではなかった。
……わ~
……んわ~
……へんわ~
まへんわ~
オレは急に目が完全に醒め、異変を感じてホテルのベッドから飛び起きた。
……そこでオレが目にしたものは……。
「あっ! アンタ、目ぇ覚ましたな! こんなとこまで来て、どないすんねんな! ウチら、ひと晩中、アンタのこと探したがな! アンタ! ウチらだけ置いて行かれても、ウチらどこに帰ったらええんか、分かりまへんわ🤷」
「私も分かりまへんわ🤷♀️」
「私も分かりまへんわ🤷♂️」
🤷🤷♀️🤷♂️「まへんわ まへんわ まへんわ まへんわ」
🤷🤷♀️🤷♂️🤷🤷♀️🤷♂️🤷🤷🤷♀️🤷♂️🤷🤷♀️🤷♂️🤷🤷♀️🤷👨←オレ🤷🤷♀️🤷♂️🤷🤷🤷♀️🤷♂️🤷🤷🤷♂️🤷♂️🤷🤷🤷♀️🤷♂️🤷🤷♀️🤷♂️🤷🤷
まへんわ! ワ~ッ!
「うわ~っ?! 何で増えてるんだ?!」
(第3話 完)
※※※※※
ふぅ~…………。
最終話となる第3話が終わった……。
立希(たつき)は、最終話の主人公と同様に、何だかドッと疲れたような気持ちになった。
本の内容に集中していたために気付かなかったが、雨の勢いもだんだんと強くなってきているようだった。
この気味の悪い本を公園のゴミ箱に捨てよう。
…………。
本には、数ページが残っているようだった。
……どうせ、ページをめくると、最後にまた『アヒル口の麗子』が出て来るのだろう。
……ただ……あのミステリアスな雰囲気のキャラクターが、最後にどんなことを言っているのか気にはなった。
たぶん、「アラ、あなた、この本を最後まで読んだのね? あんなに私がアドバイスしたのに……。もう、あなたは本の中の『軽く狂った感じの世界』に入り込み、抜け出すことはできないわよ。フフフフフ」みたいなことを言うんだろう。
そんな漫画は読んだことがある。
さて、最後にあの美人のイラストでも見て、本を捨てるとするか!
立希は、そんな気持ちでページをめくった。
…………。
しかし……立希の予想に反し、そこには『アヒル口の麗子』のイラストはなかった。
そして、そこに書かれていた文字に、立希は今度の今度こそ、全身に鳥肌が立つほどに震え上がった。
…………なぜなら……そこにはこう書かれていたからだ。
「立希。迎えに来たよ」
(エピローグにつづく)