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ついにその日がやってきた(中国工場撤退の厳しい現実4)

一旦不退転の決意で中国進出を果たした企業は、いままで乏しいヒト、モノ、カネの経営資源を投入して、様々な障害を乗り越えながら事業を継続してきましたが、中国の外資企業に対する政策も、進出優遇策から選別策へ方向転換、人件費の上昇、労働条件の見直しなど進出企業を取り巻く環境は年々厳しさを増してきました。

■ 撤退は膨大なエネルギーが必要
ところがいざ撤退となると、進出時の何倍ものエネルギーを消耗すると言われています。従業員一人一人との解雇交渉、退職金の支払い、債務の支払い、設備類の処分などによって、投下した資本はほとんど回収できないのが現状です。それに政府関係者との交渉もなかなかスムースにいかず1年いや2年も掛かるることもあり、精神的ストレスも加わります。

■ 真のグローバル企業への脱皮できるか?
進出戦略は練っても、撤退する時の戦略までは考えていなかったと言う企業がほとんどであったと推測されますが、安易に撤退を考える前に、本当に中国で事業を継続していく手立ては無いのか?今一度検討してみることも必要では無いかと思います。
今まさに、真のグローバル企業として、リスクにも耐えられる「強い企業」「強い工場」作りを行って行くチャンスとも捉えられます。

撤退するにしても日本の市場は、縮小するのみであって、これから成長する巨大な中国やアジアの市場をどうやって取り込んでいくのか?それには中国から撤退するのか、また違った方法で実現していくのか?の視点で生き残り策を講じていく前向きの姿勢が求められます。

日本の中小製造業は、中国、ベトナム進出ブームが一時期盛んでしたが、現在は下火となっています。優れた技術をもっと海外市場に生かすべきと考えますが、海外市場で技術を活かすことに踏み出しづらい状況があります。

それにには、いくつかの原因が考えられます。第一に、国際ビジネスはリスクを伴います。政治的、経済的な不安定要因や市場の変動などが中小企業にとって大きな負担になる可能性があります。そのため、新たな市場に進出することへの慎重さがあります。

また、海外進出にはコストやリソースが必要です。中小企業は資金や人材の限られた状況下で、新たな市場に参入するための投資や拡張を行うことは困難な場合があります。

さらに、現地でのビジネス文化や規制、言語の違いなど、異なる国や地域でのビジネスを行う際にはさまざまな障壁が存在します。これらの障壁を乗り越えるためには、時間とリソースを割かなければなりません。

対策としては、まずはリスク管理を強化することが重要です。市場調査やリスク分析を行い、適切な戦略を立てることが必要です。また、パートナーシップや現地のネットワークを活用することで、リソースや情報を効果的に活用できるでしょう。

さらに、政府や業界団体の支援を受けることも考えられます。中小企業の海外展開を支援するためのプログラムや助成金、情報提供などがありますので、それらを利用することで海外進出へのハードルを下げることができるかもしれません。

最終的には、戦略的な長期的視点を持ちながら、リスクを最小限に抑えつつ着実に海外市場に参入することが重要です。

■ 中小企業の生き残り策は「オンリーワン」を目指すこと
中小企業の生き残り策の本質は「オンリーワン」を目指すことです。特殊な技術であれ、きめ細かいサービスであれ他社がすぐに真似ができない「オンリーワン」をいかに育て上げ、顧客に提供できるかに掛かっています。

今一度、自社の強みは何か?弱みは何か?そして、強みをもっと強くし、弱みを無くすためには何をどうすれば良いかを整理して見ることを薦めます。大企業とは違って、資金力も設備力も劣る中小企業にとって、「人材」という経営資源を生かすことが「オンリーワン」を目指す上で最も近道だと私は考えています。

中小企業では、優秀な人材が集まらないと良く言われますが、例え10人の企業といえども一丸となればその力は強大です。100人の企業なら、もう人材には事欠かないと考えるべきです。経営者は「オンリーワン」への道のりを全従業員に対して明確に示し、全員の力を結集するリーダーシップが求められます。

日系中小企業は、中国撤退を考える前に「強い工場作り」を目指し再チャレンジし、真のグローバル企業として脱皮する事を期待します。

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やはり、生々しい実際の経験から得た教訓を共有して頂ければと思います。

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