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ついにその日がやってきた(中国工場撤退の厳しい現実1)

厳しさを増す中国事業からついに撤退するときがやってきた。
のんびりと、中国進出企業のハウツーを講釈している暇はない。自分の足元でついに火がついてしまった。
わが社が委託している現地ローカル会社が事業を投げ出したのだ!困った!困った!

1年近く準備して、ようやく量産に漕ぎ着けた矢先、投資した金も回収できず大損害だ。撤退までのプロセスはどうする??これから一つ一つ解決していかねばならない。

批評をしている時間はない。中国での委託生産の難しさは、過去、何度も取り上げてきたが!費用の精算、設備の引き上げ、生産高の確保対策など、現実問題が山積み状態になっている。

広大な敷地の工場に機械が並ぶ中国工場

■現在の撤退の状況
中国の特に沿海地域にある労働集約型、低付加価値産業に位置づけられる外資系輸出企業、とくに加工貿易の経営形態をとっている外資系企業では大規模な撤退が始まっている。広東省ではおもに香港系と台湾系企業の工場閉鎖と移転が増えている。移転先は中国内陸地域、ベトナムなど東南アジア地域である。

山東省では、韓国系輸出企業の閉鎖が目立つ。そのなか、賃金を支払わず、債務も残して、経営者が突然消えて、いわゆる「夜逃げ」も大量に発生していると聞く。中国において日系企業は比較的高付加価値の分野に集中しているため、コスト上昇の影響を受けてはいるが、他国企業に比べ撤退することが少なかったが、大手企業も撤退を始めている。

■撤退の要因と対策
外資系企業、とくに輸出企業にとって、労働力不足、人件費の上昇、環境規制の強化、原材料の高騰、優遇政策の見直し等の諸要因によるコスト上昇によって利益が圧迫され、経営が苦しくなる。

コスト上昇の圧力に対して、外資系輸出企業はさまざまな対策をとっている。例えば、より高付加価値の製品に切り替え、製品の高度化を図る。また、生産工程の自動化を推進し、低賃金の労働力への依存からの脱出を図る。さらに、輸出が困難になったことを避けて、販売を国内市場に切り替える等である。

もうひとつの選択肢として、生産工場を沿海地域からコストが安い地域に移転することである。移転先はおもに周辺の内陸部地域、もしくはベトナムなどの東南アジア諸国である。
ただし、中国の内陸部では輸送コストが高く、通関上の不便もある。ベトナムでは部品供給とサービス提供などの関連産業の未発達が問題である。

このような対策が打てない企業にとって、工場を閉鎖し、廃業して中国から撤退することは残された選択となる。
(その2へつづく)

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やはり、生々しい実際の経験から得た教訓を共有して頂ければと思います。

チャイナリスクの増大に伴って、中国からの大手企業の撤退が加速しています。ここでは、実際に事業撤退を経験した私が、当時(2012年)の中国の…

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