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ついにその日がやってきた(中国工場撤退の厳しい現実5)
中国では、あらゆる分野でコピー品(模倣品)が横行している。医薬品、農薬、食品、家電製品などの分野では、そうした不正商品の製造企業の能力はしだいに高度になり、外観上本物と区別がつかないほど技術が向上し、不正商品の日本への輸出も増加している。
かつて、高度成長期の日本は欧米の先進技術を見よう見まねで習得し、「物まね大国」と呼ばれていたが、独自の工夫と改良、ねばり強い改善により技術立国としての地位を築き上げてきた。
中国では日本の高度成長期とは異なり、世界中から批判を浴びるほど多種多様なコピー商品、粗悪な模倣品、酷似した商標が氾濫している。中国でこれほどまで不正商品がはびこるのはいくつかの背景がある。
1.不正コピー商品の種類
①ロレックスのような高級時計やルイ・ヴィトン、エルメスなどの高価なバッグや財布など高価な商品を対象とした明らかな違法コピー品
②パソコンソフト、音楽CDなどの違法コピー品、ライブなどを無断で録音したもの(海賊版)
③ゴッホのひまわりなど絵画、ディズニーキャラクターグッズなどの模倣品
④外観は異なっているが、機能などが酷似しているゲーム機などの部分コピー品
⑤社名やロゴ、商品名などを似せた酷似ブランド品
2.不正コピー商品の生産地は広東省、浙江省などに集中
広東省や浙江省などは経済的に発展し、海外からの技術、設備が入手しやすく、製造設備や、模倣対象のサンプルの入手が容易で、また正規のブランド品を作っている工場が、素材を横流しが容易であるなど不正コピー商品の生産に適した環境ができあがっている。
3.中国メーカーの動向
こうした環境のもと、テレビ、家電、パソコン、携帯電話機、バイク…など日本が得意とし、中国へ展開した商品は、中国メーカーの標的となった。まず中国市場で人気の高い日本メーカーの製品を見つけては模倣する。
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しかし、丸ごと真似する場合だけでなく、品質や機能と低価格をはかりにかけ、より中国市場で受け入れられる「低価格」商品を作り上げる。そして徐々に中国市場のシェア上位に中国国内企業が占めるようになってきた。
売れてシェアを高めたコピー商品メーカーは、量産効果を得てさらに価格支配力を強めていく。知名度が高い日本の商品は広告・宣伝費などの各種経費が不要なので、低コストで生産可能なうえ、低品質でかまわないこともあり、高利益を得ることができる。
高い技術を習得した一部のメーカーは、独自の製品を中国市場に量販できるだけの力を蓄えて来た。しかし上記のような独自製品を生み出す技術力のある企業はまだごく一部であり、粗悪模倣品を製造している違法な悪徳企業が未だ多数存在している。
4.中国消費者の生活水準に適応
現在、中国の工場労働者の給与は月6,7万円程度で、まだまだ十分な額とはいえない。「中国市場には,品質や機能がそこそこなら,それ以上品質や機能を高めるよりも,価格を重視して下げてほしい」という声が大きい。
つまり,「日本メーカーが実施する“行きすぎた”品質や機能よりも,安さを選ぶ」という顧客がたくさんいるというのである。
5.政府の取締にも限界がある
取締機関は、不正商品の製造業者数が多いため、そのすべてを取り締まりきれない。
また、中国では法整備が遅れていたことからくる遵法精神の水準の低さに加えて、取り締まっても、損害賠償、罰金、刑罰が軽いため、犯罪の抑止効果が低いことなどの理由で、取り締りの効果がなかなかあがらない。
6.甘い政府の対応・日本企業の対応
(1)不正競争防止法の不備
中国国内法の整備の遅れもさることながら、欧米に比べ日本のコピー品に対する法整備があまりにも不備である。以下に例を上げる。
①商品形態を模倣したデットコピー品の輸入を禁止しているが、その対象は商品の形態の模倣のみで、内部的設計の模倣は対象外
②形態の模倣でも販売後3年を経過した商品は日本に輸入しても取締の対象外
③ICチップの電子回路をコピーした模倣品を輸入しても取締対象外、形態の模倣を禁止するのみ
(2)不正に無防備な日本企業
日中友好とビジネスを区別できない経営者、中国の事情、相手企業について調査、勉強、理解を怠っている経営者は、得てしてトラブルに巻き込まれる。
ノウハウや設計図面、製造技術を無条件で提供すると、いつしか彼ら独自でコピー商品を製造するようになる。技術だけ吸い上げられ客先に半額以下で販売されてしまう。こういう現実とリスクを十分理解した上で中国へ進出すべきである。
例えば、取り引き基本契約は、取引を開始する前に必ず締結する必要がある。しかも内容は、契約違反が判明した場合、ペナルティーや損害賠償義務を必ず盛り込んでおく必要がある。
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7.迫られる市場にマッチした製品の開発
コピー商品を非難ばかりしている場合ではない。行き過ぎた品質、機能を追求してきた日本企業は、「世界の工場」から「世界の消費地」へ変身を遂げつつある中国や東アジア、インド市場などにマッチした製品を開発し、供給していく必要がある。
市場に受け入れられるために、同じ価格なら日本製を選ぶと言った魅力のある独自商品やサービスを含め提供していくことが日本企業に残された道であると考える。
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