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ディストーションでギャァァーン


僕が中学生の頃はニューミュージックが
全盛で、ヒットチャートの約半分は
ニューミュージック系のミュージシャン
が占めていた。
このミュージシャンたちが宣伝した
アコースティックギターはバカ売れし、
僕が住んでいた、あのドドドド田舎
でさえ、ちょっとした音楽好きなら
間違いなくギターを持っていた。
「えっ!?お前が?」っていう友達が
ギターを持っていた時には
目を丸くして驚いたものだ。

ちなみにこのニューミュージックだが、
音楽的なジャンルのくくりではなく、
シンガーソングライターが作った
日本のポピュラーソングに対して
当てはめられていたらしい。
今で言うJ-POPとほぼ同じだ。
だから、「アリス」や「さだまさし」
「中島みゆき」に「松山千春」
はわかるが、「甲斐バンド」や
「サザンオールスターズ」なんかも
ニューミュージックとして売られていた。

さて、中学1年生だった僕たちは、
すっかりこのニューミュージックの波に
煽られてバンドを組んだわけだが、
最初の頃、僕はどちらかと言えば
フォーク寄りのニューミュージックを
よく聴いていた。
要するにフォークの弾き語りに
バックバンドを付けたような音楽が
大好きだった。
実際、初めて組んだバンドは、
ドラムやエレキギターに
「手伝ってもらう」という形だった。
しかし、手伝ってもらっていたはずの
エレキギターがいつの間にか
メインになり、僕らのバンドの色は
変わっていった。
そして、シレっとレパートリーに
加わったのが「甲斐バンド」だった。
初めて聞いたのは「翼あるもの」や
「きんぽうげ」だった。
僕はまるで洗脳されたかのように
聞きまくり、ロックのかっこよさに
酔いしれた。

実際にバンド練習をやったときに
それは起きた。
ギターの黒川(仮)がギターとアンプの
間に、見慣れないオレンジ色の
小さな箱をつないでいた。
彼はそれを「ディストーション」だと
教えてくれた。
「????????」
僕にはさっぱりわからなかったが、
次の瞬間にその衝撃は訪れた。
ギャァァァアァァアァン!!!!!
グッグッグッグッググゥワァーン!!
「すっすげぇ・・・」
まるで体に電流が走ったような衝撃
というのを実際に体感したのだ。
そして黒川は「きんぽうげ」の
イントロとソロパートを弾いて見せた。
「レコードとおんなじだ!」
「まるで甲斐バンドがいるみたいだ」
今となっては恥ずかしいくらい
純粋な中学1年生の感想。そして、
「黒川はきっとプロになるんじゃないか」
などと中学生特有の
単純な思考回路で思っていた。
そして何度も何度も甲斐バンドの曲を
弾いてもらって、毎回同じように
感動していた。
なんだか女子のような行動で、
今となってはカワイイとしか言いようがない。

しかし、僕にはこの
「黒川のディストーション」と、
中学2年生で組んだロックバンドの
演奏の体験を超えるものが
ないのかもしれない。
僕にとってのカッコいいエレキギター
の音は当時のBOSSのディストーション
の音であり、
その後いくつか組んだバンドでも目指していた
音は、最初に組んだバンドの音だった。
確実にうまく演奏できるように
なっていたのだが、
「なんかギターの音が違う」とか、
「なんで昔みたいにできないんだろう」
ってずっと思っていた
たぶん演奏力というよりは、
なんだかバタバタしているけれど
勢いと、本当に楽しんでいる感じが
大好きなんだと思う。

ディストーション初体験がこんなに尾を引くとは自分でもビックリである。

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