1000文字小説(114)/ポルノ⇔ポルノ⇔ポルノ(俗悪)
某国立大学。
「毎回、監督の著作は、熱心に読んでいましたが、この本だけは納得できません」
異を唱える
アメフト部の男子学生たち。
そこは、大学の講堂。
ある『講義』が、行われている。
『講義」 というより『論争』。
というより『暴動』である。
そう
それは、どこか、あの「三島由紀夫vs東大学生」のような
殺伐とした雰囲気。
『インターネットポルノを見まくれ!』という本。
これが『論争』の元凶である。
ポルノを見れば、運動能力が上がるという説!
スポーツ心理学の教授。
アメフト部の監督も兼ねる。
熱くなるアメフト部のメンバーたち。本を手にして、監督に詰め寄っている。
「監督」
「説明しろよ」
時折、耳を塞ぎたくなるような、怒号も飛び交う。
女子学生たちの姿はない。
理由は明白。
内容が内容だ。
弾劾裁判。
監督の頭に、火でもつけそうな雰囲気。
「監督。この本の内容、嘘ですよね?」
アメフト部キャプテン。
筋肉隆々で、いかにも女の子にモテそう。
いつも隣にいる
金魚の糞のような、チアリーダーの姿はない。
他のアメフト部のメンバーも同様である。
破局したのだろう。
この数年、話題となっている『インターネットポルノ中毒』の危険性。
イン●テンツ。
倦怠感。
メンタル崩壊。
教授は、この説が知られる前に、
アメフト部のメンバーに、自著『インターネットポルノを見まくれ!』をプレゼントした。
選手たちは、この本を熱心に読んだ。
そしてネットのエロ動画を見まくった。
数年にわたって。
その”効果”が出始めたらしい。
話題作を何冊も出版している監督。
某小説家のように、常識を覆すような内容も多い。
だが、今回ほどネットで炎上した著作はない。
「そうか」
驚いている監督。
わざとらしい。
「ええ。僕らメンバーも、本のせいで、生活に支障が出ているのです」
「ほう、どんな支障だ?」
「イン●……」
言葉が続かない。
「ははは。そうか。イン●テンツか? 俺の本を読んで、ポルノを見まくって、イン●になったか?」
「……」
キャプテンは、無言である。
無言であることが、全てを肯定している。
俯いたままのメンバーたち。
選手たちは全員、イン●が理由でチアリーダーたちに振られたのだろう。
「ざまみろ」
笑う監督。
「俺は、前からアメフト部のチアリーダーを狙ってたんだ。だが、誰も相手にしてくれない。だから、事もなげにチアリーダを物にしたキサマらに復讐したんだ。もはや、キサマらは単なるイン●テンツ集団に過ぎない」
嘔吐。