【小説】#トー横キッズ⇔出会い系サイト⇔裏バイト♡(ショートショート)
『超、会いたいです。トー横で、パパ活希望。●●●もしたいな。タマミ♡』
タケヒサは、パソコンで文章を入力した。
タケヒサは、久しぶりの登場だ。
●●●のところは、極めて意味深にした。
相手が、メールしたくなるように、会いたくなるように、●●●したくなるように、文章を打つのだ。
上出来。
トー横キッズっぽい。
パパ、会いたい。
本物の中学生女子のよう。
無邪気で、性的な文章。股間が堅くなってくるほどだ。
前回は心霊スポット案内のバイト。
今回も、変わったアルバイトをしている。
出会い系サイトのサクラである。
十代女子の利用者のふりをして、男(主に中年男性)の利用者とメールやSNSで遣り取りをする。
もう少しで、研修期間が終了する。
ゴンドウという男がマネージャー。
ゴンドウは、クジラのような印象の男だった。
巨体。
身長190センチ、体重200キロ。
のそのそと歩くが、小さな目は威圧的だ。
『客とのリアルな遣り取りは禁止。あくまでも、相手に恋愛のファンタジーを見せるのが目的。相手と、会う約束してもいいけど、ギリギリまで引っ張って、キャンセル。これの繰り返し。たまに、待ち合わせ場所に、こっそり偵察に行くヤツとかもいるけど、ご法度。そんなの見つけたら、即刻クビ』
ゴンドウの小さな目が光る。
いずれにしても、ボロいバイトである。
在宅ワーク。
時給1500円。
眠ってでもできる。
『会いたいよ』
十代女子のふりして、野郎どもとメール。
初めは心配だった。
だが、あまりに性欲むき出しのオッサンたちを目の当たりすると
「コイツら、全員死ねよ」
と唾を吐きかけたくなった。
高額な出会い系サイトで、金を支払うのも自業自得だ。
ざま見ろ。
それに、本物の女子高生の利用者と仲良くなった。
『今度、電話したいな。ノッコ』
相手は、乗り気である。
『電話番号送るよ。マジで話そう』
タケヒサは、この出会い系サイトで、サクラをやっていると素性を明かした。
それほど、何でも話せる仲になった。
タケヒサはノッコの為にも、この仕事を続けるつもりだった。
研修期間は、今日で終了。
明日、新宿の事務所に行く。採用か不採用か決まる。
事務所。
「不採用」
ゴンドウは言った。
「なぜです?」
「ノッコだよ。ノッコ」
「え」
「ノッコの正体は俺。俺が女子高生のふりして、不正をしないかチェックしていたんだ」
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