【時短系料理人10】
『アイツらは、せいぜい豚の餌で十分だよ』
パパは言った
――どうやら、アイツらとは、僕とママのことらしい
「ママ、僕たち、豚の餌で十分だってさ」
僕はママに言った
運転席のパパには聞こえていない
「え?」
ママが問い返す
スープにされたママは、相変わらず後部座席の容器の中で揺れている
「ブ、タ、ノ、エ、サ」
僕は言った
言っていて、悲しくなったほどだ
僕たちは、一度、冷凍されたが、どんどん溶け始めている
ドロドロのスープの状態に戻りつつあるんだ
(え)
突如、車が加速する
ガクンと減速する。これを交互に繰り返している
(どういうこと)
パパは、「煽り運転」をし始めたんだ
前の気の弱そうな車。小さな、小さな車。古いミニクーパー
最低人間のパパは、自分より、弱そうな車を見つけて、「煽り」始めたんだ
「ママ、信じられない。パパ、最低だ」
「そうね。最低な男ね」
「僕たちをジョンたちに食べさせられなかったからって」
「全く、その通りね」
ママは同調している
――こうして、スープにされた僕たちは、パパへの「軽蔑心」をますます強めていったんだ