1000文字小説(88)・深夜コンビニの恐怖(超こわくない話/ギャグ劇団笑)
僕は寺の息子。本当は怖がりだが見えてしまう。
お寺を継ぎたくないのでフリーターをしている。
住職のオヤジは、フリーター生活から足を洗わせようと様々な試練を与えてくる。
このコンビニもその一つ。ここはオヤジの知り合いの店らしい。
この店を選んだ理由は一つ。“幽霊”が出るらしい!
時給が2000円。高すぎる。
ここは昔、近くにあった工場が爆発して、マンションの一階から三階部までが焼失したらしい。
部屋にいた人たちは黒焦げ。ここで起こる怪異は、その時に亡くなった住人達の幽霊によるものだという。
目の前には廃墟と化したマンション。取り壊すのに金がかかるため、いまだに焼け焦げたまま放置されている。
きわめて不気味。
(帰りたい)
だがオヤジとの戦いの意味合いがある。朝が来るまで逃げることなどできなかった。
「丑三つ時」
店長が青い顔で告げる。
「夜の丑三つ時を過ぎると、ほとんど客は来ない。そこから怪異が続く。耐えられなくて逃げ出すアルバイトがほとんどだ。もう肝試しさ。ここは恐ろしいコンビニなんだ」
自分の頭がバーコード化しているハゲた店長は逃げるように帰っていった。
怪異が起こるのは丑三つ時を過ぎたあたりからだという。
僕はオヤジに勝つために、その地獄のような時間を乗り切らなければならない。
22時台の品出しを終える。あとは特にやることはなく客も来ないため、店の奥でエロ本を読んでいてもいいという。
怖くてそれどころではない。
夜も深まり「問題の時間」が到来した。
『キンコン』
入店のチャイムが鳴る。
「いらっしゃいませ」
僕は怯えながら、入り口を見た。
「キャッキャ」
明るい笑い声がして“ホッ”とする。
制服姿の女子高生の二人組である。冗談を言い合いながら買い物をしている。
『キンコン』
別の客がやってくる。
カップルだ。仲良くイートインスペースで食事をしている。イートインが満席となった。
にぎやかに食事をしている。
(運がよかった)
数分おきに買い物客が来たため、怖い思いもしなかった。
無事に夜が明ける。
「おはよう。異常ない?」
バーコード頭が出社してくる。
「ええ。怪異は起こりませんでした。むしろイートインスペースを利用する客がたくさんいて心強かったです」
僕は微笑む。
「イートインスペース?」
「ええ」
「元気なお客さんたちで満席になりました」
「バカ。アレ、全員幽霊なんだ」