【小説】#インチキ僧侶VSヤラセ霊媒師VS八百長ボクサーVS結婚詐欺師(ショートショート)
「わああああああ」
会場は、騒然としている。
4つのコーナーポストに、それぞれ参戦者。
フェンスで囲まれたオリ。
この中で、前代未聞の闘いが繰り広げられる予定だった。
僧侶。
霊媒師。
ボクサー。
詐欺師。
彼らの闘いが、始まる。
もともと、総合格闘技の前座だった。
話題作りの為に行われていた。
だが、想像以上に人気を呼び、単独でも開かれることになった。
今日が、その第一回目。
インチキ。
ヤラセ。
八百長。
結婚詐欺。
彼らは、こうした特技を用いて闘うのだ。
ここまで、嘘くさい試合、勝たなくてもいいような試合を、勝ち残ってきた強者たちである。
ルールは一つ。
相手に「負けた」と言わせた方が「勝ち」。
格闘技のように、本当に、殴る蹴るをやったら「失格」だ。
理由は、危ないから。
「試合開始」
レフェリーが合図をする。
ゴングが鳴った。
凶器チェックはない。
凶器は、もう彼ら自身だといってもいい。
インチキ霊媒師と、結婚詐欺師が向かい合っている。
まず、この二人の闘いのようだ。
霊媒師は、美魔女である。年齢非公開。だが、まだまだ女の盛りではある。
結婚詐欺師は、超イケメンである。その道のプロである。
「凄い。きれいですね」
結婚詐欺師が、攻撃を始めている。
口説き落とし作戦である。
「うふふ」
美魔女は、まんざらでもなさそうだった。
「霊媒師さん、マジで東京一かわいい。こんなかわいい人、始めて見たよ。関東圏でも、滅多にいないくらいだ」
「東京一? その程度なの?」
「訂正。宇宙一かわいい」
結婚詐欺師が、臭いセリフで攻撃を続けている。
「あああ」
霊媒師は、もう陥落寸前である。
「ダメ。私の負け」
霊媒師は、あっさり負けを認めてしまった。
結婚詐欺師は、女性を落とすコツを知っている。
次の闘い。
「おい、コラ。どついたるねん」
八百長ボクサーが、凄む。
相手は、インチキ僧侶のようだ。
「ヤバいですよ。元プロボクサー」
僧侶が、攻撃を始める。
「なんや。やばいって」
「前世の霊が憑りついているのです。マジで。お祓いしましょう。アナタが弱小で、現役時代に勝てなかったのは、それが理由です」
「弱小だと」
「ええ」
「どついたるねん」
ボクサーは、相手を殴ってしまう。
僧侶も、キレる。
インチキ僧侶とボクサーの取っ組み合い。
そこに、詐欺師も加わる。
大乱闘である。
全員が失格となった。