東大の学費値上げについて思うこと

東京大学は、授業料の値上げを正式決定した。2025年度の新入生から、現行の2割増となる10万7,160円値上げし、年額64万2,960円となるようだ。

背景として、度重なる大学への交付金の削減と運営費の増大がある。

既に大学を通り過ぎ、変わり映えしない労働に身を置いている自分のXにもこの値上げに意見のある人々のポストが映った。特に妻子もなく、結婚する予定もない自分にとっては関係とも言える話題だ。自分はこの手のメリトクラシーと金の問題については思うところがある。

「東大」は最高学府であり、入学する学生は国内最高峰の学力を持っていることを証明してくれる。その門戸は大学入試のテストによって全ての受験生に平等に開かれている、とされている。しかし、東大に通う学生の親の半数の世帯年収は950万円以上であり、調査時の世帯年収の平均値545.7万円を上回るとされている。これは殊更強調すべきでもなく、有名な話だろう。特に不思議もなく、自然でさえある。収入のある家庭が多く子供に教育費を注げるので、いい大学に行きやすい。それだけの単純な道理である。

東大に通っている平均的な層としては、年に10万円払うお金が増えたところで特に騒ぐことはないように思える。年に10万円多く払っても、東大卒の資格の方が遥かに有益ですぐにペイできることがわかっているからだ。さらに、今回の値上げと同時に世帯収入600万円以下の学生は学費が無償化される。今まで400万円以下だったもの引き上げられる形であり、「家庭が貧しくいから東大にいけない」といった層も引き上げる形になっている。これを踏まえて、大学受験者や現東大生からのミクロな視点でみると、この値上げで困っている人間はあまりいないように見えるのだ。むしろ受験者の払える層からしたら、この10万円の値上げでゲームを降りてくれる人がいるなら嬉しいぐらいだろう。

一方、Xでよく見る意見として、親からの協力を得られないので自分で学費を払わなければならず、値上げされると苦しい、というのがある。そういった優秀層が東大に入れないのは国にとって喪失だという主張である。この手の層はそもそも大学に行くべきではないと思う。家庭の不和と家計の不安があり、10万円値上げされると苦しいレベルの人よりも、家が安定している人の方が勉強に集中してより成長してくれるのではないだろうかと思う。無論、国としてより優秀な人材を育てるという視点に立った場合であり、プレイヤーとしての視点は別である。

この構造が成り立っているのは、東大が資格として優秀だからだ。学歴社会の日本において、東大を出ることはその後の人生に大きくプラスに寄与する。そのためには学費が年10万上がった程度ではそれを諦める要因にはなり得ない。だからこそ、SAPIXがあり、中学受験があり、鉄録会がある。

いいなと思ったら応援しよう!