星新一マイベストフィフティ2024
⁂最初に明記しておきますが、この記事は個人が趣味で投稿したものであり、氏の名誉棄損や著作権侵害を目的とするものではありません。
削除要請等があり、その理由が納得に足るものであった場合、直ちに削除いたします。
前書き
さて。私が最も好きな作家は、星新一である。
氏は生涯にわたり1001編以上のショートショートを書き上げ、長編やエッセイ等も発表している大作家である。
この記事では、その中から50作品を選んであらすじと共に発表したいと思う。あくまでも自分が読んで面白いと感じたものであり、世間的な評価とは別物であることに注意(とはいえ、正直上位の作品に関してはかなり人並みなラインナップとなっているが……)
あらすじに関して。作品のオチとなる結末部分については省いて作成するよう注意しているが、そもそも氏のショートショートは文庫本で2~15ページ程のものがほとんどなので、あらすじの時点で一定量のネタバレは避けられない。
一切のネタバレを避けて作品一覧のみを見たい方は
では順位順に書いていく。
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以下ネタバレ注意
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50位~
50悪人と善良な市民
悪人が善良な市民の家に銃を持って現れる。
悪人は医者時代に患者として出会っていた善良な市民の体内にダイヤモンドを埋め込んでおり、彼を殺してその死体ごとダイヤモンドを回収しようとしていた。しかし、善良な市民は既にそのダイヤモンドを偶然体外に摘出し換金し、その金も使い果たしてしまったと言う。諦め、帰ろうとする悪人と善良な市民の間にもうひと悶着。
49コビト
見世物小屋などで働かされていた「コビト」という種族にも人権を!という活動家たちの声を受け、国会で決議事項としてコビトにも選挙権が認められた。すると、コビトたちは……。
クルド人問題、在日特権などをどうしても想起してしまった。まぁ、作品に現実のややこしい問題を絡めるべきではないのだろうが。これに限らず、未来の現実を予見している作品は多い。
48レジャークラブ
レジャークラブの勧誘員がやってきた。詩、ヨット射撃、びっくりクラブ、植物採集、切手収集、料理評論家など色々なレジャークラブを勧めてくるが、エヌ氏は自分に合ったクラブがないようで、どれにも気が進まない。
にべもなく全て断っていると、勧誘員は泣き出してしまう。その光景にエヌ氏は嗜虐心をくすぐられるが、最後に勧められたクラブには加入せざるを得ない……。
47宇宙の男たち
宇宙の男たちを乗せた宇宙船が、隕石と衝突してしまい操縦不能に。
数十年ぶりの地球への帰還の夢が断たれた老人と職務中に事故に遭った宇宙船操縦士の青年は、それでもいつものように冗談を飛ばしあい、地球の方向に遺書と貯金の全てを乗せたロケットを発射、そして一縷の望みに賭け冬眠剤を飲んで眠る。互いに船員として以上のえもいわれぬ感情を覚えながら……。
46新発明のマクラ
エフ博士が開発した、新発明のマクラ。なんと、眠っている間に英語を学習できるという代物である。
英語を話せぬ隣の家の主人に貸して効果を確かめてみることにしたが、しばらく経って、何の実感も得られませんでしたと言い、主人がマクラを返しに来た。故障していないのになぜと不思議がるエフ博士。しかし、やはりマクラはしっかり効果を発揮していたのだった。
45デラックスな金庫
主人公がほぼ全財産をつぎ込んで完成させた、デラックスな金庫。金庫などに財産を使うなんて馬鹿馬鹿しいと言われることもあるが、主人公は満足していた。私の趣味はこれなのだ。
ある夜、家に忍び込んだ強盗にナイフを突きつけられ、主人公は金庫のダイヤル番号を教えてしまった。馬鹿馬鹿しい?何を言うか。「どうだ、実益だってちゃんと、ともなっているではないか。」
44九官鳥作戦
山奥で一人暮らしのある男。彼は大量の九官鳥を飼っており、厳しくしつけていた。目的は、宝石店からダイヤモンドを盗み出すこと。それを九官鳥にさせようというのだ。そのためにあらゆる情報、人付き合いの遮断された山奥に潜伏していた。
新聞もとらず、電気も来ない小屋で長年企てた作戦。そして、無事九官鳥作戦は成功し男は大量のダイヤモンドを手にした。が……。
43親善キッス
地球からチル星に辿り着いた親善使節団。キスをすることが地球式のあいさつだという嘘を信じさせ、団員たちはチル星人と親善キッスを行ってゆく。
親愛の情を示すものと説明した手前、男や老人からのキスを拒むことができないのが玉に瑕だったが、若い美人ともキスできて役得と喜ぶ一行だったが、歓迎パーティーが始まり、そして最後の一文で全てがひっくり返る……。
42盗賊会社
盗賊会社、れっきとした株式会社である。しかし、皆さんが想像するような会社ではないでしょう。好き放題暴れまわれるわけではなく、むしろ逆で……。
社員は地味な服装で定時に出社し、平凡であれ。夜遊びもダメ。仕事も安全第一に、大物は決して狙わず、堅実に一つ一つこなしていく。一つのバッグのスリを数十人体制で行い、大儲けもないが赤字でもない、実につまらぬ……。
41冬の蝶
未来世界、登場人物は一組の若い夫婦と彼らのペットである猿のモン。
厳しい寒さに包まれる季節に大停電が起き、いつもなら床から噴霧される香水も、配達パイプですぐ手に入る服も、ボタンを押すと注がれるコーヒーも、道路から供給される電気で動く車も、全てが停止した街。薄暗く白み、しとしとと雪が降り積もる中で舞う冬の蝶のような幻想的な光景が目に浮かぶ作品。
40位~
40流行の病気
年中、何かの病気の予防薬を飲んでいる。政府が流行の病気を作り出し、ウイルスをばらまいて予防薬を買わせ、景気を動かしているのではないか。そう考えた男は予防薬を飲まず、そして病気に感染してしまった。政府直属の病院に運ばれ、予防薬の真実を語られる……。
反ワクチン、マイクロチップ、人工地震……色々と考えさせられるこの作品は50年以上前に発表されたもの。
39妖精配給会社
妖精。人語を解し、聞きざわりのよい言葉で人々を癒してくれる存在。傍にいて、全て肯定し励ましてくれる存在。人々はそんな妖精を求め、常に横に置いて生活するようになった。
主人公の妖精配給会社の老人は妖精に懐疑的だが、彼の息子は親よりも妖精を信じる。息子のみならず、誰もが。「たとえ妖精が出現しなかったとしても、どうせ、これに似た世の中になって行くのだ。」
38紙の城
江戸城の書物方である平十郎。出世の望みもクビの恐れもない仕事に飽き飽きしていた。
ある日、字の上手いことを見込まれて掛け軸に一休和尚に似せた字を書いたところ、本物と思われて大金で買っていかれたということがあった。似せ文字を書くことを副業にし、その特技でもって「紙の城」で力を持つ平十郎。危ない橋を渡りながらやりがいがある日々を生き生きと暮らす。
37火星航路
火星行のロケットに乗り合わせた男女のお遊びが織りなす物語。
西明夫と中山景子は、あと半年間に及ぶ退屈な火星航路をやり過ごす暇つぶしとして、ラブレターのやり取りをしてみることを思いつき、やってみることにした。互いに恋愛感情がないからこそ面白かった。しかしどうだろう、実は相手は自分のことが好きなのではないか?と思う両名……。珍しいテイストでいい。
36ボッコちゃん
バーのマスターが道楽で作った人造美人、ボッコちゃん。簡単な受け答えしかできなかったが、バーのカウンターに座らせると人気がでて客足が増えた。ボッコちゃんが飲んだ酒はマスターがプラスチック管から回収し、再利用した。そういう意味でも店の売り上げに貢献してくれる。だが、ボッコちゃんに熱をあげる青年が現れて……。
知名度は一二を争う、氏の代表作の一つ。
35弱点
研究所で卵から生まれた宇宙生物。あまりにも見苦しい外見故、高官から所長に人目に触れさせず殺処分せよとの命令が下された。
しかしこの生物、炎を吹き付けても、放射線を浴びせても、真空状態にしても、絶対零度の気温でも、ハンマーで叩いても、あらゆる薬品を試みても、毒虫を食わせても死なず、脅威の繁殖力も併せ持つ。この醜悪極まる宇宙生物の唯一の弱点とは---。
34マイ国家
真井国三。マイホームを独立国家と主張する男の名である。
営業にやってきた銀行マンを捕まえてしまい、スパイ容疑、領土侵犯の罪で死刑にするというのだ。抵抗、弁解し、常識や正論で言い伏せようとする銀行マンだが、逆に真井の変に理屈が通っている気がするようなマイ国家論に吞まれてしまう。曰く、領土・国民・主権の国家の三要素は揃っている……。運命や如何に。
33藩医三代記
平山宗白・宗之助・宗太郎の藩医三代記。小さな藩で医者をやっている一族の物語である。
いくつかある普通のショートショートより分量が多く、時代小説的な側面もある作品の一つ。このタイプの作品は今回のマイベストフィフティに3作品入っており、第38位「紙の城」に続く2作品目である。ショートショート選であれば規定外になりそうな作品群だが、面白いものも多い。
32四で割って
賭け事が何より好きな四人の男たちがいた。
賭けといっても麻雀や競馬ではなく、「四で割ってどうなるか」ということを賭けの対象にしているのだ。彼らは全員一人暮らしだったので、毎日顔を合わせては賭け事に熱中していた。そして、遂に彼らは断食バクチを始める。誰が最後まで生きているか賭けるのだ。死んでからも、三途の川の上流はどの方角か、天国か地獄かで……。
31親しげな悪魔
青年は、にやにや笑う老人の姿で現れた悪魔に願いを叶えてもらう。
願いを決めかねて悩む青年に助言までしてくれる親しげな悪魔。健康で不老不死、普通の人の月収を毎日、月替わりの女性という三つの願いを叶えてもらった青年は、最高に満たされた生活を送っていた。しかし、ひょんなことからそのための代償を知ってしまう。悪魔にも質量保存の法則(?)が適用されるとは。
30位~
30ねむりウサギ
うさぎとかめの童話をアレンジした一作。
ウサギは、飲みの場で「うさぎとかめ」の話を持ち出されて亀以下とからかわれ激怒、偶然そのバーにいた初対面のカメに勝負を挑む。本家よろしくリードしていたものの途中で眠ってしまい敗北。というのが何度も続き、催眠術や滝行、二日酔い、地理的要因等々様々な角度から研究・対策してカメに挑み続けるねむりウサギ。
29地球から来た男
産業スパイをしていた男がある企業への潜入捜査中に捕まり、テレポーテーション装置で別の星に送ると言う企業科学者に麻酔をかけられ、意識を失う。起き上がると、そこは地球と何一つ変わらない環境だった。
そこの住人に地球から来た男だと名乗ると、相手はここは地球だという。家に帰ればいつもと変わらない様子の妻子もいた。しかし……。果たしてここは一体どこなのか?
28番号をどうぞ
ボートから落ち、財布や身分証の全てを無くしてしまった主人公。警察に行っても、銀行に行っても、病院に行っても、言われる言葉はお決まりの「番号をどうぞ」。
今の時代にも強く刺さる作品だと感じる。健康保険証や運転免許証をマイナンバーカードと一体化するという話も進んでいる。災害の多い国なので、いざという時のために現金も持っておきたいという教訓にもできる。
27鏡
男が、鏡や聖書等を使って悪魔を捕まえた。情けない顔つきで何もできない悪魔を夫妻はいじめた。
初めは耳をひねる程度だったが、どんどんエスカレートしていき、針で刺したりハンマーで頭部を砕いたりし、この虐待によってストレスをさっぱり解消できるので仕事もうまくいくようになっていった。だが、隙をみて悪魔は逃げ出し、怒った夫妻は……。リミッター壊れると怖い。
26箱
主人公は小さなころ、異国風の不思議な少年からある箱をもらった。人生で一度きり、どうしても困ったときに箱を開けるように言われる。
開けたいときは何度もあった。受験に失敗したとき、恋人と別れたとき、親が死んだとき。しかしその度まだ機会があるのではと思い直し、そしていつしか箱を開けまいという気持ちに変わっていった。しかし最後、病院のベッドの上で……。
25繁栄の花
平和に満ちたメール星から届けられた自慢の輸出品「繫栄の花」。盆栽の梅のようで、一年中咲き、季節によって色を変えるこの花を誰もが欲しがり、たちまち世界中に広まった。素晴らしいのは色ばかりでなく、香りも美しく、種子も大量にとれる。そして、枯れることがないのだ。たとえ、枯らそうとしたとしても……。
「わたしたちが”繫栄の花”と名づけた意味がおわかりでしょう」
24死体ばんざい
遺体を落としてしまった霊柩車の運転手、犯罪組織の下っ端、生命保険金を狙う男女、角膜移植のドナーを待つ医者、解剖実習の壇に立つ大学教授。彼らに共通するのは、死体を欲しているということ。「死体ばんざい」と叫んでしまうほどに……。一つの死体をめぐって各所で巻き起こるドタバタ劇、最後には。
「つまらん。~よりによって、いちばん平凡で退屈なやつをひきあてた」
23門のある家
順一は伯父から金を借りることに失敗し、とぼとぼと歩いているうちに、立派な門のある家の前で足を止めた。すると、塀の中にいる女に家に招き入れられる。何故だか順一はこの屋敷の当主・西真二郎として扱われた。そして、何故だかそれでいいように感じるのだ。
ある日義母が出かけ、数日後帰ってきたのは違う人だった。嫁も出かける。「しかし、別人だからどうだというのだ。」
22影絵
青年は、老人を迎え入れた。彼らの共通の趣味が影絵。老人の影絵を見ていると、いつの間にか老人はいなくなっており、代わって老人の息子が青年宅を訪れ、父が死亡したという。信じられない思いの青年のもとに、今度は老人の孫が現れ、父の死を知らせる。次に出会ったのは死んだはずの老人。
「~ではなかろうか。そんな気がした。影絵があとをとどめないように。」が印象的。
21肩の上の秘書
みながロボットのインコを持つ時代。セールスマンのゼーム氏がぼそぼそと喋ると、肩の上の秘書が丁寧な言葉に直してセールストークをしてくれる。相手の主婦の肩にももちろんインコがおり、ゼーム氏のインコの発言を要約して主婦に小声で伝え、また主婦の雑な返事を失礼のないように相手に話すのだ。
最近はChatGPTの話題などの際に例示されがち。便利だろうが…まぁ、便利だからいいか。
20位~
20シンデレラ王妃の幸福な人生
ご存じ、童話「シンデレラ」のアレンジ。
よく知る「ガラスの靴」や王子との結婚の後に待ちうけるシンデレラ王妃の幸福な人生の裏の努力(暗躍とも言う)の話。王妃となった後のシンデレラの表舞台に映らない陰の動きを見事に描いている。華々しく見える人も見えないところでは苦労しているものである。アイドルもトイレ行くし多分。知らんけど。こちらも最後の一文が名文。
19月の光
登場人物は三人。召使いの七十すぎの老人、「飼い主」の六十歳近い品のよい男、そして「ペット」の十五歳の混血の少女である。
50代の男が少女を「飼」っているという設定のみで嫌悪感を抱いてほしくはない。医者であり財産もある男は生まれたての赤ん坊をもらいうけ、言葉を一切使わず余りある愛情を与えて育てた。美しい情景描写で青白い月の光が見えるようである。
18殉教
死者と会話できる機械を作った男が、大衆の面前で自殺した。しかし、機械からはたった今出来上がったばかりの死体の声が聞こえるのである。
機械が本物と分かった人々は行列を作り、死者と話し、我先にと死んでいく。殉教という題名もいい。「人間というものは、なんのために生きているのだろう。この答えが出たのだった。つまり、死の恐怖だけで支えられていたらしい。」
17神
世界中の「神」を学習装置にインプットし、神を作ろうという社長と研究者。
しかし、完成した神は学習装置から飛び出し、彼らの手元を離れる。神とは縛られるものではないが故と説明する研究者に、社長は商売道具として神を利用するつもりだったと白状し、そうできない以上神などくそくらえだと絶叫。直後、社長は落雷で即死。研究者は震える。今や、神は実在するのだ。
16ひとつの装置
広場の中央に置かれたひとつの装置。はた目には必要性の分からない、真ん中にある出べそのような押しボタンを押されるとそれを元通りに引っ張り出す腕がついているだけの装置。
研究所の所長はこの意味の分からない装置を、予算ばかりか私財を投げうってまで作った。押されては戻し、押されては戻し、いつしかボタンが押されなくなったとき、装置は本来の機能を発揮した。
15あーん。あーん。
ある朝、言葉がわからないくらいの小さな男の子が泣き始めた。おかあさんがオモチャを与えると、男の子は泣き止む。しばらくするとまた泣き始め、隣の家から苦情。新しいオモチャで少しの時間泣き止むが、すぐに泣きだす。
泣き声はどんどん大きくなり、窓ガラスが割れ、建物にヒビが入りはじめる。「あーん。あーん。」比較的子供向けの作品だが、幼児期の親が読めば恐怖か。
14ピーターパンの島
科学的にありえないと証明された空想の世界と現実を区別できない子供が一定数いる。親や先生がいくら言い聞かせても分からない子たちは、「ピーターパンの島」に送られる。あれだけ否定されてきたピーターパンや海賊、妖精などがいる島に子供たちは喜ぶが……。
最後は大人たちの、不穏という言葉では足りない恐ろしい会話で物語は終わる。強烈なディストピアもので、印象に残った作品。
13終末の日
小さな平和なおだやかな町。しかし、今日が世の終わりなのだ。あしたからは、すべてが存在しなくなる。逆らえない運命なのだ。平和すぎたことが、神々のお気に召さなかったのかもしれない。町の住人たちや動物たちも今日が終末の日と知っているが、だからこそいつも通り平和に楽しく過ごそうとしていた。覆らない運命なのだから。
時間が迫る。あと何分、何秒だろうか……。
12おーい でてこーい
「おーい でてこーい」。大きな穴に若者が叫ぶ。
いつの間にか山外れの村にあったあまりにも深く底のない穴に、人々はいろいろなものを捨てた。原子炉のカス、政府の機密書類、実験動物の死体、浮浪者の死体、古い日記、かつての恋人ととった写真、にせ札、犯罪の証拠……。ある日、誰かの頭の上で何かが聞こえたような気がした。「世にも」でも放送された星新一の代表作。
11凍った時間
地下の部屋で孤独に生きる男、ムント。彼は放射線を浴び、脳以外の全身を機械に置き換えたサイボーグとして人目を気にして生きていた。
ある日、やむを得ず地上に出たムントの義眼に飛び込んできたのは、ばたばたとそこら中に倒れている人々。少数だがガスマスクのような物をつけて動いている集団に恐る恐る近づくムント。凍った時間が動き出したとき、ムントの行く末は。
TOP10!
10ある夜の物語
冬のある夜の物語。
平凡で恵まれない男の家を訪ねてきた者がいた。そう幸せでないのなら何か望みでもないのか、と訊かれた男は、色々と欲望のままに思い浮かんだことを検討してみるが、近くに病気のかわいそうな女の子が住んでいることを思い出し、自分の願いよりその子のもとに行ってあげてほしいと答える。来訪者は女の子に会いに行き、願い事を尋ねる……。
9生活維持省
生活維持省に勤める主人公は、生活維持のため今日も働く。ランダムで抽出された人間を殺すことで人口抑制し、国民一人一人に充分な土地面積を確保するというこの政策によって戦争や犯罪のない平和な世の中を実現・維持しているのだ。絶対に公平な生活維持省の計算機に選ばれたのは……。
「午後も、きみに運転させることになってしまったな」というオシャレな台詞が好き。
8最後の地球人
人口増加、自然破壊、生物一掃、寿命延長、人口減少、人類滅亡、そして……。
人類最後の二人は夫婦となり、女性は子を宿した。女性は出産後に死に、男性も悲しみから立ち直る前に絶えてしまった。残された最後の地球人は、電源がついたままだった保育器の中で育っていたが、周りが薄暗いことに気づき、そして言った……。旧約聖書の知識があるとより面白く読めるかも。
7暑さ
暑さは、人を狂わせる。
交番の巡査のところに男がやってきて、自分を逮捕してほしいというのだ。一年前、飼っていたサルを殺したという。聞けば、男は子供のころから暑さに耐えきれず、しかしアリをつぶすことでイライラが解消されたという。カナブン、犬、サル……小さなものでは解消できなくなり遂に去年、サルを殺してしまったのだ。ラストの巡査と男の問答で鳥肌。
6ブランコの向こうで
今回のマイベストフィフティで唯一の長編。
主人公の男の子が色々な人の夢の中に入る物語。女性から大量の料理をふるまわれたり、王子となって象に乗ったり、皇帝の夢……。だれも知らない夢の国で主人公が旅をする。夢の世界と現実の世界は反対になっていることが多い、ブランコの向こうで見る景色のように……。もう軽く5年以上は読んでいないので、強く再読したい作品。
5そして、だれも……
アガサ・クリスティ「そして誰もいなくなった」のアレンジ。
完全な密室であるともいえる宇宙船、その隊員たちに降りかかる悪夢。ある時、隊長が忽然と姿を消した。宇宙船の外に出た痕跡はなく、死体が見つかるわけでもない。まさに「消えた」としか形容できないのだ。残りの四人がそれぞれ分かれて船内を探しているうちに一人また一人と消えていき、そして、だれも……。
4午後の恐竜
男は息子のはしゃぎ声で目を覚ます。街中を恐竜が闊歩しているとは、どういうことだ。おれが起きる前は、三葉虫やアンモナイトなんかが空中を泳いでいたらしい。時間経過とともに、午後の恐竜たちはマンモスや原始人に変わる。
同時並行で描かれるのは、軍の司令部の状況。強い緊張状態にあり、いつ敵国と開戦になってもおかしくないようだ。この生物たちの正体は……?
3元禄お犬さわぎ
生類憐みの令で混乱する世をしたたかに生き抜く四人の男たちの話。
江戸時代、5代将軍徳川綱吉が発した生類憐みの令によってみなが振り回される中、一部の頭が回る者たちはそれを利用することで出世や金儲けをすることに成功した。登場人物の四人もそうである。武士、商人、大工、住職それぞれの立場から見た江戸城周辺で繰り広げられる元禄お犬騒ぎの模様は痛快なもの。
2鍵
趣味も生きがいもない平凡な男が、とある鍵を手にした。男の人生は一変し、その鍵に合う鍵穴を見つけることを目標とする。鍵屋を訪れたり、勝手に色々な鍵穴に突っ込んでみたり、果てはこの鍵のために海外にも出かけた。
そして男は年を取り、自分の家の鍵穴を「鍵」に合う形に改造した。しかしその晩、絶対に開くはずのない鍵を開けて入ってくる者がいたのだった……。
1処刑
主人公は殺人罪で「処刑」となり、流刑地である赤い惑星へ送られた。銀の玉とともに……。
この玉が処刑用の機械である。ボタンを押すと水が出るが、爆発する可能性もある。しかし、ボタンを押す以外に水や食料を得る手段は存在しない。爆死の恐怖と戦いながら生きる主人公は、やがて気づく。同じじゃないか。何と?そう、「彼は目の前が、不意に輝きでみちたように思った。」
以下ネタバレなし
50作順位・収録本一覧
50.悪人と善良な市民(宇宙のあいさつ)
49.コビト(ひとにぎりの未来)
48.レジャークラブ(だれかさんの悪夢)
47.宇宙の男たち(宇宙のあいさつ)
46.新発明のマクラ(きまぐれロボット)
45.デラックスな金庫(ボッコちゃん)
44.九官鳥作戦(きまぐれロボット)
43.親善キッス(ボッコちゃん)
42.盗賊会社(盗賊会社)
41.冬の蝶(ボッコちゃん)
40.流行の病気(ひとにぎりの未来)
39.妖精配給会社(妖精配給会社)
38.紙の城(殿さまの日)
37.火星航路(天国からの道)
36.ボッコちゃん(ボッコちゃん)
35.弱点(ようこそ地球さん)
34.マイ国家(マイ国家)
33.藩医三代記(殿さまの日)
32.四で割って(おかしな先祖)
31.親しげな悪魔(おのぞみの結末)
30.ねむりウサギ(マイ国家)
29.地球から来た男(地球から来た男)
28.番号をどうぞ(ひとにぎりの未来)
27.鏡(ボッコちゃん)
26.箱(おせっかいな神々)
25.繫栄の花(宇宙のあいさつ)
24.死体ばんざい(なりそこない王子)
23.門のある家(ごたごた気流)
22.影絵(どんぐり民話館)
21.肩の上の秘書(ボッコちゃん)
20.シンデレラ王妃の幸福な人生(未来いそっぷ)
19.月の光(ボッコちゃん)
18.殉教(ようこそ地球さん)
17.神(ちぐはぐな部品)
16.ひとつの装置(妖精配給会社)
15.あーん。あーん。(きまぐれロボット)
14.ピーターパンの島(悪魔のいる天国)
13.終末の日(妖精配給会社)
12.おーい でてこーい(ボッコちゃん)
11.凍った時間(ちぐはぐな部品)
10.ある夜の物語(未来いそっぷ)
9.生活維持省(ボッコちゃん)
8.最後の地球人(ボッコちゃん)
7.暑さ(ボッコちゃん)
6.ブランコの向こうで(ブランコの向こうで)
5.そして、だれも…(なりそこない王子)
4.午後の恐竜(午後の恐竜)
3.元禄お犬さわぎ(殿さまの日)
2.鍵(妄想銀行)
1.処刑(ようこそ地球さん)
ボッコちゃん 11作
ようこそ地球さん 3作
殿さまの日 3作
妖精配給会社 3作
きまぐれロボット 3作
宇宙のあいさつ 3作
ひとにぎりの未来 3作
なりそこない王子 2作
未来いそっぷ 2作
ちぐはぐな部品 2作
マイ国家 2作
妄想銀行 1作
午後の恐竜 1作
ブランコの向こうで
悪魔のいる天国 1作
どんぐり民話館 1作
ごたごた気流 1作
おせっかいな神々 1作
地球から来た男 1作
おのぞみの結末 1作
おかしな先祖 1作
天国からの道 1作
盗賊会社 1作
だれかさんの悪夢 1作
では。コメントガチ大歓迎よろ。