【CLE】カル・クオントリルにインタビュー
読者の皆様、寒い中毎日お疲れ様です。わるものです。
今回は前回のバイビーに引き続き、カル・クオントリルのインタビューを要約して紹介しようと思います。
まずは簡単にクオントリルの紹介を。
クオントリルは1995年2月10日生まれ、オンタリオ州ポート・ホープ(トロントの近郊)出身の27歳です。ブルージェイズ等で主にリリーフ投手として通算841登板したポール・クオントリルの息子であることは知っている方も多いでしょう。
名門スタンフォード大学時代から有望な先発投手として注目を集めており、2016年ドラフトでパドレスから1位指名(全体8位)を受けて入団。マイナーの階層を順調に登り、2019年にMLBデビューを果たします。
MLB初年度は主に先発中心で103.0回/防御率5.16とまずまずの成績でしたが、大炎上する登板も目立ちました。平均94マイルのシンカー(本人はツーシームと呼ぶ)とスライダー/チェンジアップを組み合わせる投球スタイルは、先発としてはやや迫力不足で、翌20年からはリリーフ起用が中心となります。
同年8月末にマイク・クレベンジャーとのトレードで、ジョシュ・ネイラーやオースティン・ヘッジスと共にガーディアンズに移籍。移籍後も変わらずリリーフ起用でしたが、翌21年6月にチーム事情で先発復帰すると、116.0回/防御率2.41の好成績を収めてファンを驚嘆させました。スライダーからカッターへの変更が功を奏したそうです。
今季は開幕から1年間先発ローテを守り抜き、186.1回/防御率3.38という素晴らしい成績を収めて地区優勝に大きく貢献しました。
それではインタビューです。
カナダでは、有望なホッケー選手は15、16歳になると、プロと契約する必要は無くとも、地元を出て全国区の非常に高いレベルでプレーすることが求められます。高校の頃の自分は、どんどん背が高く、細い体型に成長していた一方、同世代のホッケー選手は俊敏かつ筋肉質に育っており、自分では太刀打ちできない選手が沢山いたのでホッケーの道は諦めることにしました。
ただ、才能には恵まれませんでしたが、実は今でもホッケーの方が野球より好きです笑 トロント・メープルリーフスの大ファンで、野球ファンの皆さんが野球選手のサイン収集を好むように、自分もチャンスがある度にホッケーの試合に足を運んでサインを集めています笑 今年はコール・シリンガーに会えましたし、ネイサン・マッキノンとミッチ・マーナーのサインをゲットしました。
間違いなく今後増えていく選択肢だと確信しています。10歳や11歳で1つのスポーツに特化するのは極端なやり方です。子供の時点で本当にそのスポーツが好きかどうかなんて分かりませんし、子供のうちからスポーツができない期間(オフシーズン)が生じるのもおかしな話です。
1つのスポーツに専念して1年中トレーニングに励むよりも、色んなスポーツでのチームメイトとの交流を経て、他人と上手く付き合う術を学んだり、リーダーシップを身に付けたりすることを大切にして欲しいですね。
カナダから素晴らしい野球選手が輩出されることは、驚くことでも目新しいことでも無いと思います。ラリー・ウォーカーやジェイソン・ベイといった偉大な選手達がカナダにおける野球の地位を確立し、その影響でジョーイ・ボットやジャスティン・モーノーといった第二波の選手達が誕生したと自分は考えています。
そして、第二波の選手達が時間とお金をカナダに大いに還元してくれたお陰で、15-17歳の選手を集めた代表チームの対外試合が可能になりました。自分も15歳の時にコロンビアで他国の代表チームと試合を行い、ジョーイ・ギャロ(現MIN)やアディソン・ラッセル(元CHC)と対戦して大きな衝撃を受け、成長できたことを覚えています。この時のカナダ代表メンバー、すなわち、マイク・ソロカ(現ATL)、ネイラー兄弟(現CLE)、マット・ブラッシュ(現SEA)といった選手達が今MLBで活躍しているわけです。
我々第三波の選手達は、第二波の選手達が自分達にしてくれたように、次の世代を支援して大きく育てようとしています。WBCでカナダが優勝候補として話題に登らない、U18W杯で銀メダルを獲得(※2012年の話)したら驚かれるといった状況は望ましくありません。カナダが強いことが当たり前になって欲しいし、実現可能だと思っています。もちろんアメリカやドミニカといった野球大国より選手の数は少ないですが、才能では負けていませんし、そういった選手達を集めてチームを作れば素晴らしい強さを発揮できますよ。
自分が16か17歳でネイラーが15歳の時からの付き合いで、彼がマーリンズに在籍していた1年間以外はずっと同じチームでプレーしていますね。
自分の方がネイラーより2歳歳上なので、先に代表チーム入りしましたが、その頃トロントで代表チームと代表外オールスターチームで試合をする機会があったんです。そこでアピールに成功した代表外の選手は、その後のドミニカ遠征に招待されるという、一種のショーケースのような試合でした。
自分がその試合で他の投手よりずっと切れ味鋭く、力強い投球を続けていたところ、ネイラーが現れたんです。当時はネイラーのことを全く知らなくて、特に怖い打者にも見えなかったんですが、いきなり打球速度が250マイルぐらいのライナーを打たれて、頭が吹き飛んだかと思いましたよ笑笑 その後試合が終わるなり代表チームのスカウトがネイラーの下に駆け付けて、代表入りが決まりました。だから自分はいつもネイラーに、俺があそこで甘い球を投げたお陰でお前のキャリアが始まったんだ、と言ってるんです笑笑
冗談はともかく、ネイラーは野球こそが、チームの勝利こそが全てだという情熱を持ち合わせています。彼はグラウンド上で観客のために自分を取り繕うことはしません。ありのままを曝け出し、試合に全身全霊で挑んでいます。1人のチームメイトとして、素晴らしいことだと思いますね。
あくまでも選手目線での話ですが、ここ10数年で野球界における統計学的解析は著しく発展してきました。その結果、今となっては全30球団がデータ解析に精通しているため、この分野で一歩抜け出し、大きなアドバンテージを得ることは以前に比べて格段に難しくなっています。
では今後はどういった分野で各球団の勝敗に差が生じるのでしょうか。それは非常に主観的な部分、すなわち人間性や仲間意識にあると自分は考えています。
MLBでは1シーズンあたり200から240日連続でチームとして行動するわけですから、ロッカールームでチームメイトと話す時間はとても長いです。もしこの時間が選手にとってプラスに働かなければ、試合中のパフォーマンスに悪影響を及ぼすと言わざるを得ません。
同様に、いくら最新のデータ分析を通じて、この選手はこれとこれをこなせばポテンシャルを100%発揮できる、と提示されたところで、ロッカールームの環境が悪かったり、コーチの指導が適当だったりすれば、85%程度の力しか発揮できないでしょう。
ガーディアンズはこういった人間性の部分に上手く取り組めていると思います。ガーディアンズの選手は、野球をしていない時でも一緒に過ごしたいと思える人しかいません。チームメイト全員についてこう思えるチームは、実の所、それほど多くないでしょう。チームメイトの人間性をWARのように勝利数で表すことはできませんが、大変重要なものであることは間違いありません。
自分はWARやxERAを殆ど見ないですが、もちろんそういった指標の価値を否定するつもりはありません。未来の出来事をある程度予測することができる便利なツールだと思っています。
しかし、実際にフィールド上で起きていることを無視してはいけません。防御率や勝敗、打率、打点といった指標は、選手の未来を予測する上ではあまり役に立ちませんが、そういった古典的な指標で結果を残した選手は間違いなく良い選手です。
例えば、FIPは同じだが実際に投げられたイニング数が120回/180回と大きく異なる2人の投手がいるとして、後者の投手は単にラッキーだったわけではなく、何かしら優れていた要因があるということです。先程も言った通り、その要因の1つに選手の人間性が挙げられると自分は考えています。
自分の投球指標が悪いことは十分知っていますが、実際の試合で勝って、指標が間違っていると証明し続けることは非常に楽しいですね。もちろんこの先指標が良くなるに越したことはないですが、指標がどうであれ自分は勝つための方法を模索しますし、実際見付けられると考えています。
チームも同じで、本当に強いチームは、指標以外に選手を評価できる方法を見失わないし、他のチームが試そうとしない部分に選手の価値を見出せると思いますよ。
まあ自分の偏見込みで色々言いましたが、要は145マイルの打球を何回打たれようが、FIPがいくら悪かろうが、点を取られず試合に勝てばそれで終わり、ってことですね笑笑(※実際にクオントリルはリーグ4位の15勝をマークしている)
今季自分が苦しめられたのは、空振り率の低さです。弱い当たりを量産できたことは良かったのですが、どうしても空振りが欲しい場面で空振りを奪えない光景が目立ちました。
しかし自分はもう27歳であり、新たな変化球を作り上げるには歳を取り過ぎているので、鋭い変化球で空振りを量産する選手を目指すつもりはありません。シーズン終了後に、カール・ウィリス投手コーチと最も実現可能性が高い目標を探しましたが、そこではカーブを投げるタイミングが話題に登りました。
今季終盤にかけ、カーブの球質は向上しましたが、歴が浅く(※試合で投げ始めたのは昨年から)、投げるべき場面が良くわからないのでランダムに投げていました(※今季の投球割合は4%)。この点において大いに改善の余地があり、長期的に成績が良化するポイントだと考えています。
今回も最後まで読んで頂き本当にありがとうございました。