【CLE】ガーディアンズの不振の原因を考える
読者の皆様、毎日お疲れ様です。わるものです。
昨季の地区優勝メンバーにFA補強を加え、ワールドシリーズ制覇を目指して万全のスタートを切ったはずのガーディアンズでしたが、今季はとにかく打てず守れずで、ここまで14勝17敗の低成績に沈んでいます。一応勝率5割付近と聞くとあまり悪い感じはしませんが、ナショナルズやロッキーズ、タイガースといった再建チームを相手にしながら、6シリーズ連続で負け越している深刻な状況です。
今回は不振の原因について考察しようと思います。
① 春先に弱い先発陣
まずは単純な話で、先発投手陣の仕上がりが十分ではありません。開幕直前にトリストン・マッケンジーが右肩の大円筋の損傷で離脱(復帰まで8週間)したのに引き続き、他の先発投手達は揃って球速の低下に苦しんでいます。
上図は、ビーバー&クオントリルの速球の球速推移(昨季)を示したものです。明らかに春先(3月、4月)の球速が低くなっています。原因については、ロックアウトによるスプリングトレーニング短縮の影響ではないかと昨年の時点では考察されていました。
今季も3月4月の平均球速は、ビーバーが91マイル、クオントリルが93マイルであり、昨年程ではないにせよ低出力状態が続いていました。本拠地クリーブランドが寒過ぎる(4月でも曇りの日は気温が1桁台)ことも影響しているのでしょうか。真相は本人達にしかわかりません。
いずれにせよ、クオントリルは直近の登板(現地5/1)で平均球速93.7マイルを記録しており、今後は通常の球速に復帰して調子が上向くことが予想されます。しかし、同じ問題に毎年苦しむわけにはいかないので、来季までに解決策を用意する必要があるでしょう。
② 柔軟性に欠ける打順
4月前半のガーディアンズは打線絶好調でしたが、思うように得点できない試合が散見されました。その原因の1つが開幕オーダーへの不必要な固執です。例として、現地4月8日に行われたマリナーズ戦のラインナップを見てみましょう。
前日までの成績は、ホセラミ(OPS.890)、ネイラー(OPS.930)、ヒメネス(OPS.884)、ストロー(OPS.900)が絶好調だった一方、ロサリオ(OPS.425)、ベル(OPS.388)、ゴンザレス(OPS.385)は不振に苦しんでいました。
そして打順を見ると、好調な選手と不調な選手が見事なまでにジグザグに並んでいることがわかります。何か隠れた意図があったのかもしれませんが、実際にはチャンスの度に不調な選手がストッパーとなり、相手先発マルコ・ゴンザレスから1得点しかできず敗戦しました。
昨季も、OPS5割台の不振に喘いでいたストローを6月中旬まで1番で起用し続けるなど、打順固定への不必要なこだわりが目に留まりました。ここでは打順に関する今後の懸念を2点紹介しておこうと思います。
まずは、左投手に対するネイラーの起用についてです。昨年、ネイラーは対左OPS.512(127打席)と全く左投手を打てず、プレーオフで敗退した大きな要因となっていました。一昨年もOPS.512(90打席)と低調な成績であり、ネイラーが左投手を打てないことはサンプル数十分な事実と言えるでしょう。今季に向けて、左投手が先発する試合では打順を下げる、あるいはプラトーン起用をする、といった解決策が予想されていました。
しかし実際には、今季も変わらずクリーンナップで起用され、OPS.285(25打席)と全く結果が出ていません。前述したマリナーズ戦では、当時絶不振だったベルを敬遠してまでネイラーに打席を回し、左投手で打ち取ってピンチを乗り切る策を実施される始末でした。
また、プラトーン要員として期待されていたプロスペクトのガブリエル・アリアスの出番は必然的に消滅し、キャンプから開幕にかけて好調だった打棒はベンチ漬けですっかり湿ってしまっています。
現地4月22日のマーリンズ戦からようやく打順が7番に下がりましたが、そもそも左投手に対してネイラーを起用する必要があるのか疑問が残るところです。
もう1点はアメッド・ロサリオの2番起用についてです。昨年の後半戦は1番クワン/2番ロサリオの瞬足コンビとして打順が固定され、不動のレギュラー選手として名を馳せました。
しかし、実際にロサリオの打撃成績を見てみると、昨年のwRC+は103であり、リーグ平均程度の打撃貢献に過ぎません。走塁に関しても、MLB屈指の脚力の持ち主ながら、BsRは1.5とやや優秀程度の値です。そして何より、GB%が52.5%(MLB全体4位)という極度のゴロヒッターであるため、全打席で全力疾走するプレースタイルにも関わらず、併殺打を19回も記録(MLB全体で10位)してしまっています。
もちろん、ショートを守りながらリーグ平均程度の打撃を維持できる選手は非常に貴重であり、チームに欠かせない戦力であることは間違いありません。しかし、上述した通り2番に置くメリットは非常に薄く、下位打線で起用するのが妥当な選択であると言えるでしょう。
強いチームは自然と打順が固定されますが、打順を固定したからといって強くなるわけではありません。ホセラミのような押しも押されぬ一流選手はともかく、その他の選手の起用にはもっと柔軟性を持たせて欲しいところです。
③ 不振に苦しむ中継ぎ陣
昨年はリーグ屈指の強力リリーフ陣を形成し、試合終盤に相手に付け入る隙を与えなかったガーディアンズですが、今年は隙だらけの状態になってしまっています。
まずは絶対的守護神のクラッセですが、今年は奪三振能力が極端に低下し、既に3度のセーブ失敗を記録(昨季は1年間で4度)。特にスライダーの質の悪化が顕著で、昨季42.7%を記録した空振り率は僅か21.3%にとどまっている状態です。原因は明白で、球速が昨季から2マイル弱低下しています。
上述の先発陣と似た症状ですが、昨季のクラッセは年間通じて球速が安定しており、なぜ今季になって発症したのか、原因は不明です。本人はインタビューで「健康状態に全く問題はなく、そのうち球速は上昇するはずだ」と述べています。
続いて、昨季は7回を担当していたカリンチャックです。今季は登板する度にHRを浴びる苦しい状態で、既にリリーフ投手でMLB最多の4敗を喫してしまっています(彼の場合は何度打たれても使い続ける側に問題があるようにも思いますが、、)。こちらも原因は明らかで、4シームの回転数が大幅に低下(昨季2349回転→今季2184回転)しています。
上図の通り、2021年に粘着物質の使用疑惑が浮上した後、カリンチャックの回転数と成績は一時的に大幅に悪化しました。今年はその当時の水準にまで状態が落ちているわけです。
今年のMLBに生じた大きな変化といえば、ピッチクロックの導入でしょう。これにより、カリンチャックは1球ごとに後頭部の髪の毛に右手を突っ込むルーティンを廃止しました。これらの事実をふまえると、、これ以上はやめておきます。
最後は昨年からピンチでの火消しを担当しているサンドリンです。今季は登板する度に打たれており、火消しには程遠い登板が続いています。サンドリンも原因はハッキリしており、球速低下&スライダーの球質悪化に苦戦中です。
まず、球速低下ですが、4シームが昨季の93.6マイルから91.9マイルに低下しています。クラッセ同様、健康状態に問題は無さそうなので、次第に上昇することを期待するしかないでしょう。
次に、スライダーについてですが、変化量が大幅に減少(縦37.9インチ/横12.7インチ→縦35.6インチ/横9.3インチ)しています。当然スライダーの横変化の減少はサイドハンド投手にとって致命的で、空振り率の低下(41.2%→26.2%)が顕著です。
上図のように制球の悪化も明白で、昨季はアウトローに面白いように決まっていたスライダーが、吸い込まれるように真ん中に集まってしまっています。今後も同じ調子が続けば、3Aでの再調整も視野に入ってくるでしょう。
④ まとめ
不振の分析ということで暗い話題が続いてしまいましたが、明るい材料もあります。以前の投稿で紹介したタナー・バイビーとローガン・アレンが昇格を果たし、先発ローテの座を獲得する活躍を披露してくれています。マイナーには更にギャビン・ウィリアムズが控えており、マッケンジー&シバイルの復帰も考えると、今後先発陣は強化されていく一方でしょう。
かたや打撃陣は、一応3Aにブライアン・ルキオが絶好調の状態で控えていますが、ロサリオを信じてやまない今の首脳陣がルキオ昇格に動く可能性はゼロに近いと言えます。したがって、今いる選手達が現状を打破するしかありません。
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今回の投稿も最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。