【CLE】ブレイク候補、ジョーイ・キャンティロに迫る
読者の皆様、毎日お疲れ様です。わるものです。
今回は、今季のブレイク候補であるジョーイ・キャンティロを紹介しようと思います。同じくブレイク候補であるタナー・バイビーの記事と合わせて読んで頂けると幸いです。
今回の投稿内容の出典は大半が以下の3本の記事です。その他の出典は本文中に注釈を付けてあります。
①プロ入りまで
1999年12月18日、ハワイのオアフ島で、建設業管理に携わる父ジョニーと、看護師の母ミシェルの元にジョーイ・キャンティロは誕生しました。ジョーイはニックネームであり、本名のジョセフは、父がジョー・ディマジオにちなんで名付けたそうです。
キャンティロ(Cantillo)という姓はイタリアのシチリア島に由来。父はアイルランドとシチリアの混血で元海軍将校、母はガイアナ(ブラジル北部に位置する国家)の出身者だそうです。話題を呼びそうな面白い経歴ですが、詳細は書かれていません。メジャー昇格後のインタビュー等で明らかになることを期待しておきましょう。
幼少期は父の影響で野球よりサッカーに力を入れていたそうですが、自分の能力に鑑み、高校では野球に専念することを決断。カイルア高校ではエース投手として、あるいは一塁手として活躍し、ハワイを訪れるプロスカウトの耳目を集める存在に成長します。
しかし、86マイル程度の速球&不安定な制球力というスペックは躊躇なく上位指名できるレベルではなく、当時のパドレスのスカウト、ジャスティン・ボーマンは彼をドラフト指名するかどうか悩んでいたそうです。2017年初春、ボーマンはドラフト前最後となるハワイ視察に向かい、キャンティロの登板をネット裏から見守りました。
初回、キャンティロはカーブを2球投じるも、いずれもボール球になります。するとキャンティロはその後一切変化球を使わず、速球だけを投げ続けて7回18奪三振111球完封というとんでもない投球を披露。圧巻のピッチングは今でもボーマンの心に刻まれているそうです。
当然アピールには十分であり、同年夏、キャンティロはパドレスからドラフト16巡目(5巡目相当の契約金が支払われた為、実質的には5巡目)指名を受けました。
当時のキャンティロは名門ケンタッキー大学への進学が内定しており、プロ入りするか否か頭を悩ませたそうです。しかし「自分の夢は大学野球のスターになることではなく、メジャーリーグでスターになることだ」と自分に言い聞かせ、プロ入りを決断しました。
② パドレス時代
プロ入り後、パドレスはキャンティロに投球メカニクス面の指導はあまりせず、アウトを積み重ねて結果を残すことに専念させます。自分が勝利するまで4時間卓球大会をやり続けたという高校時代のエピソードが示すように、極度の負けず嫌いであるキャンティロは見事期待に応え(チェンジアップを習得したらしい)、2019年にはA-/A+で防御率2.96の好投。MLBの公式プロスペクトランキングで、球団内10位の高評価を得るに至りました。
しかし、実戦での投球術は大いに身に付いた一方、球速は高校時代から殆ど成長しておらず、速球の平均球速は88マイル程度のまま。3AやMLBで通用しない可能性は高く、本人も一抹の不安を抱えていました。
ところが2020年、彼に大きな転機が訪れます。マイク・クレビンジャーの対価の1人として、ガーディアンズへのトレード移籍が決定したのです。
当時のキャンティロは、自分と契約してくれたパドレスで名を残すことしか頭に無く、トレードの一報を聞いて酷く混乱したそうです。しかし、今となっては「野球に限れば、自分の人生において最高の出来事だった」と振り返っています。
③ ガーディアンズ時代
キャンティロは自分と同じ左腕のクレイトン・カーショウを幼少期から敬愛しており、彼の投球フォームをある程度模倣していました。しかし、その影響でキャンティロのフォームは少しギクシャクしたところがあり、移籍後は、ピッチングコーディネーターのベン・ジョンソンとジョエル・マングラム、2A投手コーチのオーウェン・デューと共に、フォーム修正に取り組むことになります。彼は21年シーズン開幕前に腹斜筋を損傷し、シーズンをほぼ全休しましたが、怪我の巧妙と言うべきか、リハビリの時間を大いにフォーム修正に活用できたそうです。
フォーム修正は、マウンドから踏み出す速度を早くする(体幹をより速く、より効率的に動かす)ことがメインで行われました。矯正のために“コア・ベロシティ・ベルト”という野球ギアを用いたそうです。
製品の公式販売サイトによると、アメリカ野球界を中心に、日本球界でも急速に普及している器具で、昨年大ブレイクを果たしたディラン・シーズがブレイクした要因の1つであるとのことです。ベルトを装着した状態で投球や打撃を行うことで股関節の正しい使い方が身に付き、ベルトを外した後も効果が継続する仕組みになっています。
他には、身体の前方にロープを装着し、身体が動き出すより先に、ロープを思いっきり捕手側に引っ張るというトレーニングを行いました。身体を素早く前方に動かす動作を、身体に無意識レベルで染み込ませることが目的のトレーニングです。
その他も細かい修正を積み重ねて迎えた22年のキャンプ、トレーニングは見事実を結び、キャンティロはなんと自己最速となる97マイルを計測しました。
その後のシーズンでは、2Aで安定して91-95マイルを記録。更に、新たな変化球として身に付けたカッターが左打者相手に猛威を振るい、最終的に60.2回で防御率1.93/87奪三振という素晴らしい成績を収めました。
④ 今季の展望
覚醒を遂げたキャンティロですが、突然の球速上昇による負荷に身体が耐え切れず、7月末に肩の痛みを発症します。痛み自体は深刻なものではなく、復帰しようと思えばできたそうですが、既に実力を十分に示しており、急ぐ必要も無かったので残りのシーズンは全休することになりました。僅か60イニングの登板ながら、オフに40人枠入りを果たしたことが、実力を認められた何よりの証拠と言えるでしょう。
オフシーズンは、肩甲骨周りを鍛えて肩の耐久性を高めると共に、投球中に踏み出す足(右足)の踏ん張り方を工夫し、地面反力を多く得て更なる球速上昇に繋げる取り組みを行っているそうです。
今季の開幕は、3Aの先発ローテの一角という立場で迎えることが確定的です。しかし、MLB先発ローテの4番手以降は不確定な状況ですし、失礼な物言いになってしまいますが、キャンティロよりスペックの低い左腕のコナー・ピルキントンが昨季あっさりMLBデビューを果たした事実に鑑みると、キャンティロが今季MLB昇格を果たす可能性は十分あると言えます。
いずれにせよ、今季はまず怪我なくシーズン完走することを目標にして頑張って欲しいと思います👍
今回の記事も最後まで読んで頂き本当にありがとうございました。