くれよん

ダンス・ダンス・ダンスール二次創作

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最近の記事

【夏の終わりに中村先生と海に行く話】

※二次創作 ※中村先生夢(夢主の名前の登場なし) 「あっづーーーーい! もう9月なのですが!?」  窓を全開にして、途端吹きこんできた熱風に向かって叫ぶ。口の中まで湿った空気でぶわっといっぱいになる。 「そんでこの車は冷房の効き悪すぎなのですが!?」  次は右隣を向いて、風とロードノイズの音に負けないよう叫ぶ。実際のとこそんなに叫ばなくても聞こえることは承知しているので、ただの八つ当たりだ。 「すまん……毎年夏になると買いかえようかなと思ってはいるんだが……」 「別にいいよ

    • 【鳥山明と中村先生】

      ※二次創作 ※中村先生夢(夢主の名前の登場なし) 「…………」 「…………鳥山先生、亡くなっちゃったね」 「…………ん」 「やっぱり好きだった? 世代だもんね」 「……世代だけど、リアルタイムで作品に触れたことはなかったよ」 「そっか」 「ジャンプも読みたかったしドラクエもすげえやりたかったけど、できなかった」 「うん」 「でも、そんな俺でも知ってたんだよ」 「うん」 「悟空がどんなに強くてかっこいいか、ドラクエがどんなに面白いかは知ってて、友達から漏れ聞くたびに喉から手が

      • 【とある日の文芸部部室の話】

        ※二次創作 ※中村先生夢(夢主の名前の登場なし) ※【中村少年が嘘をつく話】番外編 「あ、今日は国語なんだ」  俺が学生かばんから取り出した教科書を見て、先輩がこころなしか嬉しそうに言った。 「古文ですね。明日授業で現代語訳あたりそうなんで、予習です」 「古文楽しいよねえ。漢文もだけど。何百年も昔の文章読んで『ああ~わかるわかる~~』って現代人の私が共感できるのって、なんでか毎回感動しちゃう。古典ってすごいよね」  うっとりした表情で遥かなる時空に思いを馳せているらしい先輩

        • 【流鶯が花の名前を知る話】

          ※二次創作 ※流鶯×都(流→都)  昼前に窓を開けると、ぬるんだ空気と一緒に花の香りが部屋に入ってきた。なんとなく、どこかで嗅いだことのある香りだと思った。窓から首を出して辺りを見回してみるが、その出どころは見当たらない。見当たらないが、どこかで花が咲いているのだ。  ロシアにもようやく、短い春がやってきた。  外出用の服に着替え、誘われるように寮を出る。  通りに出ると道路わきの街路樹がそれぞれに白や濃いピンクの花をつけていて、すっかり見慣れてしまった光景――幅の広い道

          【中村少年が嘘をつく話】

          ※二次創作 ※中村先生夢(夢主の名前の登場なし) ※ダンスール合同誌ボツ作品のため嘘がテーマ  先日所用で実家に泊まった際、かつて自室として使っていた部屋で、書棚に並んだ文庫本数冊がふと目に留まった。やや埃っぽいその輪郭のエッジを指でなぞりつつ表紙の半分を引き出し、今の住まいに持って帰ろうか逡巡して、やめた。 *  バレエを志す学生にはとにかく時間がない。昼間は当然学校があるし、終わればほとんど毎日レッスンがある。学校の課題もこなさねばならないが、コンクールや発表会前な

          【中村少年が嘘をつく話】

          【冬の中村先生小話詰め合わせ】

          ※二次創作 ※中村先生夢(夢?) ※会話劇のみ ・実家教室の発表会(くるみ割り人形、その他より抜粋)にドロッセルマイヤー役としてちょろっとゲスト出演した中村先生、帰宅中か帰宅後 「ねえすごいよかったんですけど……」 「よかった」 「でも言って……? ちゃんと言っといて? じゃないとあんなの心の準備が……」 「ええ……」 「いや無理でしょ。大丈夫なのあれ? 公然わいせつでしょっぴかれない?」 「存在が卑猥みたいに言うな」 「いや本当に! イモムシのときも言ったけど、周り子ども

          【冬の中村先生小話詰め合わせ】

          推し香水作りにいった話

           グランプリシリーズも一段落つき静かな週末なので、推し香水について忘れないうちに少し書いておかねばと久々にPCを開いた。でもいざ記録しようと思うと既にだいぶ忘れちゃってる。書きながら頑張って思い出します。 1.そうだ、推し香水を作ろう  香水は割と好きだけど推し香水には興味がなかった私。  しかし中村先生という推しができてから、「推し香水作りました!」系の記事やツイートが妙に目につくように。「ふうん……? まあ見るだけね……?」と思いながら軽く調べてみると様々な推し香水の

          推し香水作りにいった話

          【ある冬の明け方の話】

           ベッドが揺れる感覚でわずかに意識が浮上した。  薄く瞼を開くと、少しだけ白みはじめた部屋の壁と、目の前にあるごつごつとした輪郭だけが見てとれた。  首と枕の間の隙間に腕を差し込まれる。疲れちゃうからいいよ、と押し返して腕をお返ししたいのだが声は出ない。そのうちに首元がぽかぽかとしてきて、かろうじて三分の一ほど開いていた瞼が完全にくっついてしまう。  違うの、ほんとは起きられるの、いつもはちゃんと起きてるのひとりのときは、とよくわからない弁明を心のなかで繰り返しながらもからだ

          【ある冬の明け方の話】

          【海咲が玉緒を思い出しながら女抱く話】

          ・二次創作 ・NL:海咲×モブ女(海咲→玉緒) ・「深夜のこっそり落書き1発勝負」として8月に雑感に上げてたやつ ・性描写薄めのつもりですが一応R18  上半身の服を捲りあげると、豊かなバストを包んだ下着が目に入った。よく見るような図柄の、目の粗いラッセルレースがいかにも安っぽい。 「かいらしなあ」  そう微笑みかけると、目前の下着の持ち主はぱっと頬を染めた。  きっとファッションビルにでも入っている若い子向けの下着屋かどこかで、彼女なりに一生懸命選んだのだろう。カップ上辺

          【海咲が玉緒を思い出しながら女抱く話】

          【中村先生の部屋に観葉植物が増えていく小話】

          ※二次創作 ※中村先生夢 ※名前変換機能がないため夢主の名前は「ゴマミソ」さん固定  インターホンが鳴って玄関ドアを開けると、両手で大きな鉢植えを抱えた恋人が、「連れてきちゃった」と少しばつ悪そうに笑っていた。  彼女はよく、しなびた観葉植物を買う。それはスーパーの隅の花屋で、駅ビルの雑貨店で、野外イベントの露店で、はやっていない植物園の物販コーナーで。様々な場所で枯れかけて投げ売りされている鉢植えを見ると買って持ちかえる。彼女曰く、「つい放っておけなくて……」らしい。

          【中村先生の部屋に観葉植物が増えていく小話】

          【約30年前の綾子と千鶴と岩井先生の話】

          ※二次創作 ※notBL、not夢、ほんのりGL(千鶴←綾子) ※今後正史が出た場合削除予定  扉の向こうから、きゅきゅ、たん、だんっ、ぎゅ、とリノリウムがポワントとの摩擦で鳴る音が聞こえてくる。主な照明が落ちた後の暗い廊下で、私は扉の横の壁に背を預けてその音を聞いていた。ドア下の細い隙間から廊下へと部屋の明かりが差し込んでいる。 「おう、綾ちゃん。どうした」  廊下の向こうから聞こえた声に俯いていた顔を上げると、暗がりから岩井さんがぬっと姿を現した。その長い手足を持て余す

          【約30年前の綾子と千鶴と岩井先生の話】

          【ブランコとオルガが出会う話:SIDE O】

          ※二次創作 ※ブランコ×オルガのNL ※今後正史が出た場合削除予定 ※N面→O面の時系列  最初はいけすかない男だと思った。 「オルガ・クズネツォワよ」 「ニコラス・ブランコだ。よろしく」  優男風の見た目で口元には軽薄そうな笑みを浮かべているが、値踏みするような、あるいは睨みつけるような圧のある目が気になった。少し前にここのプリンシパルであるイタリア人女性と破局したのだと他のABT団員から聞いている。 「(絶賛女性不信期って感じかしらね……それは構わないけれどこっちにま

          【ブランコとオルガが出会う話:SIDE O】

          【ブランコとオルガが出会う話:SIDE N】

          ※二次創作 ※ブランコ×オルガのNL ※今後正史が出た場合削除予定 ※N面→O面の時系列  最初は気に食わない女だと思った。 「オルガ・クズネツォワよ」  優雅に差しだされた白い手を握り返す。 「ニコラス・ブランコだ。よろしく」  軽くハンドシェイクして離す。恐ろしく美しい女だ。笑顔の片鱗すら見えないその白面は、ひやりとした冷たささえ感じさせるほどだった。これから2人で舞台をつくっていこうという初めての顔合わせだというのに、この態度はどうしたことだ。 「(ったく、これだか

          【ブランコとオルガが出会う話:SIDE N】

          【中村少年が雨の日にピアノを弾く話】

          ※二次創作 ※中村先生夢 ※名前変換機能がないため夢主の名前は「ゴマミソ」さん固定 ※今回は「ゴマミソ」=苗字の設定  傘越しにふと上を見上げる。4階、角の音楽室。少しだけ開けた窓から、今日もピアノの小さな音が雨粒と一緒になって降ってくる。  気づいたのはいつごろだっただろうか。雨の降っている朝に登校すると、どこからかピアノの音が聞こえてくる。最初は「誰かがピアノ弾いてるな」くらいでさして気にも留めていなかったが、それが雨の日限定だということに気づいた日、私は初めて校舎を見

          【中村少年が雨の日にピアノを弾く話】

          【女子力カンスト彼女が中村先生に癒されたい話】

          ※二次創作 ※中村先生夢 ※名前変換機能がないため夢主の名前は「ゴマミソ」さん固定  沈黙をつい愛想笑いで埋めようとしてしまうのは私のよくない癖だ。 「すみません、この資料のこれってどうなってるか教えてもらってもいいですか?」 「あーわかった。ちょっと待って」 「はい」 「あーこれ間違ってんじゃん、なんだよあいつ」 「ふふふ」 「ごめん、ちょっとまた確認しとくわ」 「わかりました、お願いします」  にっこり。今日も角を立てないよう、同僚のミスを内々にカバーする。のちのち被害

          【女子力カンスト彼女が中村先生に癒されたい話】

          【中村先生とある女子生徒の話】

          ※二次創作、ただしオリキャラメイン ※notBL、not夢 ※摂食障害表現あり  便器に吐き出したものの量を確認して『流す』のボタンを押す。  よかった。全部出せている。  そもそもそれほどの量を食べなかったので、吐き戻すのも楽ちんだ。うっかり食べ過ぎたり消化の良くないものを食べると後がきついと学習してから、食べる量もより減らすことができた。その僅かな内容物であっても、全部出すと得られる達成感、満足感。消化吸収される前の、固形の状態を見ると安心する。  個室から出て誰もいな

          【中村先生とある女子生徒の話】