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課題曲と審査のおはなし(リーズ国際ピアノコンクール2024)[2]
リーズ国際ピアノコンクールの歴史
1963年に創設されたリーズ国際ピアノコンクールは、これまでの優勝者にルプーさんやペライアさん、ドミトリ・アレクセーエフさんやミシェル・ダルベルトさん、ウラディーミル・オフチニコフさん、日本人では内田光子さんや小川典子さんが過去に上位入賞しているという、伝統のある重要なコンクールです。(オフチニコフさんは牛田くんの先生ですね)
にもかかわらず、一時期は資金面での困難も続いていたようで、2018年に体制の大改革が行われました。
審査員の顔ぶれも一新、現役演奏家を中心に若年化がはかられ、再スタートを切ったという経緯があります。
改革以後の優勝者は、エリック・ルー(2018年)、アリム・ベイセムバイェフさん(2021年)。日本人では、北村朋幹さん、小林海都さんが入賞しています。今回は新体制となって3回目のコンクールとなります。
前回の記事でふれたジェンダーバイアスへの試みも、こうした、「コンクールそのもののあり方を考え新しくしていこう」というマインドから生まれた発想なのかもしれません。
今回のリーズ国際ピアノコンクールにご参加のみなさん
そんなリーズ国際ピアノコンクール、4月のうちにすでに1次予選が「インターナショナル1次予選」という形で世界の数ヵ所で行われ、これに通過した24名のピアニストが、これから始まる2次予選に出場します。
コンテスタントには、前回のショパコン挑戦組をはじめ、あちこちのコンクールでお見かけしているピアニストがちらほら。
日本からは、牛田智大さん、丸山凪乃さんという、個性のしっかりしたとても優れたピアニストたちが出場するので、すごく楽しみです。
みなさんも期待していることでしょう。
期待なんてしちゃいけないと思っても期待しますよね。
ちなみに先週の牛田さんのオペラシティの公演のあと、期待してる感出すと嫌われちゃうから気をつけないとと思って、おそるおそるご挨拶したのですが…でも実際のところ牛田さんはもはや朗らかというか、結構ドンと構えていて、ここまでのコンクールのお話もいろいろしてくれるし(マナージャーさんたちが一緒にいたのもあるけど)、いやー、やばいですよーという言葉にも心のゆとりがみられました。
もう昔の牛田くんじゃないんだな、いろいろ乗り越えて精神大きくなったんだなと思いましたね。いや、昔もこちらが勝手に気を使ってただけなのかもしれないですが。
今回のコンクールにも、その他にもまだ自分が知らないだけの素敵な才能との出会いがいっぱいあるのでしょう。
みんなのびのびと、ご自分の音楽をリーズと世界の聴衆に届けてほしい。
というわけで、この後の日程と課題曲の内容をざっくりとご紹介します。
日程と課題曲の大まかな内容はこちら!
2次予選 2024年9月11日(水)〜13日(金) 【24名】
ソロリサイタル 40分の対照的(contrasting)なプログラムを2つ用意し、選択された一つを演奏する。
どちらにも少なくとも一人メジャーな作曲家の作品を入れる。
セミファイナル 2024年9月15日(日)〜17日(火) 【10名】
ソロと室内楽による75分以内のプログラムを、 の規定にそってプログラムAとBの二つ用意する。
Aにはグループ1(ピアノ三重奏、四重奏、五重奏)から、 Bにはグループ2(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ)から選んだ楽曲を入れる。
セミファイナリストの発表とともに、審査員が選んだプログラムが指定される。 ソロにはリストにある20、21世紀の作品を選ぶこと。
ファイナル 2024年9月20日(金)〜21日(土) 【5名】
コンチェルト グループ1、グループ2から各1曲ずつのコンチェルトを選択 審査員がそのうち1曲を選び、ファイナリストの発表の際に指定する 共演はドミンゴ・インドヤン指揮、ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団
課題曲、興味深いですね
セミファイナルの現代作品や室内楽の選択リストには、女性作曲家が含まれていて、どうやら事務局がなんとなく女性作曲家を弾いてほしそうにしているとのうわさ。
脱ジェンダーバイアス!
それとファイナルの課題のこと。
ファイナルの前にまた詳しく紹介しますが、どうしても気になることがありまして。 グループ1がバッハ、ベートーヴェンの1、3、4番、メンデルスゾーン、モーツァルト、 グループ2はラヴェル、シューマン夫妻からバルトーク、プロコフィエフ、ラフマニノフまでっていう指定でして、どっちのグループが選ばれるかで差がありすぎでないんか?っていう、多分、全員が心配する設定になっています。
審査員がランダムに選ぶのか、それともその人の良さが引き出されそうなほうを選んでくれるのか??? ランダムだったらかなり運に左右されますよね。逆に合いそうなほうを選んでくれるってなると、かなり「センスにおまかせするわよ」感があってこわいですが。
どこまでわかってくれるのかもあやしいし、むしろ不公平になるか。
この「2つ用意して1つ選択方式」の課題曲設定のコンクールって時々ありますけど、弾けるか弾けないかわからない作品を完璧に磨いていくのって、けっこう精神的に難しいだろうなといつも思います。
もともとものすごくたくさんレパートリーがあるベテランならまだしも。
ただリーズの場合、聞くところによると、そのかわり入賞して入賞者ツアーが組まれた暁には両方のプログラムを披露する機会がおとずれる予定、らしいです。