珠玉の言葉
今日はキャスター・安藤優子さんのスペシャルトークでした。社会人を対象とした上智大学の特別講座「プロフェッショナル・スタディーズ」の人気イベントです。テーマは「報道現場で女性が働くということ」。こういう会で司会進行役をできるなんて、ラッキーです。珠玉のような言葉をたくさんいただきました。
〈学ぶということは、自分がものを知らないことを知ること〉
1980年代からアウトプットし続けるうちに、全身が「カラカラ」になったと感じたそうです。そこで飛び込んだのが、母校・上智大学の大学院。12年がかりで博士論文を書き終えたとふりかえっていました。世界中を飛び回りながらの論文執筆は大変だったでしょう。それでも、そんな自分を俯瞰する余裕がある。学びの基礎体力があったのでしょうね。
〈プラスチックの黄色い菊〉
テレビ朝日のアシスタントとしてスタートを切ったそうです。その頃の自分を外国人記者たちに説明したものの、誰1人として「アシスタント」の意味がわからなかったとか。そこでこう説明したのです。「スーパーで売られている刺身のパック。そのつまに添えられた、プラスチックの黄色い菊が、アシスタント」だと。全員が理解しました。「君はそこにいただけなんだね」。メーンの男性司会者の横で、ただ頷き、時折笑顔を見せていればよかったのだそうです。
〈女性であることを封印する〉
そういう自分が嫌で、男性と同化する作戦に出ました。紛争地帯であろうが、事故現場であろうが、誰よりも先に現場に飛び込む。その結果、自分の身を守りきれず、同行するカメラマンの命まで危険に晒してしまい、同化作戦には多大な問題があることに気づいたそうです。
〈感情の蛇口を締める〉
今回のスペシャルトークは、珍しく女性の参加者が大半を占めました。講演が終わるやいなや、参加者から次々に質問があがります。「女の子扱い」「セクハラ発言をやり過ごさなくてはいけない」…。そのうちの一つが「女性としてキャリアを築く上で大事にしてきたことは何か」でした。それに対する安藤さんの答えは「自分の気持ちをフラットに保つこと」。そのために、仕事の時には感情の蛇口を締めていたのだそうです。
〈人の話をちゃんと聞く〉
その姿勢は、政財界のトップにだけ発揮されたのではありません。ザイールの難民キャンプで暮らす子どもや、南アフリカの白人学校にたった1人で入学した女子生徒にも隔てなく向き合ってきたことが、言葉の端々に現れていました。
潔さの漂う、姿勢の良い方でした。(マツミナ)