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学びから逃げようとする学生

 「質問力を磨く(Class Q)」で心掛けてきたのは、環境づくりです。授業に熱心に取り組むことを「恥ずかしい」と感じない。真剣に学ぶ仲間を「意識高い系」とからかわない。文字にしてみたら、ちっとも変なことでもないのに、こういう空気をClass Qで醸成するのに結構な時間がかかりました。新聞記者をしながら授業をしていた頃は、「新聞を持って歩くのが恥ずかしい」という学生がいたものです。
 環境が整えば、学生たちはみんな真剣に学びに取り組むかというと、そんなことはありません。残念ながら。ともすれば、口実をもうけて逃げようとする学生が出てきます。
 ClassQでは毎週、図書館の司書さんに課題図書を紹介してもらっています。その週に取り組んだ記事に関連する小説です。例えば先週は「天安門事件遺族 謝罪求める声明」(6月2日付読売新聞朝刊)を教材にしました。1989年6月4日の事件から32年。学生が生まれる前の話で、高校までの授業でも扱われていないかもしれません。
 今回、司書さんが紹介したのは「時が滲む朝」(楊逸著)。民主化運動に身を投じた学生たちの青春とその後を描いた作品で、中国人作家が初めて芥川賞に輝いたことでも注目を集めました。
 学生はやはり「天安門事件って何?」 その事件を扱った小説ですから、表情も冷めています。こんなことをリフレクションシートに書いてくる学生がいました。
 「今日、紹介してくれた本はフィクションだということです。読むべきなのはノンフィクションではないでしょうか。フィクションを読む必要がありますか」
 
 新聞は「100取材して99捨てる」ことでできているメディアです。限られた紙面に載るのは1しかない。残りの99を肉付けするには、知識と想像力が必要です。そこで司書さんには小説を紹介してもらっています。そのことは学生にも、繰り返し伝えています。でも伝わっていないようです。
 こうした「逃げ」の姿勢は、チームワークにも影響してきます。熱心な学生たちは逃げる学生との「温度差」を怒りとともに口にします。当然、雰囲気も悪くなります。
 
 空気を醸成するだけでは、学生一人一人の学びの意識までを変えることは難しいようです。どうしたものでしょうかね。(マツミナ) 

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