服作り日記-2-【トアルの完成】
休みの予定がなかなか定まらず、ようやく3回目の打ち合わせにありつけた9月15日。
久しぶりの平日休みということもあり溜めてた洗濯物をシバいて優雅に朝食を頂いてから家を出た。(オシャレな喫茶店でセロニアス・モンクをBGMにして今書いているため優雅なんて言葉を使いたくなったのです)
こっからが本題。
前回の打ち合わせで形を決めて採寸を済ませた。
それからデザイナーとパタンナーの御二方が要望を採り入れながらトアルというものを作ってくれたらしい。
トアルってなんや!って前回疑問に思ったので一応ネットの情報を仕入れてから行った。
簡単に言うと実際の生地では無く、安い白無地の生地にデザインを書いてとりあえず形作ったもの、らしい。
そのトアルが出来たから3回目の打ち合わせに呼ばれたという訳だ。
いつものように千駄ヶ谷で降り、敢えて遠回りして国立競技場の前を通って店に向かう。そうするのは自分が建築の世界に身を置いているからだと思う。なんだかパワー貰えた。気がする。
お店につき、デザイナーさんに挨拶。とりあえず着てる服を聞かれ褒められる。幸せ。今季のテーマ【衣装的な服】を見事にスタイリングにいかせた日だったので尚更幸せ。
店の奥の方に行くと、ネットで見た白いアレが置いてある。思わず「本物やん」と口に出てしまった。俺の好みを伝えまくった頭の中の服がトアルになっている。心躍るとはまさにこのこと!!興奮が収まらない。なんなら多分勃ってた。
ジャケットは3つボタン!ラペルは大きめ!丈長めの身幅細め!パンツは細め!ちょいフレア気味!センタープレスとタックも入ってる!こうも完璧なものを作れるのかプロは。頭の中から飛び出して来たみたいだ。目はキラキラしてたと思うし気持ち悪いくらいにニヤケてたと思う。落ち着けなかった。
試着室に入りお気に入りの服からお気に入りになるであろう服に着替える。さすがフルオーダー、サイズが完璧すぎる。絶対に一回り以上年上のデザイナーさんに向かって、やばいっすね!って言ってしまった。笑われた。
ただの服好きで服作りの素人でも形になってしまえばこっちのもん。これはこのままでいい、ここもう少し変えて欲しい。どんどん意見が出る。そう言いつつも、ほとんど完璧に近いこのトアル。変更点伝えるよりも褒め言葉が出過ぎてしまう。とにかくパンツの形が綺麗で、足が長すぎる。本当に俺の足ですかこれって言いたくなった。あえて言わなかったけど、、。
着てみて一つだけ違和感があった。ジャケットの袖がなんか太く感じる。ボディは細身パンツも細身でシュッとしてる感じだが袖だけ膨らんで見えた。「なんか膨らんで見えるんですけど、もう少し細くできないですか?」今回唯一の要望だった。デザイナーさん曰く、メンズの服の形(袖が前を向いているイメージ)だと、どうしても前から見て肘あたりが膨らんでしまうらしい。それでデザイナーさんは、レディースの形にしてみる?と一言。その場で少しだけ形付ける。細く見える、シュッとした。これだ。メンズからレディースの形、袖の余裕を気持ち削る。こうやって袖だけ少し変更をお願いした。
3回目の打ち合わせが終わった。
もう次は仕上がりを受け取るのみ。
帰る前に世間話をしていると中からもう1人大人の人がでてきた。KUONのオーナーさんらしい。こんな20歳手前のガキがブランドのオーナー、デザイナー、パタンナー、スタッフの4人の大人に囲まれて楽しそうに話してていいのだろうか。こんなガキのためにでも本気で服を作ってくれる大人達。素敵すぎる。KUONにまたひとつハマった瞬間だった思う。"こんな俺が幸せじゃないとか言ったらバチが当たるよな"頭の中で石垣吉道が歌っていた。
とにかく服が好きで始めたこの服作り。
印堀江店の兄さんがKUONに出会わせてくらて、印渋谷店の強面髭面のバイヤーさんのひと押しがなければこうはなってなかっただろう。大好きな服が結んでくれた素敵な縁がまた新しい素敵な縁を生む。
心の底から服を愛していてよかったと思う。
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