大和の鶴(屯鶴峯)
【記録◆2024年12月18日】③
市街地の横に、奈良市は原始林が残っていて、香芝市には火山活動の跡が残っています。
火山活動の跡は、多くの鶴が屯(たむろ)しているように見えることから『屯鶴峯(どんづるぼう)』と名づけられました。
「すぐ横が大阪府」とはおもえない風景が広がっています。
いえ、それどころか、「奈良県にいる」とおもえません。
『死者の書』という幻想小説の舞台になった「二上山」は静かです。
百伝(ももづた)ふ 磐余の池に鳴く鴨を 今日のみ見てや 雲隠りなむ
[百に伝う磐余(いわれ)の池に鳴く鴨を見るのも今日を限りとして、私は雲の彼方に去るのだろうか]と最期に詠んだ皇子の墓所はその頂。
うつそみの 人なる我や 明日よりは 二上山を 弟背(いろせ)と我が見む
[この世の人である私は、明日からは二上山を弟とおもって見るのか]と、姉の皇女が詠んだように、静かな眼差しを向ける所でもありました。
しかし、1500万年前にそこは、火砕流や火山灰を噴き出していたのです。
それらが堆積して、いま、『屯鶴峯』の奇岩群となっているのでした。
市街地も見えます。
ここからは、すぐに県道まで戻れます。「ここまでにしよう」とおもって下りてきたけれど、「もう少しだけ」と考え直しました。
再び来ることがかなわないとしても、ここからなら、まだ進めるので。
岩は滑りにくいけれど、乾いた落ち葉は慎重に踏まなくてはなりません。
岩を迂回するとき、道の端も見えづらいから、杖先で探って確かめます。
登ってくるときに見た岩は、横から見ると、まったく違う姿でした。