冬の瀧Ⅱ(徒歩23分)
【記録◆2024年2月14日】②
杖を使いはじめた頃は、1本の杖で脚の痛みが軽くなって驚きました。
でも、杖を突く腕や肩が慣れるまで痛み、泣きたいほどでした。
人間の腕は、移動に適していないのです。
でも、障害がない部分は使うほどに力を増します。無理をしなければ。
いまは、杖が1本だと身体を左右に振らないと前へ進めません。
右の腕にも左の腕にも杖を持つと、振れる幅が小さくなります。
右脚が真っすぐ前へ出ないので、左脚を前に出して進みます。
段差や階段で体重をかけられるのも左脚だけです。
「修験者は杖を突くので三本脚」と、どこかで聞きました。
わたしは二本杖と左脚で進むから、その変種。険しい山に入らなくても、渓谷の入り口付近で鍛錬を積めます。
『乙女瀧』で引き返す、と決めたのに、折り返し地点が見えません。
帰りに気づいたのですが、滝名が書かれた標を見落としていたのでした。
写真は撮っていました。小さい瀧でも、大喜びで撮影するから。
対岸の大きな岩に、高い樹が生えています。まるで載っているみたい。
『八畳岩』という所に辿り着きました。
「あと少し」「あと少し」とおもいつつ進んできたけれど、どこかを果てにしなくては。
折り返す前、ふと目を上げると、遠くに小さく見えたのは恋人たちの姿。
(本日はバレンタインデー。)
「寄り添って写真を撮っているのだから、その背景は瀧だろう」と推測し、「もう少しだけ。瀧が見える所まで進もう」と考え直しました。
『千手瀧』の近くに、もうひとつ瀧があるはず。
その在処を想うとき見上げることとなるのは、川の上流ではなく山の上。
「生きている間には、二度と来られないだろう。だから、少しだけ進もう。ここからなら進める」と考え、千手瀧の上へ続く細い道をのぼります。
地形が、まるで遺跡のよう。
『赤目四十八滝』の「23瀑」のうち、「6瀑」を見ることができました。
渓谷の入り口から「900m(徒歩23分)」と、地図には書かれています。
「この先の『17瀑』には、魂が身体から解き放たれたときに飛んでいく」と決めて、来た道を戻りはじめたのでした。
わたしが往復したのは『ゆったり散策コース(片道23分)』なのですが、休み休み進んで出発地点に戻ったのは2時間後。水しぶきがかかるほど近い瀧は無かったため、身体が冷えることはありませんでした。
『赤目四十八滝』は「千手瀧」まで犬連れで入山できます(一日の入山者が2000名を超えることが予測される日以外)。
[注:細かい規則は、行かれる前に調べてください。]
帰りに、小さい犬とすれ違いました。段差の大きい所もあるのに元気よく嬉しそうに駆け上がってくるのを見て、「天香久山でも、お利口な小型犬が駆け上がってきた」と思い出し、「山頂の神さまも瀧の神さまも、後ろ脚が利かないワンコみたいにわたしがチョットずつ上ってくるのをご覧になって微笑んでいらっしゃったのかも」とおもったのでした。