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風そよぐ
【記録◆2024年9月26日】
「教えられなかった知識」と「教えられた知識」の裏と表が、めまぐるしく入れ替わるときには、表を「感じること」によって留めます。
850日程も続いている症状は、いまだ命を終わりに導かず、「病状とは、生きるほうへ向かう流れなのでは」とおもえることもしばしば。
12年前からは検査さえも受けなくなったため、わが身ながら内側では何が起きているのか分かりません。けれども、身体は全知。
「生きたい」と願わなくても、わたしは生きています。
「この先にも生きていける」と確信できた日はありません。
けれども、わたしはいまも、命とともに先へ流れ続けています。
他者にとっての存在が解かれても、変わりなく流れ続けるのでしょう。
そして、誰かに名を呼ばれたら、ひととき形を結ぶのでしょう。
遍在のうちから。
土地の名にも結ばれる形があります。
ですから、その場に佇んだとき呼応できるよう、出かける前にはかならず身を清めておくのです。
地図に「出雲屋敷跡」と検索語を入れると「みむろ山(三輪山)」の麓に場所が表示されたのは今春。
下の記事にそう書いていますが、なぜか現在は表示されません。
半年前でも、地図上の「出雲屋敷跡」には行きたいと感じませんでした。 それで、「こちらだろう」と感じる『奥垣内祭祀遺跡』を逍遥したのです。
もうひとつ「出雲屋敷跡」があると知ったとき、すぐさま探しに行こうとおもいました。しかし、そちらのほうは、車椅子ユーザーには遠い場所。
「COGY(足こぎ車いす)」でも、二本杖でも、辿り着けない所だから。
とはいえ、「自分を漢字二文字で表すなら『不屈』」と言うだけあって、行きたければ方法を考えます。すると、何通りでも浮かぶのです。
話は逸れますが、わたしをよく知る方たちはわたしが自分の障害を正確に知っていると信じてくれています。「できるはずがない」「できるはず」と頭から決めつけるのは、少しも知ろうとしないひとたちです。
一昨年、テレビ番組のため「7時間に及ぶ密着取材」を受けたのですが、「確かめたいことは何でも訊いてください」と伝えて、答え続けました。
どなたに対しても「伝え残したことがひとつも無いように」という姿勢で関わるから、それまでに言語化を済ませていた部分は、前もって文章の形で伝えておきました。『note』の記事も2日分ほど添付したのです。
すると、ディレクターさんは取材当日、『note』の記事を全て読んだ、とおっしゃいました。そして、通常は2ヶ月後に放映されるのに、その回だけ(3倍以上の)7ヶ月かけて、ていねいに作ってくださったのでした。
さて、「誰にも似ていない自分」と「数々の条件」を組み合わせて、
「時間という隔たりがなければ、出雲の姫巫女たちと過ごせる場所」へ。
手がかりは、ひとつだけ。他の手がかりは、特定できないか知らないか。
それでも、探し出せる気がします。
10代の終わり、「月光菩薩の前に佇みたい」と感じて遅い時間から県境を越え(当時は京都に住んでいたので)、『東大寺』に着いたとき、「境内のどこに月光菩薩像が安置されているのか知らない」と気づいたのです。
すると、空気が透明な細い帯のようにたなびいているのを感じ、そちらに背を押されていくようにも感じました。ひとの居ないほうへ歩き続け、ふと右を見ると小さな建物があり、入ってみると正面に月光菩薩が……
何十年も前には、休日にさえ静かな場所でした。
そこから遠い場所に、平日なら静かな地域は、まだ残っています。
空気が透明な細い帯のようにたなびいてくれるのを感じられるかも……
◇姫巫女たちの庭◇
風の導きを必要としないほど、迷わずに辿り着けました。
樹々の間の小径を歩いて。
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「みむろ山(三輪山)」から、風が吹いてきます。
樹々に囲まれた台地を渡ってきて、端に立つわたしの肌を撫でます。
すべての細胞が、微細な光の粒に還って、わたし自身がたなびきました。
陽に温められた地から、水の粒が白く輝きながら天へ還るように。
「ここだ、きっと」と、声が出ました。
台地の高台に、姫巫女たちの住む宮が建てられていたのでしょうか。
「室」は「周りを囲まれた所」を意味するそうです。
ここも、「御室(みむろ)」と呼べる場所。
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「本日の最高気温は33度」と予報が出ていたから、中央には向かいません。
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柔らかい土を踏んで、「御室」の縁(ふち)を歩きます。
内側が耕されたようになっているのは、夏草に浸食されないよう、一気に土が返されたためでしょうか。
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鹿たちの足がそこに深く潜り込んで、たくさんの跡を残しています。
(鹿は、奈良市では街にいますが、他所では山にいます。奈良県南部だと、国道沿いにいるのが、鹿ではなくニホンカモシカ。)
時間という隔たりがなければ鹿たちの間を、土に杖先を深く潜らせながら歩いていきます。
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鳥の声が途切れません。
小鳥たちがはばたいて、ひらけた台地の広い空を横切ります。
その向こうには、真昼の月。
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小さくて可愛らしい生き物たちが、足元を行き交います。
(五体が人間と同じ数なら、わたしは平気。)
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「みむろ山」から水が下ってきて、台地の北側で細い流れになっています。
2200年以上前から、この水は重宝されていたでしょう。
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流れに沿って歩くと、親指の先ほどの生き物が、順番を待っていたように次々と、小川の向こう岸へ跳び移っていきます。
保護色になっているため、土くれがポンポンと動いていくよう。
どこでも、ひとの居ない所に入り込むと、「ごめんね」と謝ってばかり。
でも、責められている感じはしません。
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「御室」の縁(ふち)は木陰になっていて、肌に触れるのは風だけ。
でも、立ち去る前に、台地の中央まで歩み出てみました。
目を閉じて、他の感覚で周囲と関わります。
正面に、みむろ山。
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小径の入口まで戻って振り返り、頭を深く下げました。
「祖神となられた方々、この国を創ってくださり、ありがとうございます。お導きくださって、お護りくださって、ありがとうございます」
お礼を伝えると同時に、ひときわ強い風が吹きました。
そのとき生じた渦にしばらく取り巻かれていると、何か伝えられたような感じがして、先程と同じく、全ての細胞が微細な光の粒と化します。
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そういえば、みむろ山(三輪山)の山頂では、有用微生物群が散布されていたはず。山林の生態系保護のため、雨水で裾野へ広がっていくよう。
[詳細は、以下の記事内。]
「龍とは、微生物群なのでは」と、わたしは考えています。
水の粒も、光の粒も、中央で微生物が核となるから目に映るのでは、と。
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わたし固有の微生物雲は、さっき風で舞いあがった分がすでに空の一部となっています。いつか依り代を無くしたときには、全てが世界に還ります。それぞれがなにかをまとって、世界中を巡るのでしょう。
その時まで、言祝ぐため在ることを許されているのなら、想いを形にして伝え続けます。
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来るとき気にかかった枝道のほうへ行ってみると、そちらも小さい御室。
遠い過去には、何かが在ったのかもしれません。
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入っていくと、まだ奥に進めそう。
でも、引き返して、家に帰ります。
町に近い場所だから、すぐに帰れます。