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日本民謡のビート感について。

昨日、新宿BE-WAVEのSoi48(無観客配信パーテーィー)に俚謡山脈と出演してきました。
久しぶりに俚謡山脈と共演して民謡を歌ったのですが、やっぱり難しい(そして面白い)なと感じる事がありました。ツイッターでサッとツイートしてもいいような内容なのですが、140文字以内にまとめるのが却って面倒くさいのでこちらに書きます。普段はロックンロールやラップを歌いつつ、最近になって民謡も歌っている自分なりの実感をメインとしたもので、あまり学術的なものではありませんがご了承下さい。

まず、民謡を聴いたり歌ったりしている事と「忙しないビートだと思ってたら意外とそんなに速くなかった」って事が多いんですよ。多くないですか?いや聴いてるだけだとわざわざBPM計ったりする事はあまりないかな。でも民謡を聴いてる内に盛り上がってしまってポゴダンスでもしようかと思ったら意外とビートに合わない、みたいな、そういう経験ありません?普段聴いてる西洋音楽的な方法でリアクションを取ろうとするとうまくいかない、という。

今回のSoi48では「こっから舞」を歌ったんですよ。
黒石八郎 こっから舞

僕は進藤勝太郎さんという方の「こっから舞」をサンプリングというか、ループさせながらカバーしてたんですけれども、BPMで言うとだいたいちょうど90ぐらいでした。上の黒石八郎さんの動画もイントロはBPM110前後ぐらいだと思います。なんだけど、僕の体感速度としてはBPM120-140ぐらいに聴こえるんですよね。BPM120-140だと多分こういう曲でしょうか。

The Rolling Stones Jumpin' Jack Flash

でも「こっから舞ってまるでストーンズじゃん!」と思ったからといって「こっから舞」のビートで「Jumpin' Jack Flash」を歌ってみても、先述の通りBPMが違うのでいまいちキマらない。この「実はそんなに速くないんだけど忙しなく聴こえる民謡のビート感」について2つほど仮説を立ててみました。

1つ目の仮説は「民謡は4拍子というよりは1拍子的なビートなのではないか」という事です。これ、説明が難しいんですけれども。細野晴臣がたまに「1拍子」という事を言っていてそこから着想を得ているものの、多分僕は細野晴臣の言う「1拍子」とは別の事を言おうとしています。

James Brown - Funky Drummer

JBのこの曲はBPM90-100ぐらいだと思うんですけれども、ちゃんとミディアムテンポの曲に聴こえるんですよね。必ずしも性急ではない、余裕のあるセクシーなリズムだと思います。これはビートが4拍子(または8)でループしてるからだと思うんですよ。先ほど挙げた「こっから舞」はBPM90-100ぐらいでも、もっと速く聴こえるというのは1拍子でループしまくってるからではないかと。

うーん、なんといったらいいんでしょうか…。それぞれの曲を聴きながら人差し指で円を描いてみて欲しいんですよ。JBの方は4拍子でゆっくりと大きい円を描きたくなる。でも「こっから舞」は素早く小さい円をたくさん描きたくなる、この感覚が僕の感じる1拍子です。「こっから舞」を例に出してますが、民謡はこの小さい円を素早く書きまくるビート感の曲が多いように思います。


2つ目の仮説は「民謡は鳴ってる音の奥にもっとゆったりした音が根底にあるのではないか」という事です。
まず日本の音楽にはBPM30-40ぐらいの聴こえないビート感、またはノンビート感みたいなものが通底しているんじゃないか。その上で「こっから舞」などをBPM90-100ぐらいで演奏するから忙しなく聴こえる。鳴ってる音だけで速いとか遅いとか感じているわけではなくて、鳴ってないノンビートな音から鳴ってる音への「加速感」によって速く聴こえているのではないか、という事です。


僕の好きなガレージパンクで例を挙げます。

The Swamp Rats Louie Louie

この曲は僕としては結構速めというか、忙しなく聴こえます。でもこれが何で速く聴こえるかというとこの曲が前提にあるからなんですよね。

The Sonics Louie Louie

「Louie Louie」自体はThe Kingsmenがヒットさせたロックンロールクラシック曲の1つですけれども、The Sonicsがコード感を変えてワイルドにカバーしました。そのThe Sonicsのバージョンを聴いてThe Swamp Ratsが更に速度を上げて乱暴にカバーしました。The Swamp Ratsの「Louie Louie」から感じるスピード感というのは、The Sonicsのバージョンが頭の片隅にあるからこそ速く乱暴に感じているフシが少しある。それと同じような何かしらの「前提」のようなビート感が日本の民謡にもあるんじゃないかなと思ったんです。それを無意識の内に感じ取っているからこそ忙しなく感じるんじゃないかと。

ここに書いた仮説はいずれも根拠や裏付けが全くないので恐縮です。もう一つ言うとBPMのような横軸っぽい説明だけではなくて、縦軸かそれに代わる何かがないと日本民謡のビート感は説明できないんじゃないか・・・?という気もしています。「民謡ってこういう所が面白い」という事を自分なりに書いてみたつもりですが、似たような事をもっとちゃんと書いてる人がいたら読んでみたいとも思っておりますので、何か知っている方がいたら教えてください。

≪2020.06.08追記≫
思い付きでパッパッと書いてしまったのですが、思いのほかリアクションをいただいたので追記します。

俚謡山脈のツイート①
クラーク内藤のnote「日本民謡のビート感について」です。取り上げられてる「こっから舞」に関して言えば、唄が先にあってビートは後付けの曲。歌詞の詰まり具合がそのままビート感になっています。

俚謡山脈のツイート②
ジジイバアアによる現場バージョンのこっから舞をご覧ください。ビートは最小限です。
https://www.youtube.com/watch?v=jOGep1IJ6ro&feature=emb_logo

また別の方からは「小泉文夫『音楽の根源にあるもの』に日本のリズムに関する一章があったと記憶しています。」と教えていただいたので、早く読みたかったので図書館で借りて読み始めてます。まだ途中なのですが、農耕民族と牧畜民族の生活の違いからくるリズム感の違いについて確かに書いてあり面白いです。僕が書いたやつは「労働歌」という観点で書くという事が抜けてましたね…。

また、僕に直接ご連絡いただいたわけではないのですが、「『こっから舞』は単純に太鼓がタメ気味な分三味線が走って聞こえるのが性急な印象を与えてるような気もする」という方もいて、なるほどなと思いました。そういう肝心の所全然書かないよねと反省しつつ…。

知ってる事や考えている事を発表する、というよりはかなり質問っぽい意味合いで書いたのでリアクションがあって嬉しかったです。
皆さん色々とありがとうございます。引き続き調べたり考えたりやったりしてみます。

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