都心の人混みで木浴―― 「東京おもちゃ美術館2014」
2014年10月
先日、東京都四谷の東京おもちゃ美術館で開催された「東京おもちゃまつり2014」に行ってきました。せっかくなのでレポートします。
2008年、東京都・四谷三丁目にオープンした東京おもちゃ美術館。旧四谷第四小学校の校舎を利用した館内は、まるごとぜんぶおもちゃの世界です。 展示品を眺めるだけではなく、実際に触って遊べる美術館として、特に「木育」に力を入れています。世界中のボードゲームが揃った「ゲームの部屋」や、同館 を運営するNPO法人「日本グッド・トイ委員会」が選定したおもちゃの展示室、おもちゃ作りを楽しめる工房など、様々なスペースが用意されているなか、遊 び盛りの子どもたちにもっとも人気なのは、靴を脱いで総ヒノキ張りの床を走り回れる「おもちゃのもり」。
ボールプールもアスレチックもすべてが木でできていて、深呼吸するとまるで森のなかにでもいるようです。
また、2011年10月には「赤ちゃん木育ひろば」もオープン。赤ちゃんが怪我をしにくいようにと、柔らかくて温かい特徴をもつスギ材を使った空間 で、おむつ替えコーナーや授乳スペースももちろん完備。メインに使っているのは東京・多摩産の杉ですが、すべり台は九州・湯布院の杉、ベンチは宮崎の杉、 車のおもちゃは京都の北山杉、触れるオブジェ “ スギコダマ ” は吉野杉や秋田杉、と、木の特性を生かして産地や樹齢の異なる素材を使い分けているそうです。
■ 年に一度のおもちゃの祭典
東京おもちゃまつりは、そんな東京おもちゃ美術館で年に一回、10月に開催されるおもちゃの祭典です。
多彩なワークショップブースが並んだ「おもちゃの縁日」や、全国の木製品メーカーが集結したキッズウッドデザインの見本市「森のめぐみの子ども 博」、その他パフォーマンスや飲食ブースなど盛り沢山――なだけに人もたくさんで、当然のことながらどこを見ても子どもだらけで、当然のことながら自分の 子どもも狂ったようにはしゃぐので、楽しいですが正直かなり疲れます。
▲ 個性的な70以上のブースが並ぶ「おもちゃの縁日」
▲ 広場では、青空の下おもちゃで遊べる。
昨年はどしゃ降りだったな……
個人的に一番おもしろかったのは、やはり「森のめぐみの子ども博」でしょうか。青森、岐阜、群馬、宮崎、沖縄など全国各地のメーカーが講堂にブース を出して、国産の木製品を見て、触って、買うことができます。講堂内に充満した木の香が心地よく、いろんな土地の木の質感を比べられるのがいいです。
▲ 広い講堂に、全国から木製品メーカーが集結
木のぬくもり、癒し効果、なんていわれると抽象的で曖昧に聞こえますが、こうして具体的に玩具とか家具とかの形になっているものを触っていると、木ってやっぱりいいなあとしみじみ思います。
■ 日本の木を使おう
ところで世界全体でみると、かつては陸地の半分を占めていた森林が現在は約3割にまで減少してしまっていますが、日本に限っていえば、ここ50年く らいで森林資源の蓄積量は2倍以上に増えているそうです。これはでも「日本は自然に溢れた素晴らしい国だ!」ということではなくていろいろな事情があっ て、そのひとつが昭和30年代から国が始めた「拡大造林政策」。全国各地で雑木林が人工林へと置き換えられ、造林が推進されていったのですが、同時期から 木材の輸入自由化も段階的に始まったため、国産材は低価格の外材に対抗できず、間伐などの手入れなしで放置されて荒廃した人工林がいたずらに増えまくった のです。世界有数の森林国であるのに、木材供給の約7割を海外からの輸入に頼っており、林業経営も年々厳しくなっている、というのが日本の悲しすぎる現 状。つまり日本においては、木を守ることよりも、なにより木を使うこと、国産材をいかに活用するか、ということが課題となっているのです。
そんな状況を変えるために、数年前から様々な取り組みが全国各地で増えています。「木育」の考え方を広める様々なプロジェクトとか、間伐材や端材を 生かした木製品をつくる取り組みとか、地域の木材を利活用した町おこしとか。東京おもちゃ美術館も、そうした実践例のひとつといえるでしょう。おまつりは 年1回ですが、施設自体は年末年始以外だいたい入れます。子どもも大人も「日本の木」を楽しめます。おやすみの日に、ぜひ遊びにいってみてはいかがでしょ うか。
東京おもちゃ美術館
〒160-0004 東京都新宿区四谷4-20 四谷ひろば内
http://www.goodtoy.org/ttm/
【問】NPO法人「日本グッド・トイ委員会」
TEL 03-5367-9601
FAX 03-5367-9602
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