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読み返したくなる短篇

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黙ってたのしく読み返していてもいいけれど、あえて考えてみる。なぜ自分はこれらを読み返したくなるのか。
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#短編小説

忘れられない奇妙な味――柴田錬三郎「さかだち」

【マガジン「読み返したくなる短篇小説」バックナンバー】  私がこの短篇を初めて読んだのは、吉行淳之介が編纂したアンソロジー『奇妙な味の小説』(1970、立風書房)でだった。柴錬さんの小説は後にも先にもこれ一篇しか読んだことがなく、正直これからもたぶん読まないと思う。そういう作家の作品と思わず知らず出会えることが、アンソロジーの楽しいところだ。とりわけこの『奇妙な味の小説』は以前も触れたとおり、私にとって発見と喜びがとても多かった一冊で、古本屋で買い求めてからもう15年くらい