谷崎潤一郎の言葉と眼差し その2:実際の姿かたちは割とどうでもいい――「陰翳礼賛」
2015年5月
■ 陰翳 = オブジェ
谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」(昭8・12、9・1「経済往来」)は同時代評や先行研究において、多くの場合、現代では失われてしまった「陰翳」をあらためて日本独自の伝統美として掲揚した作品、あるいは谷崎自身のかつての「西洋礼賛」の反動として読まれている。※1 確かに谷崎は「陰翳礼讃」において、至上の位置に据えられた「陰翳」美を大前提とし、その実例と感想とを列挙するという趣向を採用している。が、今日のところはいったん、伝統美としての「陰翳」と