OW学入門「clank式戦術理論」

こんにちは。AKIHABARA ENCOUNTのclankです。

今回の記事は戦術についてです。

戦術と一口に言ってもOWにおける要素は膨大です。また、記事をまとめるにあたって今現在一般的だと思われる戦術理論とは大きく異なる点や新しい要素なども多く含まれているため、便宜上今回解説する理論をclank式戦術理論としています。

clank式戦術理論とはしていますが、実際には僕がちまちま深めているOW理論の中から戦術にフォーカスを当てた抜粋的な内容となっており、この記事では軽く触れるだけの戦略あるいは連携という概念も多く登場しますのでその点ご了承ください。

また、僕が以前書いた記事と一部共通する内容も多く登場します。異なる内容が書かれていた場合、今回の記事の内容が僕の中での最新版となります。


前置きが長くなりました。

この記事では、clank式戦術理論における戦術とはそもそも何なのかということを、戦術と密接にかかわるヒーロー構成との関係性について触れつつ解説したのち、OWにおける戦術を細かく要素に分けることで戦術への理解を深めていく流れとなっています。

1,序論

clank式戦術理論における戦術とは、1ウェーブに勝つための手段、方法論です。しかし、戦術とは戦略の下位に位置づけられるものとして考えられます。

この戦略というのは、1試合、あるいは1ラウンドに勝つための方法論であり、各ウェーブでどれだけのULTをいつ投入するのか、複数のウェーブを通してマップをどのように使っていくのかといった各ウェーブを有利にしつつラウンド勝利を目指す考え方、または特定のウェーブにどれくらいのリソースを投入するかを決定するための方法論となります。

したがって、戦術とはあくまで戦略に沿って実施されるものであり、その中で個別のウェーブをいかに勝利するか、というものになります。


1-1,従来の理論との相違点

clank式戦術理論において従来の理論と比較して大きく異なるポイントは戦術とヒーロー構成を分けて考える点にあると言えます。

従来の一般的な理論では構成と戦術は同一視され、ラッシュ構成はラッシュをするもの、ダイブ構成はダイブをするもの、ポーク構成ではポークをするものという考え方が一般的でした。

しかし、実戦においてはラッシュ構成、ダイブ構成であってもポークを行い、ポーク構成であってもラッシュを行うことがあります。

その点に着目し、本来戦術と構成とは別物であるという仮説の下で考案したのがclank式戦術理論というわけです。

戦術と構成を分けて考えることによって構成の相性と、ウェーブにおける勝敗という二つを矛盾なく説明することができるようになりました。

2,戦術理論

clank式戦術理論における戦術は、戦術の大枠を規定する戦闘形態、チームの配置を決める陣形、ウェーブにおける戦闘の推移のさせ方を決定する戦闘態勢の三つによって成り立ちます。

これらは前項でも解説した通り戦略に基づいて実施されるものの、その時の状況に合わせ能動的に選択する必要があります。

まずは各項目の概要を解説したのち、実際の構成、戦術と照らし合わせてより詳しく解説していきます。


2-1,戦闘形態

戦闘形態は、ラッシュ、ポーク、カウンターの三つに分類され、ラッシュ→ポーク→カウンター→ラッシュという三竦みの関係を持ちます。

戦闘形態にはパワースパイクという概念が密接にかかわります。

パワースパイクとは元はLoL用語ですが、この論におけるパワースパイクはチーム全体が統一された意志の元であらゆるリソースを投入して戦闘を行うタイミングを指します。

LoLと違い成長要素がないため、OWにおけるパワースパイクとは時間経過で迎えるものではなく、任意のタイミングで形成するものとなります。

このパワースパイクの形成タイミングによって、戦闘形態の分類と三竦みの関係が出来上がります。

またこの三竦みの要素によって、敵の行動を見てからあるいは予測して戦闘形態を変える、自らの戦闘形態を見せて敵のアクションを釣るなどの駆け引きの要素が生まれます。

この項では、それぞれの形態とそれらの関係性を解説していきます。


ラッシュ

ラッシュとは、素早く敵との距離を詰めて近接戦闘を行う、ポークに強くカウンターに弱い戦闘形態です。
近接戦による火力の確実な押し付けと、複数のスキルを重ねることによるバーストダメージによってキルを起こすことで早期に人数差をつけることを目的とした戦闘形態です。

瞬間的なパワースパイクの形成こそがラッシュの強みであり、中長期的にリソース差をつけることを目的としたポークに対して強く出られる一方で、後出しでパワースパイクを形成することを目的としたカウンターには不利がつきます。


ポーク

ポークとは、制圧射撃と飽和攻撃を中心としたカウンターに強くラッシュに弱い戦闘形態です。

継続的かつ適切な火力投射によりじりじりと敵のリソースを奪って有利な状況を作ることが目的の戦闘形態であり、最終的にはフランカーなどに削れた敵を狩らせたり、身動きの取れなくなった敵に近接戦でとどめを刺すなど、必ずしも中遠距離戦のみによって決着させるわけではないことに注意が必要です。

継続的な火力投入によるリソースレースをする戦闘形態であり、明確なパワースパイクを形成することがほぼありません。そのため敵のパワースパイク形成タイミングをうかがうカウンターが反撃タイミングを掴めない一方で、瞬間的なパワースパイク形成で強引に人数差を生み出すラッシュに対してはリソースレースに持ち込めなくなります。


カウンター

カウンターとは、敵のパワースパイクを受け止めるあるいは受け流すことで、リソース差を生み出したのちに反撃に転じる、ラッシュに強くポークに弱い戦闘形態です

敵のパワースパイク形成後の隙に自らのパワースパイクを形成することで有利状況を生み出すことを目的とした戦術であり、OWでよく用いられるカウンターピックなどの敵の行動に有利な行動をかぶせるという意味ではなく、反撃戦術という意味でのカウンターとなります。

敵のリソースを枯渇させたいため、早期にパワースパイクを形成するラッシュには相性がいい一方、パワースパイクを形成することがほぼないポークには反撃の糸口がつかめなくなります。

反撃と聞くと完全な待ちに徹する戦術と捉えがちですが、実際には敵のパワースパイクを弱めるためにエリア取りやハラス、敵のパワースパイク形成を引き出すためのドライプッシュなど誘いを中心とした布石を先んじて打つことが重要な戦闘形態です。


2-2,陣形

陣形は大きく戦力を分散して配置するスプリットと、戦力を集中して配置するグループアップに分けることができます。

陣形には戦略的要素であるマップと地形有利といった要素が大きくかかわってきます。マップをどう利用するかという点が陣形における肝となるわけです。

この項では、スプリットとグループアップのそれぞれの特徴を解説したのち、その関係性についても触れていきます。


スプリット

スプリットとは、戦力を分散して配置する陣形であり、複数の重要なポジションとポイントを同時に確保することができ、敵を包囲することを得意とします。また、流動的なポジション変更も得意とし、重要なポジション同士が離れた場所にあるマップほど力を発揮しやすくなります。


グループアップ

グループアップとは、戦力を集中的に配置する陣形であり、戦力が集中することでチーム全体の生存性が向上し、フォーカスを合わせやすくなることで瞬間的なキルを発生させやすくなる陣形です。また、強ポジと言われるような高台などの特定のポジションを維持、あるいは奪取することにおいて力を発揮しやすくなります。


スプリットとグループアップの関係性

基本的にマップ全体を使って敵を包囲するのが得意なスプリット、特定ポジションの制圧とシナジーの最大化を得意とするグループアップといった構図ではありますが、実戦においてはそこまできれいに分けることもできません。

実戦における具体的な例を挙げると、ラッシュを仕掛けるための6人集合、強ポジを取りに行く5人とポイントを確保するための5-1、本陣3人とフランカーコンビに単騎の遊撃といった3-2-1といった具合にグラデーションのようになっており、また、戦況に応じて変化させていくことも考えられます。

そのためスプリットとグループアップの関係性とはグラデーションのようなものであり、プレイヤーはそのグラデーションをコントロールすることで戦術をより最適な形に導くことができます。


2-3,戦闘態勢

戦闘態勢は防勢方針、攻勢方針の2つに分類できます。

これらはキルゾーンを用いた戦闘をするかどうかで分類しています。

キルゾーンというのは効果的な攻撃を加えられる空間のことであり、OWにおける代表的なキルゾーンはチョークポイントなどが挙げられます。
実践的には特定の地形のような固定されたものというよりは、どこで当たるかという選択的なものです。

これを利用するのが防勢方針、利用しないのが攻勢方針となっています


防勢方針

防勢方針とはキルゾーンを設定し、敵をそこに誘導あるいは侵入してくるのを待ち、攻撃を仕掛ける方針です。
攻勢方針に比べてリソースを効率よく運用することが可能で、不利な戦況でもそれを補うことが可能となります。また、劣勢時に時間的な猶予を稼ぐことにも向きます。

一方で、敵に主導権を渡すリスクがあり、そもそもポイントを敵に確保されている状態ではいくらキルゾーンを設定してもそこに敵が踏み込んでこない場合もあります。

防勢という名の通り、ポイントや重要なポジションの堅持に向いており、キルゾーンの地形的優位と合わせれば一方的にウェーブを畳むことができます。

実戦ではアサルトやペイロードの防衛側やカウンター形態と合わせて採用されやすくなります。


攻勢方針

攻勢方針とは敵の位置に対して機動し積極的に攻撃を加える戦闘方針です。
防勢方針と比べて戦闘における主導権を握りやすく、地形状況に左右されずに選択しやすい利点があります。

主導権を握りやすい性質から基本的には攻勢方針を選択することが勝利に近づきやすくなる一方、キルゾーンを設定できない都合から戦闘を起こす地点を随時更新する必要があるために防勢方針と比べて連携が難しくなります。また、常に索敵や機動を行うためにリソースの損耗が激しくなりがちです。

OWにおいてはポイントコントロール権の無い攻め側は基本的に攻勢方針を取る一方で、最近では防衛側がキルゾーンを無視して攻勢方針を採用することも多くなってきました。

これはOWのリソースレースというゲームの性質上先攻めの優位が発生するためであると考えられます。

3,具体例と戦術理論の適用

ここまではclank式戦術理論の中身について話してきましたが、ここからは具体的な構成と照らし合わせて戦術理論を適用していきましょう。

ところで、ここまで読んでいただいた方の中にはダイブという名称が使われていないことに違和感を覚えた方もいるのではないでしょうか。

まずは従来のダイブ構成をclank式戦術理論によってひも解いてみましょう。
その後いくつかの代表的な構成にclank式戦術理論を適用してみたいと思います。


3-1,ダイブ構成(ウィンストンDvaトレーサーキャスディアナブリギッテ)

従来の理論におけるダイブ戦術はclank式戦術理論においては、攻勢方針によるスプリットラッシュに相当します。

ダイブ戦術はウィンストン、トレーサーといった近接戦に優れたヒーローによってラッシュを狙う一方で、陣形としてはバックラインにサポートラインを配置するようなチームを分散して配置するスプリットの形をとっていることが多いためです。

しかし最近ではブリギッテのラリーを攻撃的に利用したグループアップしながらのラッシュを行うほか、ウィンストンを中心に削りを入れ、敵が疲弊したタイミングでフランカーでスウィープするポークを行う場合もあります。

また敵のラッシュ戦術をいなすためドライプッシュ後に再び攻撃を加えるカウンターも行えます。

基本的にオールラウンドに戦うことができますが、現在の環境ではやや器用貧乏感があり、疑似的なポーク戦術は選択できるもののULT依存度が高く構成単位のポーク力は低いと言わざるを得なません。結果としてカウンターを得意とする構成に攻めあぐねることが多いといえます。


3-2,ラッシュ構成(ラインハルトDvaメイシンメトラバティストルシオ)

ラッシュ構成はグループアップを軸として、ラッシュカウンターポークをバランスよく行える構成であると言えます。

ルシオのスピードブーストを生かしたラッシュ、バティストシンメトラが主体となるポーク、バティストのイモータルフィールドが切り札となる構成全体の耐久性を生かしたカウンターといった具合で、戦闘形態はすべて高い水準で備えていると言っていいでしょう。

また、攻勢、防勢どちらでも力を発揮しやすいために、ポイントやULTと相談して好きな方針を選びやすいことも評価点と言えます。

一方でそれらすべてがグループアップによるシナジーの最大化によるところが大きく、スプリットは現実的ではないために、複数ポジションを制圧できないと大きく不利を背負ってしまうマップでは後手に回ってしまいやすく、広いマップでは包囲されてタコ殴りにされることもしばしばあります。


3-3,スプリット構成(レッキングボールDvaトレーサーソンブラゼニヤッタブリギッテ)

2020年から頭角を現し始めた現代OWにおける最強構成。clank式戦術理論はこの構成を矛盾なく説明するために生まれたと言っても過言ではありません。

スプリットという名の通り高い機動力と自己完結性を持つフランカーとボールによって素早く散開して効率よくポジションを奪い、またその機動力を生かして必要な地点、場面に高速で集合しグループアップの恩恵を得ることもできます。

ゼニヤッタ、ブリギッテというコンビによってポーク力、ラッシュ力も確保され、豊富なCCと範囲ヒールULTによってぱっと見の貧弱さとは裏腹にカウンターすらも高水準でこなすことがでます。

ボールの拘束力によるキルゾーンの形成も容易なため防勢はもちろん、機動力を生かして攻勢に出ても十二分に力を発揮します。

総じて器用万能と言ってよい構成で、使いこなすことの難しさを考慮しなければ2021年時点の結論構成と言ってもいいでしょう。

4,あとがき

いかがだったでしょうか、clank式戦術理論であれば現行の構成、戦術を理論的に解き明かすことができることが伝わったのであれば幸いです。

正直な話まだまだこの理論は詰める余地が残されていると感じています。
特に戦闘方針についてはこの概念は確実にあると考えながらも、文章に落とし込むにはまだ考えが追い付いていません。

また、冒頭でも言った通りあくまでこの理論は戦略や連携などの上位要素、下位要素などを排除した理論であり、この記事では解説しきれていない要素もたくさんあります。

そこらへんは今後記事にしていくとして、この記事自体はかなり難産だったこともあり、理論には自信があるものの、皆さんに伝わる形でまとめられたかには自信がありません。

OW理論という未完成理論からの抜粋理論でしたが、この記事を読んでくれた方がこの記事の内容によってより深くOWを楽しめるようになればうれしいです。

ここまでお読みいただいてありがとうございました。

次回もお楽しみに。それでは。

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