【OW2】OWLを完全支配”キリコゾンビ構成”解説
こんにちは、AkihabaraEncountのclankです。
Overwatch(無印)からコーチ、大会解説、解説記事といった形で活動をしています。現在は個人での活動が主です。
今回の記事ではタイトル通り、
OW2最高峰の大会「OverwatchLeague2022GrandFinal」において環境を完全支配した”キリコゾンビ構成”の解説と考察となります。
まずは構成の概要について触れ、その後各ヒーローの採用理由、主な戦術、セオリーと段々と深堀していきます。
キリコゾンビ構成の概要
名前の由来
OW(無印)のころから存在した構成である”ゾンビコンプ”からコンセプトや戦術を流用しているものの、現在では採用ヒーローが大きく変わっていることから従来の”ゾンビコンプ”と区別するために僕が勝手に名付けてそう呼んでいます。
”ゾンビコンプ”の名称は、個々の生存力と復帰性能によってゾンビのように継戦能力が高いことに由来しています。
ヒーロー構成
キリコゾンビ構成の主な採用ヒーローは
ウィンストン、ソジョーン、リーパー、ルシオ、キリコとなります。
オプション的にオリーサ、トレーサーなども採用されています。
パッチが変わればもう少し多様性があるかと思いますが、少なくともOWL2022GrandFinalでは過去に類を見ないほど支配的なメタとなっていました。
以下の画像をご覧ください。
こちらはOWL公式データベースstatslabから引用してきた2022PlayOff及びGrandFinalにおけるヒーローピックのデータとなります。
この構成がいかに支配的なものだったのかがよくわかりますね。
よく一強環境としてGOATs構成やJOATs構成が挙げられますが、メイン採用されるヒーローがすべて90%を超える環境は僕の記憶にはありません。
ここまで偏ったのはパッチ内容の問題もありますが、OWLという特殊な環境であること、パッチ適用のタイミングの関係で練習期間が短かったことなどもあるため、実際にライブパッチが来てもここまで極端に偏ることはないどころか、他の構成も普通に共存すると思われます。
構成コンセプト
”キリコゾンビ構成”は”ゾンビコンプ”の系譜であるため、コンセプトは”ゾンビコンプ”と共通点が非常に多く、以下のようになります。
・全員移動スキル持ちで構成することで機動力を確保する
・全員無敵スキルまたは回避に使えるスキルを持つことで敵にフォーカスの的を絞らせない
・グループアップを維持しそれを範囲系スキルでカバーする
まとめると、
グループアップと範囲スキルの恩恵を最大化しながら機動力と生存性を確保しよう。
と、なります。
グループアップの恩恵とは主に味方との距離が縮まることで起こる、連携速度の高速化です。具体的にはフォーカスが合わせやすくなりますし、敵に絡まれたときのカバーも距離が近い分素早く行えるようになります。
範囲スキルは単体スキルに比べて1人あたりへの影響は少ないものの、巻き込む対象が多ければ多いほどゲーム全体への影響力は膨れ上がります。
もちろん、グループアップしてれば巻き込むことが簡単になり理論値、最大値が出しやすくなります。
しかし、これらを行うためには当たり前ですが常に全員で行動する必要があります。
そのためには移動速度を合わせる必要があり、それならいっそ移動速度が早いヒーローで固めてしまおうというのが”ゾンビコンプ”及び”キリコゾンビ構成”となります。
構成の強みと弱み
さてここからは”キリコゾンビ構成”の強みと弱みになります。”ゾンビコンプ”とコンセプトを共有するためにそこに由来して共通する点もあるものの、ソジョーンとキリコを新たに採用したことによる独自の特徴も存在します。
一応主観多めなので人によって解釈が違うかもしれません。
強み
・機動力が高いために集団戦の回数を増やしやすい
・エンゲージ、ディスエンゲージが容易
・全員が無敵及び回避スキル持ちのためフォーカスを絞られにくい
・上記3つにより集団戦の主導権を握りやすい
・範囲無敵スキルによる近距離戦の押し付けが強力
・中遠距離からワンパンキルを狙うことができる
・地形を無視したエンゲージができる
弱み
・回復力が少なめでリソースが多いわけではない
・中遠距離での攻撃が乏しい
・エリア取りやポイントの駆け引きが苦手
・グループアップしなければパフォーマンスが発揮できない
まとめると”近距離の集団戦で強い要素をそろえている一方、マクロ的な部分の器用さに欠ける”といったところでしょうか。また、中長期的な戦闘よりもスキルを重ねて瞬間的に決着をつける戦闘を得意としているとも言えます。
各ヒーローの役割
ウィンストン
敵陣のど真ん中でバリアを展開することで近接戦をする味方の安全地帯を作り出すことで集団戦を主導する。バリアによる敵の分断、戦線の構築も担う他、プライマルレイジは延命だけでなく敵の陣形を無理やりかき乱したり、練度次第では狙って単独キルを取ることもできる。
また、敵ソジョーン(及びヒットスキャン)を押さえることで敵の中遠距離戦での強みを潰して強引に近距離戦の土俵に引きずり込む役割も持っている。
わざと被弾してサポートのULTをファームするためにも非常に便利。
リーパー
ダメージディーラー兼サブタンク役。ウィンストンが敵の妨害やイニシエートを担当するなら、リーパーは火力による敵の牽制とタンクの抑え込みを担当する。
一方で近距離戦でのフォーカスの中核も担うため、敵の牽制とフォーカスを適宜切り替える立ち回りが必要になる。
テレポ先をバリアで守ってもらったり、ULTを鈴で守ってもらったり、狐走り中に最大火力を出せたりと、フルにポテンシャルを発揮するための細かいスキルシナジーが多いため味方を使う意識が必要。
ソジョーン
ダメージディーラー兼デコイ役。距離を選ばないワンショットキルの圧力で敵に対処を強制する。ソジョーンがいることで多少の”待ち”の戦術を許容でき、わざとグループアップから離れて敵のダイブを誘うことでカウンター戦術の起点になる。
中距離でダメージを出しつつスナイプを狙うイメージが強いが”キリコゾンビ構成”においては移動スキルを用いて敵に肉薄してレールガンを当てに行くことで火力の大部分を担うなどエコーのような立ち回りをする必要がある。
嘘だと思う方はSFSvsDALのoasisを見てほしい(それはproperがおかしいだけ?…それは…そうなんですが…)
キリコ
”キリコゾンビ構成”のシナジーの核。集団戦の押し付けや、緊急回避手段として使える鈴、どこからでも味方の救援、フォーカスへの参加、敵の攻撃の回避が可能な神出鬼没、広範囲に強力な全体バフをかける狐走りと、生存性の高い集団で敵にぶち当たるコンセプトの”ゾンビコンプ”と非常に相性がいい。特に鈴は敵の妨害を無視した一方的なイニシエートを実現できる。
前任のモイラとは違い雑な全体ヒールで戦線を支えることはできないが、それを補って余りある優秀なスキルと自身の攻撃力でコンセプトをより強力なものへと昇華させている。
ルシオ
ラッシュ系戦術のエンジン兼リソース管理役。エンゲージ、ディスエンゲージをスピードブーストによってより確実にするほか、乱戦中の全体ヒールによって味方の生存性も確保することができる。
貴重で強力なノックバックスキルも持っており、味方の護衛、敵の接近の拒否、逃げようとする敵の妨害など随所で重要な役割を持つ。
敵に突っ込むための補助が主だが、その裏で不利になりそうなタイミングでチーム全体を引かせることができるので、実はそっちのほうが重要。
マクロ
”キリコゾンビ構成”は得意な集団戦を高い機動力を使って高速で仕掛けることで、集団戦の回数を増やして時間を稼ぐ、あるいはチャンスを増やすことで勝利を目指します。
また、少人数戦となっても復帰力が高く生存力も高いため、戦闘を継続しながら復帰を待ってポイントを押さえ続けることも可能なため、リセットして次の集団戦の準備をするのか?、戦闘を継続して時間を稼ぐのか?の判断が重要になります。
特にエスコート防衛などは他の構成では1チェックポイントあたり2回集団戦に負けるとゴールされるような場合でも、”キリコゾンビ構成”なら他の構成では戦闘を起こしにくいリスポーン付近で戦闘を起こすことで3回当たることも可能になります。
”強みと弱み”の項目でも触れたとおり、エリア取りやポイントの駆け引きなどマクロ的な駆け引きが苦手なため、集団戦の前にどうやって有利を築くか?ではなく、どうやれば得意な集団戦に持ち込めるか?を考えることが重要です。
ミクロ
基本戦術:ラッシュ
”キリコゾンビ構成”はラッシュ戦術を得意としそれを中心に戦います。
自チームに有利なタイミングやきっかけがあった時点で集団で突入し、フォーカスを合わせて一瞬でキルを取って制圧していきます。
ラッシュを行うにはフォーカス対象とタイミングと手順(スキルセット)が重要になります。
同じラッシュ系の構成として”JOATs構成”と多くの共通点があり、以前書いたJOATs構成解説と被る記述が多くなりますのでご了承ください。
フォーカス対象
フォーカス対象は主に機動力に乏しいDPSまたはサポートとなります。稀にタンクからフォーカスするケースもありますが、基本的にはDPS=サポート>タンクの順です。
ラッシュできない位置にサポートやDPSがスタックするような場合は前線にいるタンクをフォーカスして削り倒すことも視野に入れます。
タイミング
ラッシュを行うタイミングは主に以下の通りになります。
・フォーカス対象候補が孤立したとき、あるいは隊が分かれているとき
・バーストダメージが入るなどして体力が少ない敵がいるとき
・敵が防御系スキルを使った直後
・ソジョーンのレールガンがチャージできたとき
・敵が任意のポジションに踏み込んできたとき
実戦的にはULT状況やポイント状況、対面の構成によっては特にきっかけがなくてもラッシュしたりもします。
手順(スキルセット)
ここで紹介するのは、あくまでベースとなる一例です。その場の状況によって最適な手順は変化します。
0,全員が同じ位置にラッシュできるポジションにつく(下準備)
1,前述した何かしらの条件がそろう
2,ウィンストンジャンプ(必要なら各々移動スキル使用)
3,フォーカス対象と敵サポートをバリア+ディスラプターショットで分断
4,総攻撃で一人目処理
5,状況によって追撃orリセット
ウィンストンのバリアはラッシュした先で味方の安全を確保すると同時に、敵のサポートのヒールや援護を遮断する役割を持つので、敵の位置関係を把握し上手く分断できる位置に置くのがベストです。(ディスラプターショットも同様の役割を持ちます)
また、だらだらと集団戦を続けてしまうとリソースが途切れて逆転されるリスクが上がるので人数差を作った段階で適宜リセットの判断をしましょう。
応用編:ミラー対決
基本的には機動力を活かして先手を取ることでアドバンテージを得る”キリコゾンビ構成”ですが、”キリコゾンビ構成”のミラー対決は基本的に相手に先に仕掛けさせる=カウンター狙いが有利を取りやすくなります。
それはなぜかというと、スキルを後出ししたほうが最適な選択肢を取りやすいからです。
特にお互い機動力の高い構成なら先にしかけられたら移動スキルを後出しすれば簡単に相手のラッシュをかわすことができますし、移動スキル(逃げスキル)のなくなった敵を倒しきることも簡単です。
ジャンケンが後出し有利(というか絶対勝てる)なのと一緒です。出せる戦術(手)が一緒ならより最適な運用をしたほうが勝つわけで、最適な運用をするには敵の戦術(手)を見るのが一番簡単なわけです。
つまり、”キリコゾンビ構成”のミラーではこちらから仕掛けずに如何に相手を削っていけるか、または相手にどうやって先に仕掛けさせるが重要になってきます。
あとがき
以上、”キリコゾンビ構成”の簡単な解説でした。
ゾンビコンプの後継的構成で、GOATs構成のエッセンスも受けついでおり、ダイブとラッシュの中間という複雑で面白い構成だと思っています。
問題は環境を一色に染めすぎなところなんですけどね。もうちょっと構成にもバリエーションがあればヘイトは薄れてたかとは思います。
(JOATs構成の記事でも同じこと言ってたな)
とりあえず11月16日に予告されている調整でもナーフどころか、相対的なバフすら受けるので、シーズン1中の特に競技勢はこの構成としっかり向き合う必要がありそうですし、この手の構成は今後もたびたび環境を染め上げてくるので、今のうちにしっかり極めておくと困らなさそうですね。
というわけで、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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