脳梗塞かな?と思ったら
今回の話は一般のみなさんはもちろん
介護職、保育士、医療職などの人にも関係のある話題だと思います。
先日、隣町で 2人が相次いで脳梗塞を起こし、緊急搬送されました。
夏場はあまりありませんが、
冬の季節は 脳出血と お風呂場での心肺停止が増える時期ですので 急激な室温の変化などが無いように お湯や暖房を使って室温を上げるようにしてください。
ご近所に高齢のかたがお住まいでしたら 是非、言いふらして回ってください。
先日Neurology Nowというサイトでも
ここ50年間の脳血管障害の治療の変化が特集されており
読み応えのある内容かなと思ったら
わりとあっさりとした薄い内容だったので
私なりに思うところを綴っていきたいと思います。
現在日本で行われている脳梗塞の治療は
t-PA製剤 (tissue-plasminogen activator:組織プラスミノゲン活性化因子) )
による
血栓溶解療法です。
これは何故強力な効果があるのかと言うと
ステロイドと同じように
もともと生体内の脳にたくさんある物質を利用したものだからです。
しかしこれは発症から4時間半以内に行わなければならず
さらに
大きな血管を詰まらせるような
大きな血栓には通用しないという欠点があります。
当然、大きな血管が詰まれば
大きな障害を残します。
そこで登場したのが
脳動脈カテーテルによる血管内治療です。
カテーテルで血栓を回収してステントを留置し
血流を再開させ
血栓溶解療法で効果が無かった患者さんにも有効であることが確認されました。
しかし
これまた発症から8時間以内に行われなければならず
現状では
この治療を受けられる患者さんは10人に1人だそうです。
参考:
ストップ!脳梗塞! 見逃しやすい脳梗塞の前触れ | TREND STYLE
現代医学の素晴らしいところは
救急医療と
強力な薬剤が有効な場合です。
しかしこれも早期発見されて
適切な診断と適切な処置をしてくれる医療者にかからなければ
存在しないのと同じことです。
米国心臓協会では
脳出血の早期発見に
Face 顔の動き
Arm 腕の動き
Speech 話す言葉
Time すぐに受診
の頭文字をとって
FAST
という用語が推奨されています。
しかしこれはどう考えても
千倉町のおじいちゃんおばあちゃんには通用しないと思われます。
それどころか
FASTで覚えましょう!なんて言ったところで
日本全国どこ見ても流行しなさそうな雰囲気満点です。
先日の隣町の人が脳梗塞を起こしたことをきっかけに
しばらくの間
この頭痛は脳梗塞かなぁ?
と心配で受診される患者さんが増えました。
頭痛の治療は手技療法の専門分野ですが
やはり危ない頭痛は見逃さないようにしなければなりません。
かと言って
何でもない軽症で救急外来や病院を訪れる人は後を断たないので
無駄な受診を増やさないことにも気を付けなければいけません。
以前のブログでは医療者向けに書きましたが
今回は誰にでも覚えてもらえるように
高齢の患者さん向けに
当院で作ったパンフレットを載せようと思います。
ご自由に使って頂いて構いませんが
少しでも早期発見するために作ったものですので
免責は各自でお願い致します。
現在、救急隊で見逃しやすいのは
ろれつが回らないこと
だそうですので、その点も含めて
介護施設でお勤めのかたや医療職、整体師のかたなど参考になればと思います。
小児の治療をしていると
外傷を負って受診してくることはしょっちゅうあります。
診察室の中は
普段おもちゃで遊びながら治療している頭蓋骨治療とはうってかわって
子どもは痛みと心理的なショックですでに泣いていますので
とりあえずは近づくだけで嫌われること間違いなしです。
強引な治療は必要ないのでしませんが
診察しようにも逃げられてしまうこともあります(笑)
現在病院では
子どもが頭をぶつけた時
訴訟されるのが嫌だから…
という理由でCTを撮りまくっているようですが
生ける伝説の救急医
福井大総合診療部教授の林 寛之先生オススメ論文で2009年に結論は出ています。
Kuppermann N, et al. Lancet 2009;374 :1160-70.
Identification of children at very low risk of clinically-important brain injuries after head trauma : a prospective cohort study
鈍的頭部外傷から24時間以内に北米の25の救急部を受診した18歳未満の患者
なんと4万2412人(平均年齢7.1歳)
の調査です。
日本の研究では数十人規模の研究が多いのですが
世界的に見ると
質の低い研究
と判断されてしまいます。
その結果、2歳未満の頭部外傷についてCTをどう適用するかの考え方を図で示した。
参考:
2011冬・論文コレクション Vol.3 軽症に見える小児の頭部打撲にCT検査は行うべきか?
救命救急領域の必読論文
図5 軽症と見られる頭部外傷(GCS=14,15)に対するCT 検査適用の考え方(2歳未満)
(論文9) Lancet 2009;374:1160-70. より改編引用。「2 歳以上」については、ぜひ原著を参照されたい。
7つの条件がクリアできれば、
重篤な脳損傷であるリスクは0.02%
「こういったデータを親御さんに提示できれば、
『CTはいらなさそうですね』といった説明の材料になる」
頭をぶつけてたんこぶをこしらえた子どもは頻繁に訪れる。
「CTがない医療機関でこそ、参考にできる論文だと思う」(林氏)。
専門的な内容が含まれますが
・興奮
・傾眠
・同じ質問を繰り返す
・会話の反応が鈍い
・親のいつもと違う!
という点は誰でも参考になると思います。
このあたり小児に関わる保育士や放課後デイなどでお勤めの方がたは
是非一読して頭の片隅に置いて頂ければと思います。