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ラは藍色
ちょうど3年前、素人ながらピアノで曲作りを始めてしばらくして、自分が色聴だったことをものすごく久しぶりに思い出した。
大学時代、オーケストラ部の部室で友人や先輩たちと好きな作曲家について話していて、
私が「スクリャービンが好き」と言ったら、
友人が「彼は共感覚者だったんだよね」と言い、
その時初めて共感覚というものを知った。
みんな同じなのだと思っていたけれど、どうやら違うらしい空気が漂っていたので、「私もそう(色聴)」とはなんとなく言い出せずに、黙っていたのも思い出した。
共感覚の一つである色聴について考えたのは、その時以来。
私にとっては味覚や嗅覚などと同じような自然な感覚なので、普段気に留めることはない。
音に色を感じたところで仕事には一ミリも役に立たず、日常生活にも影響ゼロなので、自分が色聴だと意識することなどなくなっていくのは当然だろうと思う。
それが作曲をするようになって思い出したきっかけは、曲にタイトルをつけるようになったとき。
はじめの頃どうにもタイトルをつけられずにいたところ、先生から
「タイトルをつけてみるのも大切」
と言われ、とりあえず曲の識別のために色名が入った言葉にしていた。
「もしかして色聴?」
と聞かれ、そこで
「そういえばそうでした」
と思い出した。
それからは、意識して音と色からイメージしたメロディーや和音を探したりと、作曲の楽しさがぐっと増したように思う。
生まれてから一度も役に立つことがなかった感覚を、何十年も生きてきてやっと使ってあげられたことに、なんだかとても嬉しい気持ちになった。
五感についても、会社員の仕事における五感というと、最近は「音ハラ(PCキーボードを大きな音で叩く)」とか「スメハラ(体臭や柔軟剤のにおい)」とか、心地よくない側面がクローズアップされがちな気がする。(少なくともうちの会社では…)
でも作曲をはじめ音楽の世界だと、五感で感じたイメージをメロディーや和音で表現するために使えるので、心地よくて、なんというか、自分が健やかになっていく感じがする。
夜の星空をイメージした曲を作ったことがあり、「ラ」始まり一択だった。
ラは藍とか紺ぽい色だから。
そのときは静かで穏やかなイメージの曲だったので「ラ♭」がぴったりだった。(キーはD♭メジャー)
キラキラした星空にするなら、ナチュラルの「ラ」が合う。