「徒然に誘う街、中野。」
コラム:フェスティバルディレクター 三浦
4月3日(日曜日)天候 雨。
Center line art festival Tokyo 2022のClafters事前イベント「開催地探訪Clap!」の第一回目となる中野探訪は、降りしきる雨の中のスタートとなった。
11時45分に中野サンプラザ前の広場に集合。この中野サンプラザ、けっこう多くの人が「サンプラザ中野」と名前を勘違いしているようだ。「サンプラザ中野」とは80年代のバンドブームで一躍有名になったバント「爆風スランプ」のボーカリストの芸名ですね。一方、中野のランドマークである建物の名称は「中野サンプラザ」なのでお間違いのないように。(ちなみに「サンプラザ中野」氏は、後に改名して「サンプラザ中野くん」になりました。どうでもいい話ですが。)
当初は私は街歩きには参加せず、アドバイザー的な役割を果たそうかなと考えていたのだけど、イベント当日Clap!に参加する予定だったClaftersから連絡があり、体調を崩して参加ができなくなったとのことで、急遽参加することにしました。
参加できなくなったメンバーが、今回参加する唯一の女性だったこともあって、その方がおやすみとなって、男性目線に偏り過ぎるのもいかがなものかなとも思ったのでね。
ということで、前置きが長くなったけれど、歩き慣れた中野の街を徘徊します。
話せば長くなるので手短にしますが、私は20代から30代の間、10年と少し中野界隈に住んでいたので、この街はよくよく知っておりました。が、その後10年近く、東京から離れて岡山で暮らしていたので、その間に街並みも少なからず変わったなと思います。
まずは、南口のロータリーから、皆が吸い込まれてゆくサンモールを避けて、裏路地の飲み屋街を通り抜けます。メインストリートを避けて裏道を好むのが、何を隠そう、私の性分であるのです。このあたりの風景はあまり変わらないけれど、お店の入れ替わりは激しいようですね。10年前によく入り浸っていた居酒屋「俺んち」はなくなってしまいました。
路地をずいずいと進んで、早稲田通りを渡って、そのまま薬師アイロードを少しかすめてみると、この商店街の風景もなんとなく変わったような気がします。古くからある焼き鳥屋、ラーメン屋、風呂屋なんかは健在ですが、商店街の全体の印象としては、なんだろう、舗装が変わったのかな。。。少し新しくなったかなと。そんな印象でした。
水溜りに靴を濡らしながら歩いて、薬師アイロードから中野通りに出ると、そこにはアメリカンホームメイドケーキの店「Kyle’s Good Finds」があります。このお店も、昔この辺りに住んでいた時によくよく立ち寄ったお店です。大きな黒人のオジサンが、小さなケーキを売っています。発見したら、是非入店してくださいね!なかなか面白い体験ができること間違いなし。
お店の写真を撮り忘れてしまったのだけど、中野駅から中野通りを北に10分ほど歩くと左側にお店があります!
ショーウインドウでケーキを眺めていたらお腹が空いてきた。
てくてくと中野セントラルパークまで歩きながら、セントラルパークイーストにあるパンケーキのお店「j.s.pancake cafe」でランチでも食べようかなと思ったのですが、、、実はこのお店は女性に人気で、いつもお店の外に女性が列をなしているシャレオツなcafeなのです。普段なら一人でランチを食べる時に、そのような店を選ぶことはありません。はい、ほぼほぼないです。しかし、今日の街歩き取材は、冒頭にも述べたように「女性の目線がない」のです。おそらく、街歩きをしている男性陣は皆、マシマシのラーメンとか、ガッツリ定食とか、そういったお店に入っているだろうと。そう思ったわけです。(後になってその予想は、覆されるわけですが。。。)ここは私が、女性の好きそうなお店を取材するべきなのだ!と。主催者の責任感とでも言いましょうか。とにかく、そう思ったわけです。
と、いうわけで、花冷えの雨の中、お店の外で30分~40分くらい並びました。もちろん並んでいる私の前後は女性のグループのみ。私の少し後ろに並んでいた家族連れのお客さんに男性がいて、さらにその向こうにはカップル。もちろん、男性一人で並んでいるのは私しかいません。
こんな経験も、街歩き取材という名目がなければできないわけです。まあ、実践してみたら、なかなか楽しい経験ではあるけれどね。
そんなこんなを考えているうちに、店内へと案内されました。
お店のメニューはセットの組み合わせも豊富で、何を食べようかけっこう悩みましたが、パンケーキと自家製ラザニアのセットに、日替わりスープ、食後にカフェラテを注文。この日の日替わりスープはクラムチャウダーでした。
クラムチャウダーは長時間寒風に晒されて冷えたからだに染み渡り、一気にからだが温まりました。
ラザニアは焼けたチーズが香ばしく、生地とソースの絡み具合も絶妙でした。付け添えには、ポテトと、赤キャベツの酢漬けと、ドレッシングのかかったリーフレタス。パンケーキには、バターとメープルシロップという王道の組み合わせ。ふっくら柔らかく、バターの塩味とシロップの甘みが疲れを癒してくれるよう。
長く待ったのだけれど、あっという間に完食してしまいました。
食後にカフェラテで一息。ごちそうさまでしたー。
お店を出て、中野セントラルパークの公園を眺める。
今日は雨でとても寒いから、もちろん公園に人はいない。でも、人のいない公園も、趣きがあっていいなと思う。なんでだろう。静かだからかな。傘にあたる雨の音しか聞こえてこない。都会の喧騒の中にあって、束の間の静寂が心地よい。
思えばここ中野セントラルパークも、私が岡山に移住する前にはまだ存在していませんでしたね。確か警察学校の跡地かなんかで、市民開放されておらず、なんだか不可解な場所だったんだよね。。。そんな場所がこんなに気持ちのよい公園になるなんて思いもしていませんでした。10年という月日に人の手が加わると、風景は大きく変わるものなのだね。
雨宿りがてらセントラルパークサウスの2階デッキに上がってみると、ちょっとしたフリースペースがありました。なんとテーブルにはコンセントも常設されている。暖かくなったら、ここで公園を見下ろしながらパソコンのキーボードをカタカタするのも良いかもしれない。
そうこうしているうちに(あっというまに)再集合の時間が迫ってきていた。
再集合の場所に向けて歩きながら、中野の風景の至る所に巨大なクレーンがそびえ立っていることに気づく。再開発だ。
大きなところで、中野区役所、中野駅西口改札ビル、南口の商業施設とタワーマンション。
これらの都市開発から派生して、街の細々としたところにも、これから新たに人の手が加えられていくのだろうな。
10年前の景色から、少しずつ変貌を遂げている中野の街。
10年後にこの街を歩いたら、どれだけの変化に驚かされることだろう。
そんなことを考えながら、徒然なる街歩きはこれからも続く。
Center line art festival Tokyo 中央線芸術祭【ClafT】は街と人とアートを繋ぐ回遊型アートフェスティバルとして2021年にスタートしました。
フェスティバルを通して「人・地域・世代を繋ぐ、芸術・文化の創造と発信のプラットフォーム」 として、東京の中心から西へ向けて文化領域を拡大してゆくとともに、都市から自然への文化のグラデーション化を図り、緩やかに繋げてゆくことを目指しています。
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