湘南の建築士が選ぶサッシはどちらか
まずよくある比較がYKK APとリクシルサッシですが、長い間両社は凌ぎを削り切磋琢磨してその性能を上げてきたと思います。掃除のしやすさとかハンドルの形状とかも年々デザインチェンジして良くなってきたと思います。断熱性能の数値比較とかはいろんな方が細かく調べておりますが、建築士はサッシについて何をみているかお伝えしたいと思います。
窓の性能値での比較にはあまり意味がない。
窓の性能値比較は自分にとってあまり重要ではありません。なぜなら窓の種類、注入ガスの種類、ガラスの大きさ、方位、庇の有無によって大きく変わり、設計次第でどうにでもなります。つまりは窓の使い方が左右するので商品を比較しても暮らしの質には繋がらないことになります。さらには窓には眺め、通気、排気、採光といろいろな役割もあるので、それらを使いこなせる事が数値以上に窓や家の価値を高めます。
デザイン寄りのリクシル、施工寄りのYKK
これは現場では周知の事実ですが、なぜか変わらないことが一つあります。現場に搬入されたサッシを取り付けるときのことです。サッシを取り付ける時は枠を最初につけてガラス戸を嵌め込む事が多いのですが、持ち上げた時に大抵枠が歪んでしまうのがデザイン寄りの商品です。おそらく框をできるだけ細く見せようと突き詰めることで窓枠自体の剛性を弱めてしまっているのだと思います。これに関してはいつか改善するだろうと思っておりますが、いまだに現場からは同じ声が聞こえます。これは台風や暴風、豪雨などがある湘南の過酷な気象条件の防水性では防水テープに隙間などが生じる可能性もあるので枠が大きくなるほど致命的なのではないかと思います。自身の設計でも見栄え重視な場所にデザイン寄りのサッシを使うこともありますが、台風や風雨が直撃するような面には使わないようにしたりしています。それに比べて施工寄りの商品は持ち上げた時にフレームがしっかりしているので防水処理を含めて施工性がよく大工からの評判も高い。またちょっとしたことですが、施工寄りの商品は枠横についている外ビスについても木のサイディングを避けた位置になっており、無駄なカキコミがない施工性の良さがあります。
網戸の外し方や樹脂サッシの芯材にも注目
デザイン重視のサッシでは網戸ができるだけ見えない納まりになっておりますが、年末の掃除の時に取り外しがまあ大変なんてこともあります。今はどうか分かりませんがラバー枠を嵌め込むタイプの網戸などもあり、取り付けも取り外しも大変でゴムの劣化が心配なんて商品もありました。また樹脂サッシも中にスチールの補強材がある無しなどメンテナンス性や商品の耐久性も重視しています。
工務店によって掛け率は大きく違う
特にサッシは工務店によって掛け率が変わってきます。同じメーカーでも樹脂サッシが得意な工務店もあったりするのでコストも踏まえてサッシの判断をするのも重要です。流石に樹脂複合でもないアルミサッシを推してくるビルダーは避けた方が良いでしょう・・・・
自分が好きなサッシはアンダーセン木製サッシ
ちなみに自分が好きなのはアンダーセンの木製サッシです。近年の温熱基準の改正で日本のサッシからは少し性能値が落ちてしまいましたが、まずはその絶対的な雰囲気です。できるだけ框の見えないデザイン、掃除の仕方、ガラスの性能値を目指す日本メーカと違って昔と変わらない窓らしい窓の存在感は絶対です。ペラやマーヴィンなどの木製サッシメーカーが撤退した中、外部に樹脂コーティングを施したアンダーセンサッシは正しい施工を行えば腐ることなどなく、家の外観も大きく向上させてくれます。作りは若干雑ですが、日本にはないダブルハング(日本製は下のみ上がる窓のみ)が一番の魅力です。窓に格子をつられるのも魅力で、梅雨の時期には膨らんで開けにくいなどありますが木の家に暮らしていることを実感できるのでとても良いのかなと思います。最近は納期もかかるので設計では発注を含め注意が必要です。日本でも新潟の方に国産木製サッシを作るメーカーなどありますが、やはりアンダーセンに叶う味わいを出せるサッシはまだないのかなと思います。
以上ですが、皆さんの考えるサッシの比較とは少し違うところを見ていると思います。日本の家づくりはどうも性能値ばかりにいってしまいがちですが、施工性や味わいなどについても考えてみてはいかがでしょうか?