白と黒の世界では白が嗤う~映画『グッドライアー』感想
イメージはオセロ。黒に挟まれていた白が、ある瞬間一転して盤上を白に埋め尽くすー。
観る前に結構情報を見聞きしていたため、ベティ=ヘレン・ミレンが実は…ということが常に頭にあり「いつ本性が明らかに?」と、ハラハラしながら観ていました。純粋に「え?彼女そうだったの!?」と驚いてみたかったかも…と思ったのは映画館を出た後です。まあでも「ヘレン・ミレンがこんな簡単に騙されるわけないわー」とか思いそうですが。
驚きという点では、むしろ2人の周囲の人たちに対しての方がびっくりでした。「え!?この人もこっち側の人だったんだ!?」という。まさに役者揃い。周囲の人といえば、ロイ=イアン・マッケランの相棒のヴィンセント…カーソンさんじゃないですか(『ダウントン・アビー』)!やっぱり執事、いや相棒的役割が似合いますね。ラストでヴィンセントがロイのもとを訪れてくれたことで、どこか観ているこちらも安心感を抱くことができました。ロイのしてきたことは確かに罪なのだけれど、彼の受けた報いは相当なものだったので、どこか同情する気持ちもあって。一人でも彼のそばに誰かいてくれたら、勝手ながら罪悪感が薄まる気がする。まさに良心的存在…。
今って金融取引はあんな機械でやるんですか?初めて見たんですが、金融用の専用端末?どうみても大きめの電卓にしか見えない…。キーを押す音も電卓そのもので、えーと、正直安っぽい笑。これで何万、何十万ユーロとか取引されてもなあ…。
ヨーロッパが舞台の映画を観るとき毎回思うのが、歴史、特に戦争の記憶というものがまだまだ根強いのだな、ということ。私は日本史選択だったせいか、どうしてもそのあたりの歴史に疎くて、時代背景にピンとこないんですよね…。この映画でもナチス侵攻やドイツの戦況が描かれているのですが「ふー…ん…(ヨクワカラナイ)?」という感じに…。
こうした映画が今でも作られているということは、それだけ戦争の傷痕が大きかったということ、それから戦争の記憶を消してはいけない、と思っている人々が大勢いるということだと思います。こういった「負の歴史」を題材とした映画は世界で作られていますが、残念ながら日本って少ない。お堅い戦争反対映画かいかに戦争が悲劇かを伝える涙涙の映画か(そんな映画も必要かもしれませんが)。笑いとかサスペンスとか、純粋なエンタテインメントを楽しめながら戦争の悲劇性が伝わる、そんな映画があってもいいのでは、と思いました。日本だと生々しすぎて“楽しむ”ということは難しいのかもしれませんが。。。
ロイ(イアン・マッケラン)の過去のシーンで、若かりしロイと友人の2人が見分けが付かない!と焦ったのですが、なるほどそこに伏線があったか…。ロイも戦争の犠牲者と言えなくないと思うのですが、おそらくベティ(ヘレン・ミレン)の過去には、彼女が語らなかったもっと悲惨なことがあったのではないかと思ったりしたので(世界も混乱していた戦中戦後、親を失った若い娘たちが生きていくには相当過酷な社会だったであろうことは想像に難くありません)、ロイの行動を正当化はできないなー、と思った次第です。
この間の『ミッドサマー』といい、この『グッドライアー』といい、最近の映画は、というか私が観る映画はなぜか男性がかわいそう…?そしてこの後、『チャーリーズ・エンジェル』も観に行ったりしてるんですよねえ。別に私、男性を痛みつけたい願望があるわけではない…ですよ?