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なぜゲームモデルは必要なのか?

「サッカーを一言で表すと何ですか?」

この質問は、私が以前スペインのコーチングスクールに通っていた時に講師から投げかけられたものでした。当然、この質問には人それぞれ異なる解釈があり、一つの正解を持つことはできません。その当時、私は自信を持ってその質問に答えることができませんでした。

その講師の答えは明快でした。「サッカーとは、2つのチームが1つのボールを争いながらプレーする競技。ボールが1つしかない。その時点で闘いが始まり、状況は目まぐるしく変わり続ける。その中で正しい判断をしていかなければいけない非常に大変なもの。」

このエピソードは、私のサッカー観やアプローチに大きな影響を与える瞬間でした。

一方で、サッカーの中で変わらない要素も存在します。サッカーはトレンドの影響を受けやすいものです。その時々で成功を収めた国やクラブのスタイルが模範とされ、サッカーの流れが変わっていきます。例えば、FCバルセロナとスペイン代表がボールを保持するプレースタイルによって影響を与えましたが、これに対抗するためにハイプレッシャーやショートカウンターを用いるチームも増えています。また、サッカーのスタイルは絶えず変化しており、例えば2010年のトレンドから今はさらに進化していますよね。

そして将来、今の育成年代が成長した時、サッカーのスタイルは再び変わることでしょう。そのため、現在のトレンドだけを教えることは適切なのか疑問です。ポゼッションサッカーが現在の主流かもしれませんが、未来においてもそのスタイルが継続される保証はありません。

その一方で、育成年代にはサッカーの中で普遍的な価値を伝えることが重要です。国やクラブ、人種、性別を超えて共通する要素とは何でしょうか?それが育成年代の指導者に求められる課題です。

大事なことは、より「長期」「広範囲」に渡って影響を及ぼすもの、味方と繋がり、相手を見てスペースの所在を認識することです。これを教えられるかどうかが特に育成年代の指導者には大切です。

サッカーは集団スポーツであり、もっとも重要なのは戦術である。
技術、メンタル、フィジカルは全て戦術を遂行するためにある。
サッカーとは 競技(スポーツ)であり遊び(プレー)である。
プレーこそ、まさに戦術的インテリジェンスとなる。
ーフリオ・ガルガンタ(ポルトガル代表スタッフ)ー

オランダでは「1つのボール、2つのゴール、11人ずつの2チーム、制限されたスペース、2つのチームが相対してプレーする方向があり、ゲームを実行するためのルールを守ることによって成り立つゲーム」と定義されている。
ー白井 裕之氏(ゲーム・ビデオ分析アナリスト)ー

サッカーはスペースを争い、ゴールを目指す戦いです。チーム全体で共通のイメージを持つことで、判断力とスピードを高め、勝利に近づくことができます。
ー倉本和昌(世界基準の指導者育成コーチ)ー

戦術的アクションは、選手間の相互作用や対戦相手の影響によって生まれる合理的な行動です。攻撃や守備、ボールに関わるプレーなどすべてのアクションは、相手を驚かせ、打ち負かし、対抗し、中和するための問題解決行為です。戦術は、個人、グループ、チームの視点から展開され、勝利を目指すための行動計画です。将来のサッカーにおいても、この戦術的インテリジェンスが鍵を握るでしょう。

つまり、サッカーの戦術は「何をするか?」だけでなく、「どのようにするか?」、「いつするか?」、「どこでするか?」も含むものです。それは個人からチーム全体まで共有され、実行されるべきです。

黒子のバスケのように、チーム全体で連携し、空気を読みながらプレーするシーンが描かれています。このような共通のイメージを持つことで、チームは瞬時の判断を迅速に行い、戦術的な戦いを展開することができます。これはまさにゲームモデルの存在に通じるものです。

ゲームモデルは、選手たちが戦術を理解し、実践するための枠組みです。例えば、ビルドアップという言葉に対する選手たちのバラバラな理解は、共通のイメージがないことを示しています。しかし、ゲームモデルを用いることで、選手たちは統一された戦術のイメージを持ち、迅速な判断と連携が可能となります。これによってチーム全体の戦術的な知識が向上し、相手に対して優位な立ち回りができるでしょう。

未来の選手たちにとっても、サッカーのスタイルは変わるかもしれませんが、戦術的な基本原則は変わらないでしょう。それは持ち前の才能や個性を活かしながら、共通のゲームモデルを通じて統一された戦術を展開することです。そして、それは単に競技だけでなく、戦術的な知恵を活かした楽しみやアプローチでもあります。

要するに、ゲームモデルは未来のサッカーにおいても、現在の選手たちにとっても、普遍的な戦術的な指針を提供する重要なツールなのです。だからこそ、育成年代の指導者には、変わらない戦術の基本を伝え、選手たちが未来に向けても確固たる土台を持つことができるようにサポートする役割が求められるのです。

黒子のバスケという漫画あるのですが、その中でチームの選手全員がゾーンに入ってプレーするというシーンがあるのですが、僕は日本人はチーム全員で空気を読んで、相手の出方を探るプレーってできるんじゃないかと思っています。違うイメージで言うと「クラウド上で 頭の中が同期されている状態」

もっとシンプルに言うと同じ絵が描けているかと言うことなんですが、その同じ絵を描くために実はゲームモデルが存在するんですよね。

例えば、僕が「あのー、あの黒い人気のキャラクターといえば?」と聞いたら、皆さんは何が浮かびますか?

くまモン、ミッキー、バットマン、まっくろくろすけ、ゴキブリ?
つまり同じイメージが描けませんでしたね。

これが「熊本で有名なあのご当地ゆるキャラの黒いキャラクターといえば?」となると「くまモン」とでますよね。頭に浮かぶイメージを合わせるために言葉の精度をあげるんです。


別の例として例えばビルドアップって何?とみなさんが教えている選手に聞いてみましょう。おそらくバラバラな答えが返ってくると思います。と言うことは頭の中のイメージがバラバラと言うこと、その状態だといちいち味方がそこにいるかどうか毎回確認しないといけなくなる。そうするとチーム全体の判断スピードが落ちるので、共通のイメージが描けているチームと対戦すると歯が立たないと言うことになります。

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