見出し画像

パリオリンピック女子サッカーアジア最終予選日本対北朝鮮を北朝鮮側ゴール裏で応援した話。(2024.2.28)


サッカー女子北朝鮮代表が新国立にやって来る

パリオリンピック女子サッカーアジア最終予選に駒を進めたのが2次予選各グループを勝ち抜けた以下の4ヶ国。

グループA首位:オーストラリア🇦🇺
グループB首位:朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)🇰🇵
グループC首位:日本🇯🇵
グループC 2位:ウズベキスタン🇺🇿

2次予選各グループを2位通過した国の所属がグループCであることから、最終予選の組み合わせは以下のパターンで決定。

グループC 2位ーグループA首位
グループC首位ーグループB首位

北朝鮮側の新型コロナウイルスの防疫対応等で、日本に来るのか来ないのか、またアウェイ戦も北朝鮮・平壌でやるのかやらないのか、結構不安定な状態ではありましたが、何もなければ、北朝鮮女子代表チームが久しぶりに日本に来るコースではないですか……。

2017年12月以来の訪日

2017年12月に東アジアサッカー連盟のE-1サッカー選手権大会が日本で開催されました。
その際に男子代表女子代表ともに北朝鮮チームが訪日していますが、今回はそれ以来です。

2017年12月のE-1、女子は平日夕方から夜にかけての開催で観に行けなかったのですが、男子は土曜開催の試合があったので、ちょうど都合がついた2017年12月16日の中国対北朝鮮の試合を観に行きました。

北朝鮮応援団の練度の高さ

当時の北朝鮮男子代表に私が常日頃贔屓にしている水戸ホーリーホック所属の金聖基選手(当時)が参加しており、彼の晴れ舞台も観たいということで味スタに向かいました。

中国代表対北朝鮮代表。
会場の味の素スタジアム。
試合前の国歌斉唱。
味スタで北朝鮮国歌(愛国歌)を聴けて感無量でした。
北朝鮮の鄭日冠選手が直接FKをズドンと沈めて同点に追いつき、1-1のドローで終わる。すごいFKでした。

中国側も北朝鮮側もそれぞれゴール裏に応援団がいた訳ですが、北朝鮮側は本国から訪日ができない(自国民の海外旅行の難易度が高い&制裁で制限あり)ため、在日同胞の皆さんが集まって応援していました。
噂で聞いたレベルですが、Jリーグをはじめとする日本国内リーグでの応援経験がある人がコールリードをしているらしく、練度が高くて観ていて楽しかったです。

この時可能であれば北朝鮮側ゴール裏で一緒に観たかったのですが、購入時点(確か試合当日の1週間くらい前だったのではと記憶)ではチケットの扱いがなく、その後の日本代表対韓国代表の試合も観られるエリアから眺めるしかできませんでした。
いつかまた北朝鮮代表が来る日があれば、今度こそ一緒に応援したいと思っていましたが、その夢は約7年後に叶うことになります。

アウェイエリアも一般販売対象やったね!

チケット販売案内ページに記載の試合当日の新国立競技場の席割り図。

北朝鮮側応援団が陣取るゴール裏席は南サイドスタンド側カテゴリー3アウェイエリアとのことで、チケットJFA、チケットぴあ、いずれのプレイガイドでも一般販売対象です、本当にありがとうございました。
一般販売は2024年1月15日(月)18時から。
その日は、販売開始時間になったらすぐに身動きが取れるように、自宅で仕事をしながら、18時を待ちました。

勝利が約束された購入結果確認メール。

元々Jリーグのチケットを買うためにチケットぴあのアカウントを持っていたので、チケットぴあサイトで買いました。
販売開始時間周辺はサイトが混雑するのが世の常ですが、そこまでストレスを感じずに購入成功、これはもう勝利が約束されています。

北朝鮮側応援団は朝鮮総連や朝鮮学校の在日同胞の皆さんがこぞってチケットを購入するので、すぐに売り切れるのかなと思っていたのですが、そうでもなく。
とはいえ、試合が近づいてくるとさすがに完売でした。
反対に日本側、特に応援団が陣取るゴール裏席・北サイドスタンドカテゴリー3は試合週になっても北朝鮮側と違ってあまり売れておらず、日本サッカー協会が席を埋めてほしいと呼びかける始末で草でした。
(さすがに試合直前には北朝鮮側の売上枚数を超えていましたが、ホームなんだからしっかりして、どうぞ)

ちなみに男子代表の方のチケット販売はというと

女子代表の試合の1ヶ月後(2024年3月21日)に男子代表の日本代表対北朝鮮代表の試合が予定されていましたが、発売開始当日15分で北朝鮮側ゴール裏席は完売していたそうです。
在日同胞の皆さんも北朝鮮男子代表ももちろん応援するけれど、男子日本代表を現地で観たいという話が結構あって、そらすぐに売り切れますわな、と思った次第です。

日本側はもちろん、北朝鮮側のチケットもすぐに完売。こちらの試合は別の用事があって行けませんでした。
日本人はもちろんのこと、在日同胞の方でもチケット難民になっているのを見かけたので、男子代表やべえとなった記憶。

ねんがんの北朝鮮代表をゴール裏で応援

入場〜公式練習

試合当日2月28日、会社を出てから新国立へ向かうとキックオフの18時に到底間に合わないので、自宅で仕事&繰り上げ勤務として、仕事を終えたらすぐに新国立に向かえるようにしました。

お久しぶりの新国立競技場。この試合の1週間前にACLのヴァンフォーレ甲府対蔚山現代FCの試合を観に来ていたので、実はあまりお久しぶりではなかったです。
日本代表のホーム戦なので、北朝鮮代表にとってはドのつくアウェイ。日本もパリオリンピックへの出場権がかかった大事な試合なので、こんな感じでコンコースから雰囲気を高めていました。

北朝鮮を応援する人が通る入場口を抜けて、コンコースからスタンドへ。
新国立競技場はコンコースからフィールドへの見通しが良い構造なので、青々とした芝生がよく見えます。(最近できたスタジアムのトレンドっぽいです)
普段応援していないチーム、ましてや北朝鮮女子代表チームの応援なので、コンコースからスタンドやフィールドを眺める行為もなんだか新鮮な感じがします。

この日は16時半開場でしたが、仕事の関係で到着したのは17時過ぎ。
北朝鮮側ゴール裏はすでに応援の人が結構いて、どこに座ろうかと思案。
ゴール裏ど真ん中はさすがに気が引けるので、中心から少し離れた場所に席を確保しました。

両チームの公式練習開始直後の様子。北朝鮮側ゴール裏も結構な人出。

公式練習開始前から中心部では応援が始まっていました。
おそらくは関東近郊各地から集結した朝鮮学校や朝鮮大学校の生徒・学生が中心となって元気に応援していました。

日本のインターネットキッズ(あいつら何かと言えばこれしか知らない、ゴミ)の間でも有名な「攻撃戦だ」をはじめとした北朝鮮ソングと、合間に入る「필승조선(ピルスンチョソン-必勝朝鮮)」のコールを中心に応援を組み立てていました。

これもおそらくですが、朝鮮大学校の学生でサッカー応援を統率した経験のある方が、この試合でも応援をリードしているようで、2017年12月のE-1応援の時と同様によく統率されていました。

公式練習からやりきる北朝鮮側ゴール裏。
新国立競技場の大型ビジョンに映し出される両代表のチームエンブレム。

キックオフ直前のセレモニー〜キックオフ

キックオフ直前に場内の照明を暗転させて、ドローンショーをやっていたようですが、北朝鮮側ゴール裏からはまったく見えず。
まあ、ドがつくアウェイなので、そんなもんですよねー。

北朝鮮側ゴール裏からは見えなかったものの、大型ビジョンにはドローンショーの様子が映っていました。エッフェル塔のイメージでしょうか。

場内が暗転するので、日本側はスマホのライトを点灯させたり、ペンライトの持ち込みもOKだったので持っている人はペンライトを点灯させたりしていました。

ほう……。
そっちがそうなら、こちらも同じようなことをやるだけです。

直前に参加したミリオンライブ10th Act-4用に使ったアイマスライブレギュレーション対応ペンライトと、異次元フェス用ペンライト。

北朝鮮側ゴール裏でペンライト点灯させてたの、多分私だけだったと思います(笑)

会場が暗転しているので、北朝鮮国旗「紅藍五角星旗」の青と白と赤がよく映えて見えたのが印象的。
両チームのメンバーと審判団が一列に並ぶ。
北朝鮮女子代表チームメンバーとエスコートキッズ。

北朝鮮女子代表チームをエスコートした子供たちは関東近郊でサッカーをしている在日同胞の子供たちとのことで、本国の代表選手と大舞台に立てたことはとても良い経験になったと思います。

国際試合なので、北朝鮮と日本の国歌斉唱もありますが、当然北朝鮮の国歌を全力で斉唱しました。とても感動しましたね。
北朝鮮本国の昨今の対南敵視政策の関係で、国歌の歌詞が2月に一部変更されたのですが、北朝鮮本国でも国外でも大人数で斉唱するのは初めての機会かと思われます、おそらく。

NHKのニュース記事にもある通り、「三千里の美しい我が祖国」という元々の歌詞が「この世界美しい我が祖国」に変わったのですが、変更直後ということと、本国からも特に指示のようなものはなさそうな時期でした。
在日同胞の皆さんの間でも混乱があったようで、変更前の歌詞で斉唱している方が多かったような気がします……。

試合中〜試合後

基本的にいつも贔屓にしている水戸ホーリーホックを応援している時と同じように試合中はフィールドを見ながらリードに合わせて応援していました。
リードに合わせず観戦している在日同胞の皆さんも、基本的にはJリーグの試合を観ているのと同じような感じで、歓声をあげたり、惜しいシーンに悔しがったり、判定に文句をつけたり笑、という感じなので、普段贔屓にしている水戸ホーリーホックの応援席で観ている感覚で応援できました。

前半25分過ぎ。日本のFKから北朝鮮が失点する直前(と思われます)。
北朝鮮女子代表チームのリ・ユイル監督。かなり優秀。前日会見のレポートは以下の記事に詳しいです。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/179975be70756abc39ddc5cd9ad3490b874e3436
「“惹きつけた”女子サッカー北朝鮮代表監督の巧みな“会見術” 笑顔、的確な回答、失言には威圧」も"

前半は1失点で折り返し。
終了間際にゴールが決まった!と思ったら、日本のGKがギリギリ掻き出すプレーで阻止され、周囲からは「VAR!VAR!」という声が飛んでいました。(この対戦カードでは第1戦、第2戦ともにVARは非対応)

ちなみに第1戦、北朝鮮ホーム扱いとはいえ北朝鮮側の事情で中立地開催、しかもサウジアラビアという厳しい環境の中で善戦のスコアレスドローでしたが、やはり日本ホームということで先行されてしまいました。

ハーフタイム中にコンコースの様子を見てみたのですが、在日同胞の皆さんで活気に満ちていました。
こういう機会がないと同胞の皆さんが一同に会するということもなかなかないと思います。
久しぶりに会う人同士、日本でいうところの同窓会・県人会的な雰囲気になっていてとても良かったです。
(このあたり、ACLでヴァンフォーレ甲府を応援するために新国立に集った皆さんが山梨県人会の集会みたいな雰囲気になっていたのととてもよく似ていました)

そういえば、応援用グッズで赤色のスティックバルーンが配布されていたのですが、私は配布場所が分からず入手できず。
前半は拍手・手拍子は頭の上、と贔屓の水戸ホーリーホックで躾られた応援スタイルで応援していましたが、ハーフタイム中に近くにいらっしゃった同胞の方から1本分けてもらいました。
その節は大変お世話になりました。ありがとうございます。

北朝鮮側ゴール裏で配布されていた応援用のスティックバルーン。
「이겨라! 조선(イギョラ!チョソン-勝て!朝鮮)」の文字と、1日で千里を駆けるという朝鮮半島の伝説の馬・千里馬(チョルリマ)がデザインされています。

さて、後半。
先行され、2失点目も喫してしまうものの、北朝鮮側ゴール裏の応援の熱は冷めません。
わかるわかる、Jリーグでも先行・突き放されてから熱くなるもんね。

2失点目から10分も経たないうちに、1点返して北朝鮮側ゴール裏の雰囲気は最高潮に。
ここから押せ押せムードで、絶対に追いついて延長に持ち込んで、あわよくば逆転してやる、という雰囲気でした。

1点を返して北朝鮮側ゴール裏は最高の雰囲気に。みんな同点に、そして逆転することを信じて熱く応援していました。
後半85分ごろ。スコアは2-1で果敢に攻勢をかける北朝鮮女子代表。

しかしながら、現実はドラマのように進まない。
日本がリスク管理を徹底して守勢に回る中でも時間を使いながらタイムアップ。

タイムアップ直後の北朝鮮女子代表メンバーと日本女子代表メンバー。

2-1で日本が勝利し、パリオリンピック本戦出場を決定。
日本側が輪になって喜ぶ姿と、悔しさがにじむ北朝鮮側の姿が対照的でした。

試合終了後に北朝鮮女子代表メンバーに激励の声援を送る北朝鮮側ゴール裏。

「あともう少しだったよなあ」という声や、「なんだかんだで日本は強かったなあ」という声、いろいろな声が聞こえてきました。
この試合に勝てば本戦に出場できたので、ここまで来て負けてしまうのはやっぱり悔しいです。

試合終了後には、ここまでやってきた北朝鮮女子代表メンバーに労いの意を込めてゴール裏から「힘내라!조선(ヒムネラ!チョソン-がんばれ朝鮮)」のコールが送られていました。
힘내라 조선! 힘내라 조선! 힘내라 조선!

私は翌日出勤しないといけなかったので、長居せずに帰宅したのですが、場内を1周する日本女子代表メンバーに、北朝鮮側ゴール裏からも大きな拍手が送られたとのことです。
北朝鮮と日本の関係、また昨今の政治状況や国際情勢等、いろいろ難しい問題が多いですが、バチバチぶつかり合ったあとにこういうやりとりが両国サポーターの間であったことは救いだなと思います。

そういえばゲーフラを作りました

이겨라★조선(イギョラ★チョソン-勝て★朝鮮)」

Jリーグに限らず、サッカーの応援グッズでおなじみのゲートフラッグ(ゲーフラ)ですが、今回の試合に向けて作ってみました。
応援ワードはシンプルに「이겨라★조선」として、北朝鮮国旗「紅藍五角星旗」の青と白と赤をモチーフに。

コロナ前はよくゲーフラを作って遊んでいました。
コロナ後はJリーグの応援制約もあって、しばらく作っていませんでしたが、久しぶりに火がつきました。とても楽しかったです。

次は北朝鮮の国内リーグを見てみたい

7年越しにサッカー北朝鮮代表チームを現地で応援するという夢が叶いました。
次は北朝鮮の国内リーグの試合を現地で応援したいなあ。
昨今はいろいろあるので、これも叶えるのが難しい夢だと思いますが、いつの日にか……。

いいなと思ったら応援しよう!