皆さんもありますよね、北朝鮮で軽く「死のようなもの」を感じた瞬間、という話。
はじめに
上記記事で、北朝鮮観光5日目の夜から6日目の朝にかけてひどい目に遭ったと言及していますが、今回はその話も含めた記事になります。
「普通の国」ではない北朝鮮
前回の記事で、普通に北朝鮮に行って普通に観光して普通にご飯美味しかったです!みたいな能天気な感じで書きましたが、北朝鮮は「普通の国」ではないので、渡航自体に大きなリスクがあります。
加えて北朝鮮とは日本は国交がなく、現地在外公館もないので、何かトラブルが起きてもすぐに対応ができないという点も踏まえて、日本国外務省が北朝鮮全土への渡航自粛を要請していることは重々承知しています。
渡航自体が大きなリスクというのが顕になった案件で有名なのは、2016年1月に発生したアメリカ人のオットー・ワームビア氏の拘束・死亡帰国の件ですね。
彼は宿泊先のホテルで政治スローガンポスターの窃盗未遂ー北朝鮮当局の理論では「体制への挑戦・反逆」と捉えられるーをやらかしたようですけど、国内の人間だろうが、国外からの観光客だろうが、「体制への挑戦・反逆」は彼の国では最も重い罪になることは覚えておきましょう。
基本的にガイド氏の言うことを聞いて、余計なことせずおとなしく観光していれば、拘束されたり死んで帰国したり、という極端なことにはならないです。
ガイド氏も北朝鮮側の窓口として、出国までの間、平穏無事に過ごせるようにしてくれますので。
皆さんにもおなじみ、北朝鮮で軽く「死のようなもの」を感じた瞬間ランキング
それではここから、皆さんにもなじみ深い北朝鮮で軽く「死のようなもの」を感じた瞬間ランキングのお時間です。
まあ、「死」というのはちょっとオーバーなところもあり、「えっ、なにそれこわいんだけど」から「あっ、やらかしたヤバい」、そして「これ2度と日本の土踏めんのやろか?」まで濃淡があります。
とはいえ、北朝鮮は「普通の国」ではなく、やらかしが「死」に繋がる可能性がゼロではないので、普段よりも「死」の影を感じました……。
第4位 深夜、羊角島国際ホテルの廊下にて……(2017年2回目渡航時)
2017年1月31日〜2月4日の2回目の渡航で宿泊したのが羊角島国際ホテル。
前述のオットー・ワームビア氏の案件が発生したのもこのホテルなので、少し緊張しながら宿泊したのを覚えています。
2度目の北朝鮮渡航最後の夜、時間は22時頃だったと思います。ホテル1階にある売店に水を買いに行こうと、部屋を出た時のこと。
(若い女性の声で)「もしかして、日本人の方ですか?」
平壌の夜に、ガイド氏以外に、日本語を話す人?
北朝鮮に渡航する日本人って年間に数百人程度だっけ?
薄暗く人気のない静まり返った廊下でいきなり日本語で声かけられるシチュエーションこえーんだけど!!!
廊下の向こうの部屋で顔を出しているのは、声の通り若い女性でした。
少し勇気を出して話をしてみると、在日中国人の方で、里帰り中国旅行の前に北朝鮮にも立ち寄ったとのこと。
羊角島国際ホテルでヨーロッパ系の人はよく見かけたけれど、アジア系、それも日本人っぽい人は見かけなかったので声をかけたとのこと。
とりあえず何かしらの理由で北朝鮮当局からお声がかかった(意味深)というシチュエーションではなかったと分かって一安心。とはいえまだちょっと怖いけど。
このあと時間あれば上層階にあるバーで少し飲みませんかと誘われましたが、翌朝早かったのと、得体の知れなさが勝ったので、お断りしてしまいました。
今思えば、提案に乗っても良かったかな……。
第3位 人民大学習堂の外で写真を撮ったら……(2017年2回目渡航時)
北朝鮮最大の図書館・人民大学習堂を見学し終わった時のこと。
建物から出てちょうど目の前に金日成広場が広がっていたので、なんとなくそちらの方向に向けてカメラを向けて写真を撮ったところ……。
保安員「ピピーッッッッッッッッ!!!」
ガイド氏「やめてください!!!」
どうやら政府機関や朝鮮労働党関係の施設が写り込む角度だったらしく、それに気づいた保安員(各国での警察官に相当)が制止の笛を吹いたのでした。
「やべ……やらかした……」と思いましたが、ガイド氏がいたので特にお咎めなく済みました。
後で何かあってもよくないので、ガイド氏の指示に従って撮影した写真はすぐさま削除。
軍関係施設や建設現場の撮影はNGという頭はあったのですが、有名観光地である人民大学習堂や金日成広場なら大丈夫かなと少し油断していましたね。
北朝鮮といえど、撮影NGスポットはそこまで多くなく、制限だらけで何も撮れないという訳ではないですが、判断に困るようであればガイド氏に相談した方が無難です。
南浦で軍関係施設を撮影していたということで、一時拘束されその後国外追放になった日本人もいますのでね……。
第2位 出国手続で……(2017年2回目渡航時)
北朝鮮へ出入国するルートとしては、北京から空路または鉄路で平壌入りするのが一般的です。
空路で出入国する際に多くの人が利用するのが、平壌北郊にある平壌国際空港。
チェックインカウンターで持ち出し荷物の検査を受けてから預け入れ、ガイド氏に6日間親身にお世話をしてくれたお礼を伝えて、いざ出国手続カウンターへ。
パスポートと観光証を出国審査官に提出して、制限エリアへのゲートをくぐるだけ。
……くぐるだけ。
……なんか審査官の表情が険しい。
奥にいる別の審査官と相談みたいなことを始めたぞ。
えっ……これ何かやらかして出国できないパティーンですか……。
かれこれ5分くらい話し込んでるんですけど……。
カウンター外で眺めていたガイド氏もさすがに心配してくれて、カウンターまで来て審査官と会話してくれました。
何を伝えてくれたのかは分かりませんでしたが、ガイド氏のおかげもあって出国手続を無事通過。
特に大きなやらかしはなかったと思うのですが、何がネックになったのか今も分かりません。
ガイド氏は観光客の監視役という役割ももちろんありますが、観光客が北朝鮮を無事に出国するまでトラブルに巻き込まれないように守ってくれる存在ということを、第3位のエピソードとともに改めて感じました。
みんなもガイド氏の言うことをよく聞いて北朝鮮を観光しましょう。
第1位 平壌高麗ホテル、深夜、吐き気と悪寒と、ゴキブリと……(2019年3回目渡航時)
2019年5月29日、楽しかった開放山ホテルでの北朝鮮ソングカラオケ大会を終えて、平壌高麗ホテルに戻った24時過ぎ。
何やら体の調子がおかしい……。
あれかな、調子に乗って俺たちの大同江麦酒を飲みすぎて悪酔いしちゃったかな……。
とりあえず、たくさん水を飲んで横になれば落ち着くでしょう……。
結論から言いますと、朝方5時まで吐き気と悪寒と、そして部屋になぜかいたゴキブリと戦う羽目になりました。(真顔)
外国なので生水は飲まずペットボトルの水を飲むように、また胃腸薬も持参して、ある程度備えていたつもりでしたが、ダメでした。
トイレで便器を掴みながら吐き気の中で考えたのは、何が原因でこうなったのか、ということ。
他にも原因食材があるかもしれませんが、思いついたのはこのあたりでした。
さて、時計は25時を回り、そろそろ寝ないと明日朝早いのに間に合わん、と具合悪い中ベッドに向かおうとしたら……。
はい、どう見ても元気に動き回るゴキブリです。
本当にありがとうございました。
最近、北朝鮮にゴキブリはいるのか?という大激論をTwitter上で見かけた記憶があるのですが、いましたよ、平壌高麗ホテルに、日本でも立派だなあと思うレベルの大きさのやつが。(泣きアニメ)
放置するか?と思いましたが、元気に動き回るタイプのやつで、ベッドまで来られたらたまらんと、駆逐することに。
体調良い時ですら嫌なのに、なんで泣きゲロしながら新聞紙持って、深夜の平壌でヤツと戦わなければならんのか。(真顔)
苦闘10分、ヤツが元気で私は死にそうで仕留めるのに苦労しましたが、なんとか駆逐に成功。
これでようやく横になれると思ったのも束の間、吐き気にプラスして悪寒がやってきて、全然眠れないという地獄でした。
私、食あたりを起こすと発熱と過呼吸を起こすことが多いのですが、まさにそれでした。
運良く過呼吸までには至らなかったのですが、とにかく寒くて寝られず、クローゼットの中にしまってあった毛布を全部引っ張り出して頭から被って耐えてました。
息も絶え絶えになりながら、翌5月31日の朝は根性で準備をして、なんとか平壌国際空港に辿り着き、6日間お世話になったガイド氏と別れの記念撮影を頑張りました。
今改めてガイド氏との写真を見返すと、表情が死んでて草しか生えません。
帰宅後、日本で留守を守っていたこの話を妻に伝えたところ、指さされて大笑いされたことを付記しておきます。
みなさんも北朝鮮では食あたりとゴキブリに気をつけよう!
おわりに
と、ここまで読んできて、「死」というよりは、ただのおまえのやらかし話 in 北朝鮮じゃん、と思ったあなた、大正解です。
こうやってまとめてみると、深刻度はそこまで高くないような気がしますが、実際にその場面に遭遇するとやっぱり軽く「死のようなもの」を感じます。
とはいえ、タイトル詐欺みたいな感じですみません。
ただ、やらかしレベル的には平壌高麗ホテルのロビーに設置してあった植木鉢とホテル模型をぶち壊した挙句、補填費用を払わずにダンマリをキメていた犬にも劣る慶應大&東海大のアホ学生よりはまともだと思います。
ちなみにこの犬にも劣る慶應大&東海大のアホ学生を担当していたガイド氏、私の3回目の訪朝時に担当をしてくれたガイド氏でした。
アホ学生のせいで、余計な仕事と心労を増やされたガイド氏には同情の念を禁じ得ません……。
おしまい。