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地中に熱を”貯蓄”、夏の暑さを冬の暖房に、冬の寒さを夏の冷房に活用する技術

建設コンサルタント会社 中央開発は、再生可能エネルギー普及促進の一環として、帯水層蓄熱システムの研究開発を行っています。

この事業では、どのような取り組みをしているのか?そしてどのような価値を提供しようとしているのか…?
現地を訪問し、担当者に直接お話をうかがいました!


帯水層蓄熱事業の目的を教えてください!

前田: 帯水層蓄熱は、地中熱利用技術のひとつです。
地中の温度は地下10~15メートル以上の深さになると、年間を通して温度が一定になり、地下水流れが遅い場合、ほぼ年間平均気温から+1℃程度になっています。そのため、地中の温度は、暑い夏では涼しく、寒い冬では暖かくなります。この温度差を空調などに利用するのが一般の地中熱利用技術ですが、帯水層蓄熱は、この温度差に加えて、冷暖房の排熱を季節を超えて帯水層に蓄えて利用することで、冷暖房に必要なエネルギーをさらに減らすエコな取り組みです。

どのような業務を行うのでしょうか。

前田: 主に、帯水層蓄熱システム(ATES)の導入可否や、導入した場合の周辺地盤への影響の評価などを支援するコンサルティングを行っています。ATESは、冷暖房による排熱を、地下水を多く蓄えた地層(帯水層)に蓄熱して利用することで建物の冷暖房を効率的に行う技術で、省エネルギー/CO2排出削減/ヒートアイランド現象の緩和策として期待されています。

これまでどのような事業に携わりましたか。

前田: 例えば、大阪市域における地盤環境に配慮した地下水の有効利用に関する検討会議については、平成27年度の第1回検討会議から現在まで参画しています。これをきっかけとして、平成30年度環境省委託事業「帯水層蓄熱のための低コスト高性能熱源井とヒートポンプのシステム化に関する技術開発:関西電力、三菱重工サーマルシステムズ、森川鑿泉工業所、大阪市立大学(現大阪公立大学)、大阪市」などに協力し、令和6年度から稼働しているうめきた2期地区へのATES導入支援においては、地下水位変動および沈下解析から維持管理のためのモニタリングまで携わっています。

現在は、どのような業務に携わっているのですか?

前田: 愛知県安城市での、帯水層蓄熱システム熱源井戸設置工事を行っています。愛知県に本社を構える愛三工業株式会社様が安城工場隣接地に新工場を建設するにあたり、中央開発は大規模帯水層蓄熱空調システムの導入支援を行い、環境配慮型工場の実現に協力しています。

具体的には、どのような技術を提供しているのですか?

前田: ATESでは1対の井戸を設置して、一方の井戸から汲んだ地下水の熱だけを利用して、もう一方の井戸に100%戻すこと(全量還水)を基本としています。このため、ATES実装のための井戸掘削では、「リバースサーキュレーション工法」という手法を採用し、帯水層の透水性や井戸の還水性能に悪影響を与えるベントナイトを使用せずに、堀削を行います。井戸掘削の際には、掘削泥の粘度やpHを管理し、水圧のバランス調整を行い、掘削孔の安定を保つなど、施工時の技量が重要な技術です。また、この方法では、掘削と同時に地層の詳細な情報が得られるため、これをもとに帯水層にぴったり合ったスクリーンを設け、地下水混合を防ぐための不透水層の確実なシールを行うなど、高性能な井戸の構築が出来ることも大きなメリットです。

新入社員(画像右)に業務内容を説明する前田(画像中央)

前田さんが目指すビジョンについて教えてください。

前田: 国内でATESを広く普及させたいと願っています。先ほどお話ししたリバースサーキュレーション工法で用いる機械は、現在国内で1台しか所有していませんので、新たに機械を作って将来的な事業継続を行いたいと考えています。現機械の掘削効率向上などの増強を図りたいですし、費用も高価なので…。課題は多数ありますが、ATESを普及させるためこれからも日々業務に取り組みます!


プロフィール

前田 直也
(西日本事業部長兼事業本部重点・開発事業担当兼関西支社長兼神戸支店長兼大阪南営業所長)
1993年入社。入社以来、関西支社にて地盤調査を中心に様々な業務を担う。2015年から帯水層蓄熱事業に携わる。2019年に関西支社副支社長兼技術部長兼西日本営業部長に就任、そして2021年に現役職に就任し、関西支社を束ねている。

※所属・役職は執筆当時のものです。

編集: 中央開発(株) 経営企画センター

https://www.ckcnet.co.jp/