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[MLB]ローカル放映権の話
プロスポーツの収益を語る上で、放映権料の話を無視することはできないでしょう。3年前に行われたワールドカップにおいて、Abema が放映権を獲得するために、200億円以上もの莫大な放映権料を支払ったとも言われています。
このようにスポーツにおける放映権料が大きく高騰していることは、なんとなく知っている人も多いのではないでしょうか。
そして放映権料の高騰で利益を得ているのは MLB も同様です。MLB がFOX やESPNなどの全米テレビ局と結んでいる全米放映権料だけでも年間およそ20億ドル(3,000億円)ほどの収入になります。加えて、各球団が地元のローカルテレビ局と契約しているローカル放映権料も合わせれば、放映権料だけで莫大な収益を得られるのです。
しかしながら、ローカル放映権料については先行きが不透明な状況にあります。
今から約2年前、アメリカでスポーツ中継を行うバリースポーツ(Bally Sports) を運営するダイヤモンド・スポーツ・グループ(Diamond Sports Group)が破産申請を行ったことが話題になりました。
このニュースによって、MLBのローカル放映権収入の先行きが不透明であるという話も広まっていったように思います。
バリースポーツ が 破産申請から脱却し、ファンデュエル・スポーツ・ネットワーク(Fanduel Sports Network)へと名称を変えた今、ローカルテレビ放映権料はどうなっているのかを見ていきたいと思います。
(自分が気になることについてまとめただけなので、あまり綺麗な流れではありません)
ローカル放映権料とは
MLB球団は、自チームの試合を地元テレビで放送する権利であるローカル放映権を地元のテレビ局に販売しています。そして放映権を得たテレビ局は、Xfinity や Comcast などのケーブルテレビプロバイダーを通じて地元の住民に向けて試合を放送するのです。
(仕組みは正直私もよく分かってませんので、なんとなくで良いです)
放映権契約は複数年契約がほとんどであり、ドジャースの25年83.5億ドルや、ヤンキースの20年57億ドルを筆頭に多くのチームが10年以上の複数年契約を結んでいます(いました)。
各球団の契約内容はここから
一局との独占契約
つい2年前まではほぼ全てのチームが1つのケーブルテレビ局にローカル放映権を独占的に販売する方式をとっていたと考えられます。
契約する局を1社に限定することで、テレビ局は試合の独占中継が可能となり、より多くの視聴者を取り込むことができます。
一方でMLBチーム側は、1社との独占契約にすることでテレビ局間の価格競争を引き起こし、放映権料を最大化させることができると考えられます。
この独占放送を守るために、MLB が提供しているサブスクリプションサービスである MLB.TV も、地元チームの試合を視聴することができない、ブラックアウトを導入しているのです。
このように独占契約には双方にメリットがある契約だからこそ、MLBにおいては主流の契約形態だったわけです。(ファンにとっては迷惑でしょうけど)
放映権料の規模
MLB は売上に占めるローカルテレビ放映権料の割合が高いです。
2022年度におけるローカルテレビ放映権料の割合は、MLB は23% だったのに対し、NBA は13%、NHL は12%でした。(NFL は1%未満)
MLB はレギュラーシーズンが162試合あり、NBA や NHL の2倍試合が行われます。ほぼ毎日試合の中継が行われる MLB は、ローカルテレビにとって非常に価値があるコンテンツなのは間違いなさそうです。
一方でチーム別に見ると、ローカルテレビ放映権収入についてはチームごとに差があり、1位のドジャースと最下位のブルワーズでは1億6,300万ドルも差が開いています。(下記図より)
市場規模が大きく居住者が多いビッグマーケットのチームでは放映権料は増えますし、スモールマーケットのチームでは放映権料は少なくなってしまうのです。
各チームのローカル放映権料
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MLB Trade Rumors をもとに作成
数字は22年または23年のもの
ローカルテレビ放映権料の棒グラフ
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MLB Trade Rumors をもとに筆者作成
数字は22年または23年のもの
ローカル視聴率
ローカルでのMLB中継の視聴率は、極めて好調です。
2024年シーズンは、 MLB チームがある25の市場のうち20市場においてローカルでのケーブルテレビ視聴率1位を記録。さらに14市場においてローカルでのテレビ視聴率1位(ケーブルテレビに加え、地上波・衛星放送も含む)を記録しました。(ゴールデンタイム時)
MLB が地元で根強い人気を誇っていることが分かると思いますし、地元の視聴率が高いことも RSN を筆頭とするローカル放映権が MLB で特に成長してきた理由の1つではないかと思います。
ケーブルテレビの衰退と動画サブスクサービスの隆盛
さてローカルにおいて MLB は人気であるという趣旨を書きましたが、実はアメリカにおいて、ケーブルテレビ視聴者数は減少の一途をたどっているのです。
アメリカ全土におけるケーブルテレビなどの有料テレビの加入者数は、2019年の8,400万人から、2023年には5,800万人へと大幅な減少を記録しました。
この理由としては、Netflix などの動画サブスクサービス(ストリーミングサービス)の普及が背景として挙げられているかと思います。動画サブスクサービスの躍進により、ケーブルテレビは視聴者を失っていったのです。
そしてケーブルテレビが中心であったMLBの地域スポーツネットワークも、このトレンドにあらがえず、ケーブルテレビ加入者数の減少に悩んできました。
一例として、シアトル・マリナーズが保有・試合中継を行うケーブルテレビ局 ROOT SPORTS への加入者数は、2014年の330万人から、2024年には120万人と200万人以上減少しました。現在マリナーズは総年俸をかなり制限していることから、加入者数減少によるダメージを受けているのでしょう。
(マリナーズは他にも事情があるが、後述)
このようなケーブルテレビ衰退の流れにおいて起こったのが、ケーブルテレビ局のバリースポーツを運営するダイヤモンド・スポーツ・グループの経営破綻でした。
ダイヤモンド・スポーツ・グループの経営破綻、そして復活
2023年2月、当時MLB14チームのローカル放送を担当するテレビ局であるバリースポーツを運営するダイヤモンド・スポーツ・グループが破産申請を行いました。これにより、バリースポーツと契約しているチームは収益面で大きなダメージを受ける恐れが出てきたのです。
特にMLB球団はローカルテレビ局からの放映権収入への比重が高く、被る損失は大きなものでした。その一例としてサンディエゴ・パドレスは、シーズン中に銀行から5,000万ドルの借り入れを行っており、財政面が特に不安視されていたと思います。
ダイヤモンド・スポーツ・グループは、2019年にバリースポーツの前身であったフォックス・スポーツ・ネット(Fox Sports Net)を96億ドルで買収し、その際に多額の借り入れを行っていました。ですが、前述したケーブルテレビ加入者の減少に伴い、資金繰りが厳しくなったことが破産の要因になったとされています。
破産したダイヤモンド・スポーツ・グループは、サンディエゴ・パドレスとアリゾナ・ダイヤモンドバックスとの放映権契約を途中で終了させるなど、再建に向けて歩みを進めていました。(当然、MLB 側はこの対応を良く思っていないようですが)
そしていろいろあって、ダイヤモンド・スポーツ・グループは破産から復活することになるのです。
破産からの復活
2025年1月、およそ2年の時を経て破産からの脱却に成功しました。90億ドル以上抱えていた負債も2億ドルにまで減らし、財務健全性もある程度確保されたと見て良いでしょう。
再編にあたって、以下の名前が変更になりました。
テレビ局「バリースポーツ」→「ファンデュエル・スポーツ・ネットワーク」(Fanduel Sports Network)
会社名「ダイヤモンド・スポーツ・グループ」→「メインストリート・スポーツ・グループ」(Main Street Sports Group)
ややこしいですね
再編にあたって最も大きかったのが、アマゾンとの業務提携でしょう。ファンデュエル・スポーツ・ネットワークと放映権契約を結んでいるチームは、アマゾン・プライム・ビデオでも試合をローカル放送できるようになるそうです。アメリカ国民1億8,000万人が加入しているとされるアマゾン・プライムを抱える大企業と契約したことで、超大型の動画サブスクサービスでの試合中継という大きな武器を手に入れました。
メインストリート・スポーツ・グループへと再編を遂げた要因は、動画サブスクサービスに力を入れるようになったことで、ケーブルテレビ偏重からの方針転換に成功したことが大きいでしょう。
破産後のMLB球団の動き
「メインストリート・スポーツ・グループ」へと再建を果たしたとはいえ、1度は破産しているため、いくつかのチームは「メインストリート・スポーツ・グループ」と袂を分かつことになります。MLBでは14チームが旧メインストリート・スポーツ・グループと契約を行っていました。破産後のチームの動きとしては、
① MLB.TV での中継を行うチーム
②「メインストリート・スポーツ・グループ」と契約を継続したチーム
などがあります。
① MLB.TV での中継を行うチーム
メインストリート・スポーツ・グループと契約を結ばず、MLB が放映権を買取ったパターンです。
SD パドレス、ARI ダイヤモンドバックス、CLE ガーディアンズ、MIN ツインズの試合がMLB.TVで中継され、動画サブスクサービスやケーブルテレビなどで視聴できます。
デメリットは放映権料が保証されていない点でしょうか。契約者数によって収入額が変動するため不安定です。テレビ局と契約していれば、契約者数にかかわらず一定額の放映権料を受け取れていたわけで、それが無くなったことで収益の安定性に不安が生じました。
一方で、試合を視聴可能な世帯数は大きく増加します。前述したように、MLB.TV では地元テレビ局の独占中継を可能にするために、ブラックアウトが敷かれており、地元チームの試合を MLB.TV で視聴することはできませんでした。しかしブラックアウトが解除されたことで、より多くのファンが MLB.TV を通じて試合を視聴できるのです。
たとえば、クリーブランド・ガーディアンズでは145万世帯→486万世帯、アリゾナ・ダイヤモンドバックスでは93万世帯→560万世帯にまで拡大します。
より多くの人が試合を視聴できるようになることで、チームの認知度向上に寄与するなどのメリットがあると考えられます。特にMLB.TVというストリーミングサービスをメインにすることで、若年層ファンを取り込むことができると考えられています。
②メインストリート・スポーツ・グループと契約を継続したチーム
現在「メインストリート・スポーツ・グループ」と契約を結んでいるのは9チームいます。
(ATL ブレーブス、MIA マーリンズ、STL カーディナルス、LAA エンジェルス、KC ロイヤルズ、DET タイガース、TBレイズ、MIL ブルワーズ、CIN レッズ)
メインストリート・スポーツ・グループは、アマゾンとの提携などもあって破産から脱却しており、以前のような財務面での懸念が減ったとみて良いでしょう。(0とはとても言えないが)
放映権収入は以前よりも減ってしまうことは間違いなさそうですが、現在契約を結んでいるチームは、一定の収益を確保できる見通しです。
メインストリート・スポーツ・グループは、ケーブルテレビに加えて、自前の動画ストリーミングサービスを本格的に始動。ケーブルテレビと契約していなくとも、アプリで試合を視聴できるようにしたほか、アマゾンプライムビデオでも地域限定で試合を視聴できる見通しであり、若年層のファン拡大が期待されます。
小まとめ
ここまで、①MLB.TV での中継を行うチーム、②メインストリート・スポーツ・グループで中継を継続するチームを見てきました。
①MLB.TV での中継は、収益が必ずしも安定しないというデメリットはあるものの、より多くの人々が視聴可能である点がメリットでした。MLB.TV は、若年層ファンに向けての視聴手段としてはとても魅力的であると思います。
②メインストリート・スポーツ・グループでの中継は、会社の財務状況への懸念こそあるものの、放映権料は安定していることがメリットです。また①と比べて視聴可能世帯数が限られるというデメリットも、自前の動画サブスクサービスやアマゾンプライムビデオでの中継を開始するなど、とりわけ若年層ファンにとって魅力的な要素も増やしています。
どちらの方が良いかと問われるとまだ分かりません。ですが、14チーム中9チームがメインストリート・スポーツ・グループと契約を続行していることから、こちらの方がメリットがあると考えられます。
またメインストリート・スポーツ・グループの動きを見るに、動画サブスクサービス単体での試合中継も行うことは必須かもしれません。
前述したように、メインストリート・スポーツ・グループは、自前の動画サブスクサービスとアマゾン・プライム・ビデオでの中継を行うことになっっており、現代の潮流に沿った動きをしています。
一方で、未だにケーブルテレビと契約しなければ動画サブスクサービスを使えないテレビ局もあります(オリオールズとナショナルズのMASNとか)。
動画サブスクサービスを活用した柔軟な中継方法の導入が、今後のローカル放映戦略において重要な鍵を握ると言えるでしょう。
また、テキサス・レンジャーズのように、自前のテレビ局を設立+MLB.TV とは異なる動画サブスクサービスでの中継も行うチームが現れました。ローカル放映権を巡る混沌はまだまだ続きそうです。
その他ローカル中継
ここからは、メインストリート・スポーツ・グループとはあまり関係ありませんが、個人的に気になった2通りのローカル中継について説明します。
③無料の衛星放送(地上波)での試合中継
④テレビ局の持分を保有する
③無料の衛星放送(地上波)での試合中継
これまでに述べたとおり、MLB のローカルテレビは有料での視聴が前提です。大半の試合を地上波で無料で見られるNPBとは事情が違います。
しかしながらMLBチームの中には、一部の試合を無料で中継するチームも存在しています。
ニューヨーク・メッツとフィラデルフィア・フィリーズは、一部試合のローカル中継を衛星放送で行っています。この衛星放送は日本のテレビと同じように、無料で見られるものと考えられます。(テレビアンテナを設営する必要はあるが)
メッツは約150試合あるローカル放送のうち、25試合を衛星放送であるWPIXで中継しています。フィリーズも一部の試合を衛星放送の NBC 10 で中継しているそうです。地上波の衛星放送によってケーブルテレビに加入していない人も試合を視聴できるようになり、より多くの人に試合を見る機会を提供できるようになるでしょう。
また今年2月5日には、カンザスシティ・ロイヤルズも10試合を地元テレビの地上波で無料中継することになりました。一部の試合を無料で中継する流れは、今後広まっていくかもしれません。
We are excited to announce that we are partnering with Gray Media and KCTV5 to simulcast 10 regular season broadcasts to the Kansas City area!
— Kansas City Royals (@Royals) February 4, 2025
Games will be shown on KCTV5, KSMO, or both on select Sundays throughout the season, with selected games announced at a later date. pic.twitter.com/SfWNtSkBCb
※2月18日追記
アトランタ・ブレーブスも、レギュラーシーズン15試合を無料の衛星放送であるGray TVのチャンネルで視聴できるようです。
Atlanta #Braves Partner with Gray Media to Simulcast 15 Regular Season Games: pic.twitter.com/uB8JgXqTx1
— Atlanta Braves (@Braves) December 18, 2024
全試合地上波で無料中継しろよと思ったそこのあなた
私も同じ気持ちです
④テレビ局の持分を保有する
複数の球団は、自チームの試合を中継するテレビ局の株式持分を保有しています。(ヤンキースの YES Network やレッドソックスの NESN など)
さらに、複数チームによるジョイントベンチャー(共同出資)でテレビ局を設立するというパターンもあります。自チームの試合中継に加えて、他チームの試合もコンテンツとして提供できるため、より多くの視聴者を取り込むことができるでしょう。
(現在はアストロズとNBA ロケッツ、パイレーツと NHL ペンギンズがジョイントベンチャーを行っています。)
テレビ局の持分を保有している代表的なチームは以下があります。
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https://www.mlb.com/news/sportsnet-pittsburgh-to-continue-to-broadcast-pirates-games
https://www.mlb.com/press-release/press-release-astros-and-rockets-announce-acquisition-of-regional-sports-network
テレビ局の持分を保有するメリットは、
①テレビ局が上げた利益の一部を配当金などを通じて自チームの利益とすることができる
②テレビ局の経営に対する影響力を持つ
などが挙げられます。
特に①の配当金は、収益分配の対象から外れる可能性があり、収益分配で損をするビッグマーケット球団は、配当金を受け取ることで収益分配を回避し、自チームの利益を守っていると考えられるのです。(ただし、このやり方が機能しているかはわかりません。詳しくは後述)
テレビ局の持分保有にはデメリットもあります。テレビ局の経営が悪化した場合に、その悪影響が球団にも降りかかってくるのです。
たとえばシアトル・マリナーズは、100%の持分を保有する ROOT SPORTS が昨今の契約者数減少に苦しんでいるため、選手の総年俸を制限する必要に迫られています。しかも、ROOT SPORTS で試合中継を行っていた NBA トレイルブレイザーズと NHL クラーケンが ROOT SPORTS から離脱したため、将来的に収益が回復するかどうかも不透明な状況にあります。
テレビ局を保有している他チームも、昨今のケーブルテレビ加入者数減少に伴うダメージを負うリスクがあると言えそうです。
テレビ局の持分保有は収益分配回避につながっているかもしれない
テレビ局の株式保有による収益(配当金など)は、収益分配の対象外となる可能性があります。この問題は、ドジャースが締結した大型契約をきっかけに顕在化しました。
まずはドジャースの契約形態について説明します。
2013年にドジャースは、アメリカの巨大通信会社であったタイム・ワーナー・ケーブル(現チャーター・コミュニケーションズ)と25年83.5億ドルという超大型の放映権契約を締結しました。年間3億3,400万ドルが確保され、かつ全額を現チャーター・コミュニケーションズが満額保証するというとんでもない契約です。
しかしながら、ドジャースの2022年度の放映権収入は1億9,600万ドルとかなりの開きがあります。
2013年当時にも問題となったのですが、ドジャースはテレビ局の持分を保有し配当金を受け取ることで、収益分配の対象額を意図的に減らそうとしていたようです(配当金は収益分配の対象外であるため)。
いくつかの記事を参照するに、ドジャースはテレビ局の持分を保有することはリスクを伴うという名目を盾に、放映権料を意図的に圧縮しようとしているのでは、と言われていたようです。
ドジャースもまたビッグマーケット球団であり、収益分配で損する立場なので、収益を回避する思惑が働くのは当然でしょう。
一方で、自前のテレビ局を保有し配当金を通じた収益分配の回避が機能するかについては疑問符が浮かびます。
労使協定において、収益分配の対象となる収益は以下のように規定されています。
(3)“Defined Gross Revenue” shall mean the aggregate operat ing revenues from baseball operations received, or to be received on an accrual basis, as reported by each Club on an annual basis in the Club’s FIQ, but shall not include post-season revenue. “Baseball Operations” shall mean all activities of a Club that generate rev enue, except those wholly unrelated to the business of Major League Baseball. Baseball Operations shall include (by way of example, but not by way of limitation): (a) an activity that could be conducted by a non-Club entity but which is conducted by a Club because its affiliation or connection with Major League Baseball increases the activity’s appeal; and (b) an activity from which revenue or value is received as a result of a decision or agreement to forego what otherwise would be Defined Gross Revenue.
(3)「定義された総収益(Defined Gross Revenue)」 とは、各球団が毎年FIQ(財務情報報告書)で報告する、発生主義会計に基づき受領済みまたは受領予定の野球運営からの営業収益の総額を意味する。ただし、ポストシーズン収益は含まれないものとする。
「野球運営(Baseball Operations)」 とは、MLB(メジャーリーグベースボール)のビジネスとは完全に無関係な活動を除く、球団のあらゆる収益を生み出す活動を意味する。野球運営には、以下の活動が含まれるが、これに限定されるものではない:
(a) 球団以外の企業でも実施可能な活動であっても、MLBとの提携または関連性によってその活動の魅力が増し、球団がその活動を行う場合。
(b) 本来「定義された総収益」として計上されるはずの収益を放棄するという決定や合意により、収益または価値を受け取る活動。
-chatgpt 翻訳-
つまり、MLBに関係がある収益は全て収益分配計算の対象となるのです。
そして対象となる売上は、(a)球団以外の企業による経済活動であっても、MLBに関連があれば対象となりますし、(b)意図的に売上を放棄して収益分配計算の対象額を減らそうとしても、条項(b)があるため収益分配計算から逃れることができません。
ドジャースの場合、(a)テレビ局の活動ではあってもMLBの試合中継を通じて得た収益であり、(b)配当金によって収益を確保することで、その分収益分配の対象である放映権料を減らしていると考えられます。
すなわち、ドジャースが配当金を通じて収益分配を回避しようとしても、労使協定がそれを許していないのではないかということです。
そもそもドジャース以前にも、レッドソックスの NESN やヤンキースの YES Network など、球団がテレビ局を保有する事例はいくつもあったので、労使協定でも対策はされているものと考えるべきでしょう。
まとめると、
Q. テレビ局の持分を保有することで、放映権料を意図的に抑制・収益分配を回避することにつながるのか?
A. 労使協定において、抜け道が塞がれているはず
という感じです。
とはいえ、ドジャースやその他球団の収益分配回避策が阻止されているのかどうかは分かりませんでした。
やはり疑問なのは、22年のドジャースの放映権料は1億9,600万ドルであり、3億3,400万ドルではないという点です。
残額の1億3,800万ドルが配当金であると仮定した場合、その金額は収益分配の対象となっているのでしょうか。調べた限りでは分かりませんでした。有識者がいればぜひとも教えてください。
この話が正しいかはわかりませんが、ドジャースはかなり面白いことをやってるなと個人的に思った次第です。
ローカル放映権を一括管理するプラン
放映権には全米放映権とローカル放映権があり、ローカル放映権の扱いは球団に裁量権があります。ですが現在、MLB機構が全ての放映権を全チーム一括管理して販売するプランが浮上しています。
放映権の一括管理を行うことで、ビッグマーケット球団もスモールマーケット球団も放映権収入が等しくなり、資金力格差の是正につながることが期待されています。MLB 機構がパドレスやダイヤモンドバックスなどの放映権を獲得したのは、MLB 機構が全球団の放映権を手中に納めるプロセスの一環なのかもしれません。
しかしながらビッグマーケット球団は、ローカル放映権収入で大きな利益を得ているため、この施策に反対するでしょう。彼らの収入は他の球団を大きく上回っており、この施策によって収入が均等化されることは受け入れられないと考えられます。
加えて、ローカル放映権契約が進行中のチームもいるため、MLB 機構が今すぐに全球団の放映権を獲得することは困難です。(たとえばドジャースは2038年まで契約が続く)
ローカル放映権の一括管理は、資金格差是正の効果があると考えられますが、実現には様々な障壁が存在しているのです。
終わりに
明確な着地点が無い話題でしたが、ここまで読んでいただきありがとうございます。
可能であればローカル放映権と球団間の資金力格差を紐付けた話をしたかったのですが、そこまで書くことはできませんでした。意欲のある方、ぜひとも書いてください。お待ちしております。
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参考
CBA | MLBPA Players
MLB Deals With Apple And NBC Sports Are Worth A Combined $115 Million Annually
https://www.mlb.com/press-release/press-release-mlb-finishes-2024-season-with-highest-attendance-in-seven-years
Rangers sign multi-year streaming deal with Victory+
https://www.statista.com/statistics/251268/number-of-pay-tv-households-in-the-us/
バリースポーツ関連
Bally Sports RSNs Planning for Bankruptcy, Sources Say
Amazon Eyes Diamond Sports Bailout Options
RSN owner emerges from bankruptcy as Main Street Sports Group
Diamond Sports Group branded as FanDuel in new deal - ESPN
Royals, FanDuel Sports Network announce broadcast deal for 2025
Guardians games to be produced, distributed locally by MLB in 2025
Twins games to be produced, distributed by MLB in 2025
Reds games to be produced, distributed by MLB in 2025
Press Release Milwaukee Brewers, FanDuel Sports Network Announce Telecast Rights Agreement For 2025
Diamond Sports Group reaches agreement with Amazon - ESPN
Diamond Sports Group Officially Emerges From Bankruptcy Under New Name: Main Street Sports Group
MLB to produce local games for Guardians, Brewers, Twins in 2025
MLB taking over broadcasts of Arizona Diamondbacks games - ESPN
テレビ局の持分を保有するチーム
Ownership | Fenway Park Living Museum | Boston Red Sox
Cohen's Pursuit of SNY Is Underway as Cord-Cutters Erode RSN Value
Comcast, MASN Deal Puts Orioles, Nationals on a Pricier Cable Tier
Mariners To Take 100 Percent Control Of ROOT Sports Northwest Network - MLB Trade Rumors
Pittsburgh Pirates' games to remain on SportsNet Pittsburgh; team to jointly own network with Penguins - CBS Pittsburgh
Pirates, Penguins Agree To Joint Ownership Of SportsNet Pittsburgh - MLB Trade Rumors
Press release: Astros and Rockets announce acquisition of regional sports network AT&T SportsNet Southwest
ドジャース関連
https://www.usatoday.com/story/sports/mlb/2013/01/28/dodgers-time-warner-tv-deal-mlb-concerns-7-billion/1872551/
$850 Million in Future Revenue-Sharing Obligations Hinge on Structure of Dodgers' New TV Deal
Los Angeles Dodgers launching regional sports TV network SportsNet LA - ESPN
Ohtani's Payday Fueled by Dodgers' Lucrative Local TV Business
https://www.forbes.com/sites/mikeozanian/2013/01/24/dodgers-7-billion-tv-deal-based-on-ambitious-assumptions/
https://bleacherreport.com/articles/1507121-why-mlb-has-every-right-to-be-furious-with-the-dodgers-new-tv-network-deal
ローカル放映権の一括管理
MLB plans new national TV packages for 2028; changes to revenue sharing, CBA crucial - The Athletic
MLB now eyeing long-term media rights plan for all 30 teams - ESPN