映画『在りし日の歌』
ひとりっ子政策に翻弄された夫婦の物語。185分の長い映画なのに、もっと続きを観ていたかった。1980年代から2010年代までの場面は非連続で出てくる。主人公の老け具合、車や携帯電話や洋服なども含めて、ああこの頃かと想像しながら頭の中で物語を埋めるようにつなぎ合わせていくのは楽しかった。
同じ日に生まれた一人息子を大事にする二つの家庭は国有企業の社宅で親戚同士のように暮らしている。
楽しい庶民的な暮らしの中に、ロックンロールのダンスパーティでの逮捕など、欧米文化の取り締まりの厳しさもある。
ひとりっ子政策で、二人めを強制的に堕胎させられるシーンは胸が苦しくて見ていられない。その前の場面でこの後に一人息子が事故死することを知っているから、なおさら「やめて、産んで。産ませてあげて」と思う。運命の皮肉なんてありがちな言葉で語れない。涙が溢れた。
ひとりっ子政策の愚かさ、悲しさ悔しさ優しさ愛おしさをたくさん感じた。
家電や家具や小物のデザイン、車や建物は日本と近いだけに、政策に翻弄される様はショックで、とってもリアルだった。
子供は希望、愛は消えない。
そして彼らの主食マントウが美味しそうで食べたくなった。落花生も。
2020.6 広島・横川シネマにて。
公式サイト http://www.bitters.co.jp/arishihi/sp/