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CIVILSESSION 30: VINTAGE

開催日:2020年12月12日
開催地:Impact HUB Tokyo

CIVILSESSIONはクリエイティブチームCIVILTOKYOのメンバーが様々な分野の方と行うアートセッションです。決められたキーワードを元に、発表者たちが一週間で作品を制作します。キーワード発表から一週間後にそれぞれの作品のプレゼンを行い、参加者の投票でグランプリを決定します。

第30回目のキーワードは「VINTAGE」。
CIVILTOKYOの3名とゲスト参加者4名の計7名で行いました。

・片桐奏羽
 iOSエンジニア
 http://rodhos.info/blog
・シマジマサヒコ(元IHTホストメンバー)
 webデザイナー、グラフィックアーティスト、ミュージシャン
 http://www.junkjoint.net/https://www.facebook.com/MasahicoShimaji
・並河進
 コピーライター/詩人
・三塩佑子
 コミュニティ・ビルダー(Impact HUB Tokyo)

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2017年2月の第1回目から4年近くを経て、CIVILSESSIONは第30回目を迎えました。今回はCIVILTOKYOが2018年12月に展示「CIVILSESSION ARCHIVES」を企画した、目黒にある企業家コミュニティImpact HUB Tokyo(以下IHT)とのコラボレーションにより、ゲスト参加者4名すべてをIHTのコミュニティメンバーから迎えて開催されました。
また会場となったIHTではCIVILSESSION 30の告知も兼ねて、これまでのCIVILSESSIONのグランプリ作品を用いたポスター展示も行いました。

グランプリは並河進に決定しました。

2020年1月に行われた第27回:PRODUCER 以来、11ヶ月ぶりのリアルイベントとなった今回。感染症予防対策として完全予約制、座席間を開けた上で、観客・発表者・関係者を含め約40名が集まりました。
第30回目のキーワードはVintage。比較的身近で、意味自体も共通のイメージを持ちやすい単語ですが、発表者のアプローチ方法は様々でした。いつかVintageになり得るものを取り上げる方、単語としての定義から考える方、個人的な事象と捉える方など、一般的な単語の意味としてだけに留まらず、良い「作品制作のきっかけ」となるキーワードだったように思います。

Vintageを様々な角度から考察する発表者たちの中、「Vintageとは時間の問題」と捉えた並河は、時間の経過速度は常に一定ではないと解説。感情や状態によって人が感じる時間の速度は変わること表すため、閲覧者の表情によって速度が変化するブラウザ上の時計を公開。観客からは驚きの声が上がる中、「Vintageになるものが体感する時間も同様に変化し得る」と締めくくり、見事グランプリを飾りました。

Vintageとは「古いもの」を「良いもの」に変える言葉とした伊藤は、2020年の情勢について言及。世界が沈んだこの年も、将来「良い年だった」と振り返ることができるよう、自身の友人・知人に聞いた今年の思い出を集めた映像作品を制作しました。

三塩は「将来見返した時にヴィンテージになりそうなもの」にフォーカスを当て、「今日当たり前に使われているが将来ヴィンテージ品になっていそうなものは?」と観客に出題。また、合わせて自身が見た未来の夢のポスターと、それに伴ったコラージュ作品を発表しました。

シマジはキーワードの詳細な定義とそれに伴った自身の思考を図式化。「Vintage」を元に何が作れるかという思考のプロセスを発表した上で、所有しているヴィンテージカメラ、ベース、エフェクターを用いた映像詩篇の作品を公開しました。

冒頭に「今日はゼミ形式で発表を行います」と述べた片桐は、ホワイトボードを用いて「Vintageの概念」を数式化しながら解説。ホワイトボードが次々に数式で埋まっては消されていくその様に、観客は唖然としつつも笑いがこぼれ、会場を大いに沸かせました。

「本物のビンテージ」と「ビンテージ風」の違いに着目した根子は、高い技術を用いればその差が無くなるのではないかと説明。「本物の価値は存在するのか」という疑問を元に、ビンテージとしての価値説明をそのままプリントしたビンテージTシャツを発表。

単語としてのVintageと、自身の思うVintageのズレに注目した杉浦は、長年手入れをし続けているセーターを持参。ケアするアクション自体がVintageに繋がるのではないかとの考えから、所有する全てのニットの毛玉を取り、一覧化した作品を公開しました。


① 伊藤佑一郎(写真家)/Dear My 2020

このVINTAGEという言葉はおそらく言葉本来の正しい使い方以上に、それとなく雰囲気言葉になっているのではないかと考えました。それとなく、古いだけのものをちょっといいものに変える、あまり良くないものでも良いものに変えてしまう魔法の言葉なのではないかと。
今年はあまり人と会うことができなかった特別な1年でした。そんな1年をみんながどんなことを思って過ごしたのか。普段会うことが少なかった人々にアンケートを送り、「ことしのおもいで」のあいうえお作文を回答いただきました。全世界が沈んだ今年も、「VINTAGE」といって振り返った時によかったものにしたく、一部を映像作品にまとめました。
(アンケートお答えいただいた方にお声🗣をいただいておけばよかったなーとも思ったのですが、貰いそびれてしまったので、ちょっとだけビート🎧をつけて自動音声の読み上げがラップ🎤っぽく聞こえたらいいなと思って作りました!)

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② 三塩佑子(コミュニティ・ビルダー)/Vintage of the future 「未来人が見たヴィンテージ」

今流行っているもの、当たり前のように使っているもの、概念さえも、50年後100年後に「ヴィンテージ」となるかもしれない。未来から見たヴィンテージを想像してみました。未来の蚤の市でヴィンテージとして売られているかもしれないものはなんでしょうか?観客の方に問いかけてみました。

ポスターについては、今回ヴィンテージをテーマとして考える上であえて過去ではなく未来について考え、その際に思い出した夢の景色のドローイングです。
コラージュはそこからさらにインスピレーションを受け作成してみました。

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③シマジマサヒコ(webデザイナー、グラフィックアーティスト、ミュージシャン)/Vintage st. of a Dream

所有しているいくつかのヴィンテージ品(正確にはただ経年しているだけ?)から、OLYNPUS PEN EE3で近隣である目黒通りのヴィンテージショップ、ヴィンテージホテルなどを撮影。

ハーフサイズカメラの特徴を活かし、1枚に2コマ現像された写真でスライドショーを作成し、長年使用しているベースギター(G&L L200)と年代物のエフェクター(Maxson D&SⅡ)でインプロビゼーションによる音楽を添えるという極私的ヴィンテージ観についての映像詩編。

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④ 片桐奏羽(iOSエンジニア)/Micro Vintage

我々が通常持っているVintageの概念を古典論とみなし、その先にあるMicro Vintageの概念をゼミの形式で提案した。Micro Vintageでは制作物が時間とともに他の制作物と回転を続ける。

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⑤ 根子敬生(デザイナー)/「1980年代に活躍したアメリカの政治家であり弁護士であるGeraldine FerraroのキャンペーンTシャツ6800円(HAIGHT & ASHBURYにて購入)」など3点

(※ここではビンテージとか、レトロとか、アンティークとかの単語のもつ辞書的な意味づけは特に区別していません)

ビンテージってなんかいいよね!
と思うものの、僕は特段いわゆるビンテージファッションとか興味があるわけではなく、考えてみると、最近は学生の頃に比べて古着とか別に選びに行ったりしないし、アンティーク家具買うよりは、機能性を重視した新しい家具とか買いがちだなーー、といのが最初キーワードを聞いた時の印象。

それとは別に、ビンテージ"風"のものに対して、その存在に違和感を感じることが、ある。
それはビンテージ"風"ってなんかダサいよね〜〜。というぐらいの曖昧な感情で、ビンテージ"加工"とかレトロ"風"とかアンティーク"調"とか、その加工や演出方法自体に異議を唱えたいわけでは、ない。わざわざ汚したりするのが嫌ーーということでもない。なんとなく「ホンモノ」に近づこうとするその擬態行為自体が、よく考えるとコスいと感じる、ということかもしれない。

ただ、その加工を施したモノと、実際のビンテージ品との違いはどう判別するのか?そもそもビンテージ品に対してどう感じ、どのように人々が評価しているから、そのものの価値が高くなるのか?という疑問が、ビンテージとは何か?という思考の中で幾度となくループして再生される。

「実際の年月を積み重ねた経年劣化の風合いは、偽物では表しきれないのだ!ガハハハ!」
と言う人がいるかもしれませんが、施工技術が高く、風合いが完璧に再現されたフェイクビンテージの品物は、よほどの専門家でなければ本物と見分けは付かないはず。
あれ?でもそれって、その「風合い」自体を愛するのであれば、偽物でも問題ないということになってしまうのでしょうか?

「実際の年月を積み重ねたという、歴史そのものが重要なのだ!ヌハハハ!参ったか!!」
と言う人がいるかもしれませんが、だったらその歴史の説明が付随していなければ、購入者や、それを手に取る人、見る人は分からないはず。歴史の説明がなされてない/分からないモノに対しては、そのものの価値はどう判断したら良いんでしょうか?

ということで私はその疑問を解決するために、ホンモノのビンテージTシャツを購入し、そのボディの柄に、販売店の人が語ったそれぞれの品物の歴史をテキストで上書きプリントした作品を制作しました。

ビンテージの価値ってなんでしたっけね。(こういう終わり方多いな)

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⑥ 並河進(コピーライター/詩人)/Time

楽しいと時があっという間に進み、辛いと時が遅く進む。そんな感覚通りに動く時計をつくりました。もしかしたら、ビンテージになるワインは、樽の中で微笑んでいて、だから100年の長さも一瞬なのかもしれません。

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作品はこちら
※PCのブラウザ(Chrome推奨)でご覧ください。



⑦ 杉浦草介(デザイナー)/Process to Vintage

自分はVintageが好きです。でもVintageの言葉の意味を調べていると「30年以上経過しているもの」「保存状態が良いもの」「(一般的に)価値があるもの」とか、なんか色々と定義があってめんどくさいなと。

15、16歳ごろから原宿・恵比寿・中目黒あたりの古着屋を友人と自転車でほぼ毎週末駆け巡り、18歳でロンドンへ行ってからの9年間のほとんどをブリック・レーン近くで過ごし、所有している服の約9割を古着屋で購入している自分にとっては Vintage=古着 です。でも調べていると、自分が言葉として使っている「Vintage」と、一般的に定義された「Vintage」には乖離があるなと気づきました。では自分が好きだと思っていたものはVintageでは無いのかというと、そうとも言い切れない気がします。これまでにもその言葉を使ったコミュニケーションは、友人間等で成り立ってきたし。

自分が持っている一番古い服は、確か高校の頃に父のお下がりとしてもらったY’s for menのケーブルニットセーターです。自分と同い年くらいのこのセーターは、痩せすぎないように気をつけながら毛玉を取り、穴が開けば自分で直し、もうだいぶボロボロだけどケアし続けてます。このセーターは自分にとって、思い入れも含めてVintage品です。

その希少性とか世間一般でVintageと呼ばれているか否かではなく、思い入れや愛情があるものを「ケアする」というアクションが、結果的に自分の思うVintageを作り出すのではないか。既にVintageになっているものやその予備軍、期待の新人を含め、持っている全てのニット(セーター、カーディガン)の毛玉取りをして、それらが自分にとってのVintageになる過程の記録を作りました。

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