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CIVILSESSION 31: CARROT

開催日:2021年07月24日
開催地:SHIBUYA Valley

CIVILSESSIONはクリエイティブチームCIVILTOKYOのメンバーが様々な分野の方と行うアートセッションです。決められたキーワードを元に、発表者たちが一週間で作品を制作します。キーワード発表から一週間後にそれぞれの作品のプレゼンを行い、参加者の投票でグランプリを決定します。

第31回目のキーワードは「CARROT」。
CIVILTOKYOの4名とゲスト参加者2名の計6名で行いました。

・柿内奈緒美
 KAMADO INC. 経営者/KAMADO 編集長
 https://kamado-japan.com/
・伊達善行
 クリエイティブディレクター、デザイナー
 https://www.instagram.com/y.date.design/

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グランプリは杉浦草介に決定しました。

前回から7ヶ月ぶりとなった第31回は、CIVILSESSION初の屋外会場となるSHIBUYA Valleyで開催されました。キーワードは「CARROT」。その形や色、使い道が明確であることから、どうやってキーワードの解釈を広げるかという点に悩んだ方が多かったようです。野菜としてのニンジンに対するリサーチや実験を作品にする方や、ニンジンを比喩として捉え作品制作を行う方など、その言葉の持つ意味の拡張に様々な工夫を見ることができる回でした。

『「人参」とは人間に似ているから名付けられた』と説明した杉浦は、そもそも人参と呼ばれていた植物は今で言う朝鮮人参にあたると解説。現在一般的に普及しているニンジンの「人参らしさ(=人に似ているかどうか)」に対する疑念を投げかけた上で、「他の野菜でも、人間に似せることができれば人参と呼べるのでは」という仮定のもと、ニンジン以外の野菜を人間に見立てたルックブックを作成、見事グランプリを飾りました。

自身がニンジンを食べる機会はほとんど無いと話した根子は、「自分にとってのニンジンの条件3つ」を定義。「オレンジ色で/細長い/食べられないもの」を具現化するため、オレンジ色のビニールで貼り合わせた巨大な気球を会場で膨らませ、観客を沸かせました。

伊達はニンジンが好物の動物として馬を例に出し、「動物はシズル感を感じるのか」をテーマに詳細なリサーチを展開。代々木ポニー公園の牡馬プレッツェルくん協力の下、ニンジンの画像をプリントした紙や、それに食べ物の匂いを染み込ませたものに対する馬の反応を調査し、その研究結果を発表しました。

「アート=アイデンティティ」と解説した柿内は、ニンジンに関する自身のパーソナルな記憶として、幼少期に祖母の畑仕事を手伝った過去を回想。会場での機器トラブルに見舞われながらもスライドや曲と共に懐かしい祖母との思い出を語り、最後は観客をニンジンに見立てた壇上からの風景をその場で描き上げました。

ニンジンの色は健康を気遣う妻からの愛情の色と話した杉原は、街中でのニンジン色を探索。夜輝く家の明かりは帰宅する人々の心を健康にしていると説明し、その光が水面に映るとニンジンに見えることから「CARROT SIGN」と命名。発表の場でもCARROT SIGNを実演して見せました。

ニンジンのすり下ろし汁が好みの香りではなかったと話した伊藤は、過去に「好きな匂いに嫌いな匂いを少し混ぜると、より良い匂いになる」と聞いたことを思い出したと解説。自身の好きな香りとニンジンエキスを混ぜた香水を用意し、会場でテスターを配布しながらの発表を行いました。


① 根子敬生(デザイナー)/デカニンジン

キーワードは「CARROT」。初めての食材ワード。分かりやすい。分かりやすすぎる。
「人参は、人参でしかない…!」
今回は、CIVILSESSION史上最も具体的で分かりきってるキーワードを、自分の中で再解釈し「自分至上最高の人参」を作ることにしました。

まず、スーパーの野菜売り場に行き、人参を買おうとしましたが、そこで一つの事実に私は気づきます。
「私は、人参を普段食べない…。」
人参のことをこれだけ、わかりきっていて、かつ身近な存在だと思っていたのに、人参と私は日常の中で関わり合いがなく、人参は実は食物ではなく「概念」としての存在だということに気づかされました。そこで私は、人参をまずこう定義しました。

定義①「人参は、食べるものではない」

自分としても、大多数の人が思い描いている人参とはものすごくかけ離れてしまった気もしますが、ただ、自分の中の感覚に正しく従った以上、引き下がるワケにはいきません。
そこから私はGoogle画像検索をして自分の認識するその他の別の定義に気づきました

定義②「人参は、オレンジ色をしている」
定義③「人参は、細長い」

私は、これらの3つの定義「細長くて」「オレンジ色」をしていて、「食べられない」ものを具現化するために「どでかい円柱型のオレンジの気球」の作品を作ることにしました。
※急に「でかいもの」が出てきましたが、何故なら「作品」というものは、でかければでかいほどと面白いと、大学の教授に教えてもらったからです。

100枚のビニール袋を連結させて制作した7Mほどの高さを誇るオレンジ色の気球は、この日の為に購入したアイリスオーヤマの布団乾燥機の力を借りて、見事渋谷の空に向けて立ち上がりました。メデタシメデタシ。

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② 伊達善行(クリエイティブディレクター、デザイナー)/動物におけるシズル感の印象比較分析に関する研究

普段食べてる食べ物、見えかたや撮り方によって「美味しそうだな」って感じるかどうかは違う、それが所謂「シズル感」です。

人間にとって「美味しそうだなと感じる食べ物の写真」は深く研究されポスター、パッケージ、webなどで使われています。
では「動物にとってはどのように食べ物が写ると美味しそうに見える」んでしょうか?

今回は"馬"にさまざまな"人参(CARROT)"の写真を見せ「動物にとってのシズル感」を調べ、研究としてまとめました。

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▼プレゼンテーション資料

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③ 柿内奈緒美(KAMADO INC. 経営者、KAMADO 編集長)/おばあちゃん


にんじんというワードをもらってから、リサーチしたりメモしたり。頭の片隅にずっとにんじんがあるけど、どう切れば分からない・・・。
そうこうしてる内に金曜になって、焦る。
一旦、そもそもアートセッションの意味から考えてみました。


アート=アイデンティティと捉えて、自身の祖母の話をしました。

子供の頃、おばあちゃんの手伝いをした畑仕事でのにんじん。

でも、1週間で何かを創る段階まで行かず、、でした。涙

映像を流したかったけど、Wi-Fiの調子が悪く流れず。笑

グダグダになったので、もう一回チャレンジしたいと思います!

🔥

クリエティブな作品が多いので、アート系の仕事をしてる自分としては、アートの切り口で進めてみたかった、が作品の前提ポイントでした。

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④ 杉原賢(ジュエリーデザイナー)/CARROT SIGN

食卓における人参の価値はその“色”にあると思っています。妻の手料理にちりばめられた“人参色”を目にする度に「体を気遣ってくれているんだな」「視覚でも食事を楽しませようとしてくれているんだな」と秘めた愛情を感じられるからです。彩りによって、体のみならず心までヘルシーにしてくれる“人参色”。

ふと、街ではどんな目的で“人参色”が使われているのか気になり探索に出かけました。日中はそのほとんどが注意を促すための“人参色”でしたが、夜間には街中のマンションや一軒家に暖かな“人参色”が灯り、帰宅する人々を迎え入れていました。帰宅した人の心をヘルシーにする“人参色”。

川に写った“人参色”の灯りが人参そのものだったので、水面に写るこの灯りを『CARROT SIGN』と名付けることにしました。

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⑤ 伊藤佑一郎(プランナー、写真家)/キャロット香水「キャロティエ」

夏はなにかと匂いが気になる。それでふと、ニンジンってどんな匂いなのかなーと思い、すり下ろして絞り、その汁を嗅いだ。思った以上に良くない匂いだった。そういえば上手に香水を作るコツとして有名な「調合の最後に自分が嫌いな匂いを最後にちょっといれる」というのを思い出しました。なのでニンジンのこの絞り汁をその最後のスパイスとして、様々なエッセンシャルオイルと調合して香水を作りました。なかなかよい匂いに仕上がりました。

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⑥ 杉浦草介(デザイナー)/人参LOOKBOOK

17世紀ごろに外来種として日本へやって来た白っぽいウコギ科の植物は、見た目が人のようだからという理由で「人参」と呼ばれていました(命名されたのは恐らく中国にて?)。当時の人参はオタネニンジンという種類で、今では一般的に朝鮮人参や高麗人参として知られています。
江戸時代後期になり、ヨーロッパから日本へやって来たオレンジ色のセリ科の植物が、すでに普及している「人参」に似ているから(似てるか?)という理由で同じく人参と名付けられます。「人に似ているから」ではなく、分類学上も違う科に属し、色も味も違う植物同士を「似てる気がするから、人参!」と呼んじゃう当時の日本人、雑。(ちなみにもちろん、オタネニンジンは英語でcarrotとは呼ばれていません)
つまり、今我々が「人参」と呼ぶ植物にはその文字(漢字)としての意味は込められていないわけです。

Googleで「人に見える野菜」と画像検索すると、確かに人参も出てきますが、割合としてはそこまで多くありません。名前の由来は「人に見えるから」なのに、実際には大根やピーマンやナスの方が人っぽいやつ多かったり。それならもう、あのオレンジ色のニンジンは「人参」と呼ばれなくても良いんじゃないでしょうか。大根とか、ピーマンとか、その他の野菜が人にさえ見えれば、「人参」って呼ばれてもいいんじゃないでしょうか。

本当の「人参」を求めて、人参のルックブックを作りました。

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