CIVILSESSION 27: PRODUCER
開催日:2020年01月18日
開催地:新代田 Dog Cafe ABC
CIVILSESSIONはクリエイティブチームCIVILTOKYOのメンバーが様々な分野の方と行うアートセッションです。決められたキーワードを元に、発表者たちが一週間で作品を制作します。キーワード発表から一週間後にそれぞれの作品のプレゼンを行い、参加者の投票でグランプリを決定します。
第27回目のキーワードは「PRODUCER」。
CIVILTOKYOの3名とゲスト参加者3名の計6名で行いました。
・Tacanori Civa(RITENUTObytac 衣装屋)
https://www.instagram.com/ritenutobytac/
・原田俊(ネット広告会社 リサーチャー/ビジネス企画・開発)
・momo.(絵描き 等)
グランプリはTacanori Civaと原田俊に決定しました。
第27回目のキーワードはPRODUCER。これまでのキーワードと比べると言葉の意味が限定的で拡げにくいこともあり、発表者からも「難しかった」との声が多かったようです。発表された作品はプレゼンテーション自体を発表としたものやパフォーマンスが多く、現物の作品を発表したのは6名中ただ1人という珍しい会となりました。
そんな中、見事グランプリを飾ったのはTacanori Civaと原田俊の2名。
Civaは観客に委ねたいくつかの選択肢を元に、薄暗い中で踊るダンサーのKiMに服を着せてゆき、それを即興で裁断しながら最終の衣装を作り上げていくパフォーマンスを披露。
原田は言葉のリサーチでたどり着いた海藻やプランクトンの画像から柄を生成。「布から服を作る技術は無いが、紙ならできるんじゃないか」という思いから、そのオリジナルパターンの紙製アロハシャツを制作、発表しました。
まず音楽プロデューサーになってみることに決めた山森は、そこから実際に音楽制作に向かい合ってみた上での苦悩や挫折を語りつつ、自身の生活環境音を録音し、映像を添えた音楽作品として発表しました。
杉浦はプロデューサーという肩書きのイメージから仮の職業「デザインプロデューサー」を演じ、既存のロゴを知ったかぶりでプレゼンテーションするというパフォーマンスを披露。
日本酒が好きなmomo.は自分の推しの酒蔵(推し蔵)を紹介。各酒蔵の背景にあるストーリーと共に、各酒蔵をイメージして描いたイラストを添えて解説しました。
根子は、会場にいる観客全員に自分の基礎情報や得意なもの、好き嫌いや、仕事の履歴など一式をプロフィールとして渡し、それを元に自分自身をプロデュースしてもらうという発表を行いました。
① 山森文生(エンジニア)/とりあえず音楽やってみた
Producerというキーワードを聞いて、第一に直感したのは人間を指す示す場合が多い言葉である、という印象だった。もちろん、人間以外の現象事象にこの言葉を重ねていく手法も検討した。しかし、今回は最も自分の印象に近いことをやろうと考え、下記の順序でキーワードを行動に落とし込み、実施を試みた。
1.プロデューサーといえば音楽プロデューサーだ
2.音楽をやって成功するとプロデューサーに転向するらしい
3.自身がプロデューサーに近づくことで自分自身を作品化できる
4.音楽をやるべきだ
音楽制作にあたっては、Producerの言葉から連想する「物事を方向づけて推し進める存在」という意味と、日常的な関心の対象である「合理の範疇で言語化されないために意識しない事象」への問い、これらを重ね合わせた音作りを心がけることにした。静かであることが合理的と考えられる自宅において、聞こえてくる多くの音には価値が認められない。しかし、それらは確実に私の人生の雰囲気を構成する要素であるはずだ。その無視された音に焦点を合わせて音楽として成立させることには、一定の意義があるのかもしれない。本作品はその試行の一つである。
※このとき、発表者はComposerという言葉を知らない。
② 杉浦草介(デザイナー)/※これはイメージです。
実際にそうであるかは別にして、デザイナーが「チャラそう/神経質そう」だったり、ミュージシャンが「遊んでそう/クスリやってそう」、公務員が「堅物そう/地味そう」とか、完全に偏見ですけど、その職業や肩書が持つイメージってあると思います。個人的にはプロデューサーと聞くと「何やってんのかよくわからない人」のイメージがありました。
いや知ってます、みんなバリ忙しい人たちです。CM関係の仕事とかすると、現場含めて回してるのはプロデューサーの人たちですし、実際すごく仕事できるプロデューサー職の方々にも多数会ってきてます。
でも訳語が「生産者」でありながら、実際に手を動かして作るわけではないプロデューサーのあくまで「イメージ」で、何やってんのかよくわからない、怖そう、バーに通ってそう、カーディガンを肩にかけてそう(昭和)とか、そんな感じ。ステレオタイプですよね。プロデューサーの方々ごめんなさい。決してプロデューサーの方に会ってそう思うわけではなくて、たぶん幼少期からテレビとかで培われちゃった「言葉のイメージ」なんです。
一個人の経験談ですが、グラフィックの場合はデザイナーやディレクターがプロデューサー業も兼任している場合が多いので「デザインプロデューサー」みたいな方に会ったことはありません。もしいたら、実際に手を動かして物を作るわけではないけど、クライアントにプレゼンとかだけはできちゃう人たちだったりするんですかね。
みんなが知ってる適当なロゴいくつかの、実際の意味とかよく知りませんが、デザインプロデューサーとして「それっぽく知ったかぶってプレゼンだけ」してみました。
③ momo.(絵描き 等)
近年、日本酒の国内消費量は減少しているそうです。私は日本酒が好きなので、日本酒をあまり知らない人に、日本酒に興味を持ってもらえるようなプレゼンをしてみようと思いました。
わたしの「推し蔵」を3件セレクトし、蔵の特徴を、ちょっとよくわからないイラストと共に、推し蔵の飲むべきお酒を紹介しました。
推し蔵の紹介内容もイラストも、情報が少し不足しているような状態にしました。
なにか引っかかる部分があれば、ググったり飲んでみたりしてもらえたら嬉しいです。
④ Tacanori Civa(RITENUTObytac 衣装屋)/Buridan's producer
プロデューサーは常に選択に迫られています。死活問題になりうる重要な選択も。選択の壁に打ち当たり、逃げ出したくなる事もあるはずです。
RITENUTObytacは プロデューサー=選択 と独自に解釈展開をし、選択する辛さ、それによって得る成功、感動、楽しさを体感させることを目指してみました。
あるプロデューサーがパフォーマンスをcivilsessionで行うという企画を立て、衣装:RITENUTObytac. パフォーマンス:KiMとキャスティングまではしたものの、方向性のキーワードを組み立ててる途中で選択の壁を乗り越えれず、逃亡してしまう。そして、残されたメンバー衣装デザイナーとパフォーマーはどう乗り切ろう。
どちらつかずの答えのないキーワードの選択をどうするか悩んだ二人は、人間には選択に困ったときの手段がある。そう運任せ。運任せで選択するのであれば、自分らではなくお客さんに選択してもらうのもいいのではと。選択の壁をみんなで乗り越えよう。
という架空のストーリーの下展開。
選択権を渡されたお客さんはお客さんでありながらプロデューサーでもありうるという特別な体験をしてもらう実験的な発表をさせていただきました。
⑤ 原田俊(ネット広告会社 リサーチャー/ビジネス企画・開発)/原田俊の生産者すごいぜ!
キーワードを聞いて、テレビや音楽のプロデューサー像を真っ先に思い浮かべたのですが、自分はその仕事に華やかなイメージだけ持っているだけで何も手掛かりがなくて、このキーワードすごく難しいなと思いました。
固めない状態でいろいろリサーチをしていくうちに、生物学におけるproducer=生産者(植物や植物プランクトン、海藻など)が気になりました。植物はふだん目にするけど、海の生産者(植物プランクトンとか海藻)のほうが環境問題の解決において重要だし、すごく美しいプランクトンや、地上の森よりも幻想的な海藻の森とかがぜんぜん知られてないのももったいないと思いました。
特に、美しさを知ってもらおうと写真中心のスライドを作ってたんですが、なんか普段の自分から一歩も踏み出せてない感があって、CIVILのメンバーが凄いの作った時の熱量とか、オーバークオリティの面白さがほしかったので、いろいろ考えても答えは出ず、最終的に直感で、きれいな海藻の写真をファブリックにしたアロハシャツを作ることにしました。
自分のできることの少なさから出発するためにも、背伸びせず家とコンビニで完結させました。コンビニでカラープリントした紙を貼り合わせて「生地」にして、自分の持ってるアロハを採寸した「型紙」をもとに裁断して、コンビニで売ってたセロテープ/両面テープで縫いました(貼りました)。
やってみた感想としては、服は伸びない紙で作ってはダメだっていう笑
あとコピー機じゃ狙った発色にならないし、不正確な採寸が後で響いてきたり、パーツごとの生地選びの難しさとか、服作りについて学ぶことがほんと多くて、いいプロトタイピングになりました。
普段の仕事の、リサーチして、まとめて、プレゼンしてっていう一連のデスクワークから抜け出して、手を動かせたことが大きな喜びでした。
⑥ 根子敬生(デザイナー)/根子敬生をプロデュース!
例えば広告の世界でいうと、プロデューサーがいて、ディレクターがいて、デザイナーがいて、イラストレーターがいる、というような制作の役割の順番があったりします。これは別にそれぞれに優劣があるとかではないし、場合によってはデザイナーかプロデューサー的な役回りをして〜というケースもあったりするっちゃするんですが、どうしても私が何かを作ろうとすると、「デザイナー」とか「イラストレーター」のような、制作のフィニッシュを担うプレイヤーとしての比重が高くなってしまいます。
なので、今回は私自身を素材として提供し、それを会場の方々に好きなようにプロデュースして頂くことで「プロデューサーをつくる」発表を行いました。