CIVILSESSION 11: SECRET
開催日:2018年3月17日
CIVILSESSIONはクリエイティブチームCIVILTOKYOのメンバーが様々な分野の方と行うアートセッションです。決められたキーワードを元に、発表者たちが一週間で作品を制作します。キーワード発表から一週間後にそれぞれの作品のプレゼンを行い、参加者の投票でグランプリを決定します。
第11回目のキーワードは「SECRET」。
CIVILTOKYOの3名とゲスト参加者4名の計7名で行いました。
・モリユウスケ(デザイナー)
・千葉友貴(ヨガ講師)
・長谷川亮(デザイナー)
・山森文生(ソフトウェアエンジニア)
グランプリは杉浦草介に決定しました。
CIVILSESSIONにおいて初めて、自身の身体を作品キャンバスとして発表した杉浦は、自分の数々の秘密を油性ペンで身体に書き込みました。作品コンセプトにもなった「他者が持つ自分のイメージ」を上手く逆手に取り、そのインパクトで観客をざわつかせ多数の票を集めました。
全体を通してみても、実験現場として捉える参加者が増えてきたようです。千葉のレクチャー形式でヨガを伝える作品、山森のプレゼン現場に本人がいない「遠隔でのプレゼン」方法は、CIVILSESSIONにおいて新たな試みとなりました。
モリの新たなサービスのプロトタイプ提案、伊藤のパフォーマンス、根子の仮想空間に観客を参加させる手法などは、この企画において新しい作品形態ではないものの、限られた時間内で伝えるための工夫がプレゼンテーションに見られました。回を重ねるごとに洗練された発表の場に発展してきた印象があります。
①モリユウスケ(デザイナー)/秘密の宅配
「誰にも教えたくない」が毎月届く定期宅配サービス。4月は「本」、5月は「食」といったように毎月テーマが設定され、そのテーマに沿って各分野の目利きな著名人に「誰にも教えたくない」ものを選定していただきます。例えば食の回だったら、芸能人の渡部健さんに、本当は誰にも教えたくない食関連の物(食べ物や食器など)をセレクトしていただき、商品の詳細が書かれた冊子と共に月額会員の元へ届けられます。
クリック1つで「欲しいものを欲しい分だけ」買えてしまう時代だからこそ、秘密にしておきたくなるほどの価値を持った商品やコトに出会える機会を作ることで、新しい刺激と知識を提供し続けることができるのではないかと考えました。
②山森文生(ソフトウェアエンジニア)/OPEN SECRET YAMAKI884
私にとって、現代のコミュニケーションは複雑で難解だ。人々の意思疎通は、語られる言葉の適切さに完結しない。「誰によって語られたのか」が重視され、意味や機会を消失する言葉も少なくない。そのため、意思疎通は自分の体裁を設計することから始まる。それは、相互の関係性にもとづく秘密の取捨選択によって為される。煩雑な秘密の管理に腐心する日々が、自分自身を見失わせるのではないか、と私は不安に思う。
そこで、今回の発表では、Youtube上で架空のキャラクタを用いて番組の制作を行うVirtual Youtuberという存在に着目して、同様の手法により秘密を意識しないコミュニケーションの手段を製作した。制作した山木林という架空のキャラクタは、複雑な技能・技術の組み合わせにより、自らの表現を単純で自由にする。制作に際しては、「自分でありながら自分ではないもの」というバランスを目指していた。しかし、出来上がったキャラクタは実在する自分よりも自分らしい。
③伊藤佑一郎(写真家)/秘密の音色
秘密はなぜ生まれるのかを考えました。自分以外誰も知り得ないこととは、そこには「不都合な真実」があったり、「本当の自分と他人に見せている自分の差」を認めたくなかったり、曲がっていて理解されない欲望がつまっていたりするのかと思いました。それを公表したくないという思いが秘密を生み出す。そしてそれを暴こうする者も同時にいるわけです。秘密には値段がつきます。
近年世間をにぎわせている「週刊文春」「週刊新潮」などの週刊誌は、秘密がびっしり詰まったまさしく秘密のかたまりと言っても過言ではないと思います。Macにもともと入っているGarageBandという楽曲制作アプリには、キーボード操作に鍵盤が連動するミュージックタイピングという機能があります。
週刊誌の見開きを楽譜に見立て、その文章をミュージックタイピング機能を使ってなぞりながらタイピングすることで、書かれた秘密が奏でる音楽を作品としました。
④根子敬生(デザイナー)/便所落書き
ヒミツはナイショにしないといけないよね。でも、こっそり誰かに言いたいよね。誰と誰が付き合ってるとか、学校の便所に相合傘書いたりしたなーー。
ということで、便所に落書きできる空間をネット上につくりました。WebSocketで、リアルタイムに同期します。
※本作品は似非シブヤ展(3/13-17 @Gallery Conceal)で河ノ剛史と共同制作した仕組みの転用です。
デモはこちらからお試しいただけます。
http://34.218.183.120/
⑤千葉友貴(ヨガインストラクター)
「秘密」という言葉には、空海が伝えた真言宗の教義「密教」の意味があります。私がヨガ講師になる過程で学んだことですが、ヨガの哲学“タントラ”から影響されたのがこの密教であるといいます。
密教の教えは非常に奥深いものですが、それらを「ことば」で理解することよりも、絵や仏像など「かたち」を使って理解することが重んじられています。
そこで今回は、皆様に「秘密」の一端を感じていただく試みとして、神ねんどによるヨガを実践してもらいました。
ヨガに正解はありません。ヨガのポーズ(かたち)は、そのものが密教にも通じる真理を表しています。それぞれのヨガが、それぞれの真理であるという考え方と同様に、皆様が直感のままに行った神ねんどヨガは、十人十色の「かたち」となりました。
⑥長谷川亮(デザイナー)/秘密の履歴書
人の過去には多かれ少なかれ必ずSecretにされている所あることをビジュアルに出来ないかと思い、自分の過去の写真の本当に秘密にしたい部分を黒くマスクし、その部分を全て重ね合わせて白紙の履歴書にプロットすることで秘密の履歴書をつくりました。ほんの数例の秘密をプロットした履歴書の大部分は黒く塗りつぶされてしまいました。プレゼン当日に皆さんに見せているのはこの塗りつぶされた隙間から見える僅かな部分だと、自分に限らず家族も含め出会う全ての人もきっと秘密の隙間から見ているごく一部であることを表現してみました。
⑦杉浦草介(デザイナー)
あまり自分のことを語る方ではないと思うのですが、その為か、自分では隠しているつもりが無いのに「なんで秘密にしてたの?!」と人から言われることが多々あります。相手にとっての自分の秘密とは、「人に知られたくない情報」と「隠す気は無かったけれど知られていない情報」の2つがあるようです。
言える範囲での自分からあえてあまり人に言っていない情報と、隠す気は無いけどあまり知られていない(であろう)情報。これを曝け出すには、自分を曝け出した状態で見てもらうのが一番だと思い、身体にペンで思いつく限り書き込んでみました。
次回CIVILSESSION 12は初の公開イベントとして、東京・渋谷のロフトワークにて4/14(土)19:00より開催いたします。是非お越しください。
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